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激流を制するのは光の粒子(ライト・クアンタム)

【 Cassette Lock! ――RECORD No.2『 AQUA : river 』Play Start. ――】


その瞬間、ガントレットから解き放たれたのは、先ほどのシャームカセットとは次元の違うエネルギーを持つ、空色の光の粒子だった。

それらの光の粒子は、空中に散らばっていく。


そして、解き放たれた光の粒子が、周囲の『水』を感知して、カセットと共鳴しあっている。


(そうか、そういうことか! なら――)


湊は右手を空に向かって突き上げ、目の前で荒れ狂う炎の嵐を見据えながら、思いきり叫んだ。


「全ての水よ、集まれ!」


瞬間、湊の咆哮に応えるかのように、ガントレットに装填されているカセットテープが激しく回転した。


すると、空気中に霧散していた空色の光の粒子が一斉に輝きを増し、


大きな噴水から噴き上がっていた大量の水。

大気中に含まれる目に見えない水分。

水路を流れる小川。


そのすべてが、空色の光に手繰り寄せられるようにして、まるで意思をもったかのように、一斉に宙へと巻き上がっていく。


「嘘……、公園中の水が……!?」


陽菜が驚愕の声を上げる中、集まった膨大な水は、湊の右腕に物凄いスピードで吸収されていく。


「これなら、行ける!」


湊は、クロニクルガントレットのスイッチを、叩くように押し込んだ。


【 Chronicle Charge AQUA : river 】


音声が聞こえた瞬間、再び光の粒子が現れ、湊の前方に集合した。

そして、湊はもう一度スイッチを押した。


【 AQUA : river Energy Release ! 】


音声と共に、粒子は巨大な空色の『 大河の激流』へと姿を変えた。それは、目の前の炎を遥かに凌駕する、圧倒的な質量の暴力だった。


「消え失せろォォォッ!!」


湊が右腕を前方へと突き出す。刹那、大河のごとき激流が、意思を持ったように爆風を伴って歪みから生まれた炎へと襲いかかった。


ドゴォォォォン――ッ!!!


激突する、炎と水。すさまじい蒸発音が轟き、一瞬にして辺り一面が真っ白な水蒸気によって包み込まれる。


しかし、勝負は一瞬だった。

どれほど猛烈に燃え盛っていた炎の嵐も、クロニクルカセットの力を完全に解放して放った技の前には無力だった。空間の歪みごと、文字通り完全に押し潰され、消滅したのだ。


ジャァァァァ……と、役目を終えた水が、霧雨となって地面へと静かに降り注ぐ。


「本物の『クロニクル』の力を制御するなんて……」


白い霧の向こうで、陽菜が手元の『超常現象観測計』を握りしめたまま呆然と立ち尽くしていた。


戦慄する陽菜を余所に、湊の右腕から空色の光が消えていく。


「はぁ……はぁ……、終わった、のか……?」


【 Cassette Off. 】


音声と共に静まり返るガントレット。

炎は完全に鎮火し、公園にいた人たちにも怪我はないようだった。それらを理解した瞬間――。


「……あ」


湊は全身から一気に力が抜けるのを感じた。

立っていることすらできなくなり、膝から崩れ落ちるようにして、そのままアスファルトの地面へと大の字に寝転んでしまう。


「ちょっと、湊!? 大丈夫!?」


慌てて駆け寄ってくる陽菜の焦った声が聞こえるが、指一本動かす気力すら湧かなかった。


空を見上げる。


荒れ狂っていた炎の嵐はどこにもない。

ただ、宙に巻き上げられていた水が、細かな霧雨となって、ゆっくりと世界に降り注いでいた。


火照った顔や体に、パチパチと当たる水滴がたまらなく冷たくて、気持ちいい。


(……あぁ、生きてるな、俺)


背中にある地球の重力と、頬を撫でる霧雨の心地よさを全身で感じながら、湊はただ静かに、ゆっくりと荒い息を整えていった。

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