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魔法使いの俺、日本に転生  作者: アウストラロピテクノロジー
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ブラック企業狩り

 そもそもブラック企業の定義ってなんなんだろうか。サービス残業が大量にある会社、社員1人に対して過度な業務量を押し付ける会社、パワハラやセクハラ等精神的に社員を追い詰める会社などなど色々あると思う。


「うーむ。ブラック企業の定義って難しいなあ。とりあえず調べてみて、一番やばそうなところをターゲットにするか」


 俺はそれからSNSでブラック企業について検索をかけまくり特にやばそうな会社を見つけた。

 その会社は社員が100人ほどのそこそこ大きい会社で、ここ数年自殺者を出しており親族と色々と揉めているらしい。業績はそれなりにあるようで、そういった揉め事は基本的にお金で解決するとか。元社員や自殺した人の遺族とかが色々と投稿していてかなりやばそうである。


 今回は視覚魔法で会社内を覗き見ることはせずに透明魔法を使用して直接忍び込んでみることにした。スリリングで楽しみである。


 翌日から早速会社に潜入を開始。ドア等を勝手に開けるとバレてしまうので社員の後ろにくっついて会社に入った。その会社は大きいビルのワンフロアをオフィスにしているようでエレベーターに乗る必要があったのだが、エレベーターという狭い空間内で社員と思われる人と2人きりになった時は結構緊張した。透明魔法は自分を透明にすることはできるが実体はそこにあるため、社員の男性が何かの拍子に俺に触れてしまうと大変なことになってしまうのだ。ちなみにその社員は男性なのでやましいことは何もない。


 無事オフィスに到着して見渡す。働いている人たちはみんなせかせかと働いているようだ。俺はこの世界で働いた事がないからよくわからないが見た感じ普通だ。しばらく様子を見てみることにする。


 それから夕方まで観察してみたが俺が思っていたようなパワハラ等はなかった。もしかして既にブラック企業から卒業しているのだろうか?

 そんなことを考えていると上司であろう偉そうな人や年齢層が高い人たちが我先にと帰り支度を始めて帰っていった。


「お先〜」


 残ったのは年齢が若そうな社員ばかりだ。上司が帰ったからか今まで喋らずに黙々と仕事をしていた彼らはポツポツと会話を始める。

 俺は近くにいた2名の会話に耳を傾ける。


「はぁ〜。今日も終電までには帰れそうにないなぁ。お前はどうだ?」


「俺も無理無理。余裕で終電なんて過ぎるな」


「だよなぁ〜。この間滝沢さんも自殺しちゃったし、そろそろ身の振り方を考えないとダメかもなあ」


「だなぁ。でもこの会社超絶ブラックだけど給料はそこそこ良いから転職したら生活の質がなぁ」


「そうなんだよなぁ・・・。とりあえず頑張るかぁ」


 なるほどなるほど。給料が良いからやめられないんだなぁ。自殺者まで出ているのにやめることを決断できないって異常に感じるけど、お金に縛られてしまうとそうなっちゃうんだなぁ。

 それからしばらく若い社員を観察していたが黙々と仕事をこなし最後の1人が帰ったのは深夜3時のことだった。途中からは立って見ているのが疲れてきて俺はオフィスの端に横になって見ていたが危うく寝てしまうところだった。危ない危ない。


 翌日も潜入を行ったが前日に夜中まで働いていた社員はしっかり出勤していた。恐るべき体力である。俺は朝気合いで起きたがもう眠たくてしょうがない。こんな生活を続けられる社員の人たちまじですごいと思う。

 さて、なんとなく会社の体質がわかったので今日は定時に帰っている上司たちの動向を探ろうと思う。俺は家に帰ってお昼寝をした後、終業の時間に会社へ向って一番偉そうな席に座っていたやつを尾行することにした。

 早速帰り始めた一番偉そうなやつは家へ帰るのかと思いきやその次くらいに偉そうなやつと繁華街へと向かっていった。一緒にご飯でも食べるのだろう。

 案の定2人は居酒屋へ入り酒を頼む。まさにサラリーマンという感じだな。


「いやぁ〜働いた後のビールはうめぇなぁ!」


「そうですねぇ〜!」


「しかし最近の若いやつは根性ねぇよなぁ。この間も1人自殺しただろ?死ぬなら仕事やめてから死んでくれってなぁ」


「そうですよねぇ!私たちが若い頃なんてもっと酷かったのに。本当にゆとりって感じですよねぇ」


「俺達がもし今働き盛りだったら今頃もっと業績上がってるよなぁ!」


「本当そうですよ〜!まぁまぁ飲みましょうよ!」


 結局偉そうな奴らは最後にキャバクラに行って満足気に帰っていった。若い人たちが一生懸命働いている間この人たちは夜な夜な飲み歩いているわけだ。

 余談だが始めてキャバクラっていうものを見たけどすごいもんだった。詳しい内容は伏せておくことにする。この世界では友達もおらず童貞である俺には少々刺激が強すぎたとだけ言っておこう。


 しかし偉い人たちが現状に満足していて変える気がないんなら何も変わらないよなぁ。どうしたもんかな。働いている若い人たちもブラック企業であることは知っていて、でも給料が良いから続けているみたいだし。うーむ。ここは真琴さんにでも相談してみるか。会いたいし。


 早速真琴さんに連絡をする。幸い明日は暇らしく夜ご飯を一緒に食べることになった。

 誘ったからには俺がお店を決める必要があるなと思っていたら真琴さんが行ってみたいお店があるからそこにしようということでその必要はなくなった。いやぁ助かった。


 翌日、先にお店について待っていると待ち合わせ時間より少し早く真琴さんはやってきた。今日はベージュのパンツに白いシャツを着ておりシンプルで涼し気である。白いシャツと言ってもなんだか生地が良さそうで高いものだということがわかる。素敵だ。


「お待たせ!待った?」


「いえ、俺も少し前に来たところですよ」


「そう!なんだかんだ久しぶりね。魔法使いさん?」


「まっ!?」


「ふふっ。早速頼みましょう。今日はお酒を飲んだらだめですよ?」


「もちろんです・・・」


 ちなみに真琴さんともたまに連絡は取っていて、年齢は俺の方が下なので敬語はあまり使わないようにお願いした結果、こんな感じになった。ちょっと年下の男の子をいじるお姉さんになってしまったがこれもまた良いと思う。


 しばらく近況報告など何気ない会話を楽しみ話は本題へと移っていった。


「それで、相談っていうのはどういった話なの?」


「えぇっと、なんというかブラック企業について悩んでいまして・・・」


「ブラック企業?創介君が働いてる職場とか?」


「いえ、俺は前も言った通りその日暮らしみたいな生活を送っているので大丈夫なんですが、現代の働く仕組みについて悩ましいというか」


「働く仕組みかぁ。私は自営業みたいなものだから直接体験したりしたわけじゃないけれど、ブラック企業では働きたいと思わないし、間違って就職しちゃったらすぐ辞めると思うな」


「そうなんです。普通ならすぐ辞めると思うんですけど、辞めずに働く人が多いと思いませんか?」


「確かに。そういう人たちって親世代の人たちからの教育とか洗脳みたいなものが働いてると思わない?」


「洗脳ですか?」


「そう。昔は一度就職したら滅多なことがなければ辞めることはなかったって聞くし、そうした働き方をしてきた親世代からそういうもんだって教えられて育ってきたら、なんか辞めることに抵抗ができるんじゃないかな。そして仕事をやめるべきではないっていう考え方の人たちが周りに多いと、同調圧力というか文化というのか、それでさらに辞めにくくなるみたいな」


「なるほど」


「本来だったら労働者とwin-winの関係を築けない会社なんて、労働者に見限られるべきでしょう?」


「そうですよね。ということは本来労働者から見限られる会社のはずなのに今までの教育や文化によってやめることが難しい社会が出来上がっているという感じですね」


「そうそう。まあそれもたくさんある中の一つの要因でしかないと思うけどね。でも一番はやっぱりそれが当たり前っていう文化的なところが問題だと思うな」


「辞められない文化かぁ。そんなのどうしたらなくすことができるんだろう・・・」


「難しい問題よね。法律を厳しくするとか色々手はあると思うけれど根付いた文化を壊すっていうのは生半可なことじゃないと思うな。それにブラック企業の方が自分の性格に合っていて、働きやすいっていう人もいるかもしれないだろうし」


「なるほど。うーん。もうこの国を見限って外国に行ったり国を一から作っちゃったほうが早いかもしれませんね」


「おぉ!大胆なアイデア!」


「外国に行くっていうのは根本的な解決になっていないし、国を作るっていうのも非現実的ですけどね。いやぁ、解決したわけじゃないけど、こうして真琴さんと話して言葉に出すことで少しスッキリしました」


「本当?それならよかった。創介くんて若いのに難しいこと考えてるのね。あんまり考えすぎると老けちゃうぞ?」


「ははは。気をつけます」


「そうそう。まあ美味しいものでも食べて気分を晴らしましょう!」


 そんなこんなで俺の悩みが解決することはなかったが、真琴さんと食事することで少し考えを深めることができた気がした。もう少し自分で考えてみよう。


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