表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/29

浄化されし異変(コロージョン)

【 Awakening Cassette Lock ! 『Plant』 】


直後、湊の身体を淡い緑色の光が包み込み、クロニクルガントレットの表面を無数の光の粒子が走り始めた。


その光は腕から肩へ、そして全身へと広がっていく。


まるで、眠っていた何かが目を覚ますように。


――ギュォォォォォン……!


ガントレットの内部から、これまで聞いたことのない低い駆動音が響いた。


「……これが、プラントカセットの力……?」


湊が不思議そうに右腕を見つめる。


すると――。


「うわっ!?」


足元の地面から、一本の緑色の蔓が勢いよく飛び出した。


それは湊の眼前を通り過ぎ、そのまま街灯くらいの太さに成長しながら、踊るように空中へ伸びていく。


その後も、競うかのように次々と地面から蔓が伸び、周囲の植え込みや街路樹までもが、まるで何かに呼応するようにざわめき始めた。


「植物を成長させる力なのか……?」


湊は目の前で勢いよく伸び続ける数本の蔓を見つめる。


確かに、単純に考えれば植物を急激に成長させる能力なのだろう。


しかし――湊は絶対と言えるほどの、一つの確信を持っていた。


「ラノベとかだと、成長させた植物を操るのが定番なのに、それだけのショボい能力の筈がない!」


湊は、絶対的な確信のままに、右腕を怪物に向かって突き出す。


すると、その動きに合わせるように一本の蔓が大きくしなり、まるで意思を持った鞭のように怪物へ向かって伸びていった。


「――いけっ!」


ビュンッ!!


蔓が怪物の腕へと巻き付くが――。


ガガガガガガガガガガガガッ!!!


「うわっ!?」


もう片方の腕にも備わっているガトリング砲が一斉に火を吹いた。


斉射された大量の弾丸は、片腕に絡みついた蔓を瞬く間に引き裂き、千切れた植物が周囲へと飛び散っていく。


「くっ……!」


湊が思わず身を引いた、その瞬間だった。


怪物の胸部が、低い駆動音を響かせながらゆっくりと開いていく。


ギギギギギギ――。


漆黒の装甲が左右へと展開され、その奥から巨大な砲口がせり出してくる。


「胸から……大砲が!?」


底なしの暗闇を覗かせる砲口の奥に、眩い光が集まり始める。


一瞬。


ほんの一瞬だけ、怪物の全身が静止した。


そして――。


ドォォォォォォォンッ!!!


「――うわぁぁぁっ!?」


空気を打ち破る凄まじい轟音と共に、胸部の大砲から巨大な砲弾が撃ち出された。


砲弾は地面を抉りながら湊へと一直線に迫る。 


「――ッ!?」


湊は咄嗟に横へ飛び退こうとしたが、身体がついて来ず、足がもつれてしまった。


「うわっ!?」


次の瞬間、尻もちをついた湊のすぐ脇を、砲弾が猛烈な勢いで地面を削りながら通過していった。


ドゴォォォォォンッ!!!


砲弾が遊歩道の先で炸裂し、凄まじい爆風が辺りへ放射され、湊の身体を吹き飛ばす。


「ぐっ……!」


地面を転がりながら、湊は必死に体勢を立て直して立ち上がろうとする。


その目の前では、怪物が両腕のガトリング砲を構え直しながら、ゆっくりとこちらへ身体を向けている。


(特殊能力が遠距離攻撃って厄介過ぎないか……!?)


そして、ガトリング砲の銃口が、真っ直ぐに湊を捉えた。


――まずい。


そう思った瞬間だった。


(……待てよ。)


湊の脳裏に、かつての光景が蘇った。


それは、校舎を覆い尽くすほどに巨大化した、あの『水録願掛の木』を依り代とした超常現象。


あの時も、湊たちは逃げ場のない状況に追い込まれていた。


校舎の壁を容易く穿つほどの速度で、無数の木の葉が空を埋め尽くすように飛んできた。


逃げ遅れた生徒たちは必死に物陰へ逃げ込み、陽菜は炎の力で飛来する木の葉を焼き払うのが精いっぱいだった。


(あの時の木の葉の散弾……。このカセットの力ならば、再現できるかもしれない。)


湊は、周囲に植わっている木へと視線を向ける。


今、自分の右腕には、あの水録願掛の木をベースとした、植物の記録を内包しているカセットがある。


「……俺だって、できるはずだ。」


湊はガントレットのスイッチを押し、右腕を空に向かって突き上げる。


「――『クロニクルチャージ』――ッ!!」


【 Chronicle Charge!】


その瞬間。


ザワッ……!


公園に植えられていた樹木が、一斉に大きく揺れた。


木々そのものが、湊の意志に呼応するように枝を震わせている。


「……いける!」


木の枝が一気に伸び、そこから葉が爆発的な勢いで生え、枝先へと密集していく。


そして――。


公園の木々に生えていた無数の葉が一斉に剥がれ落ちた。


しかし、それらは地面へ落下することはなかった。


空中でぴたりと静止した葉が、まるで何かに狙いを定めるように、すべて怪物へとその先端を向ける。


湊は拳を握り締め、左手を怪物に向かって突き出す。


「――いけぇぇぇッ!!」


シュバババババババババッ!!!


次の瞬間。


無数の木の葉が、弾丸のような速度で一斉に撃ち出された。


怪物の巨躯へ向かって一直線に進む、緑色の弾幕を撃ち落とさんと、怪物が即座にガトリング砲を乱射する。


ガガガガガガガガガガガガッ!!!


無数の木の葉と銃弾が正面から激突し、空中で次々と弾け飛んでいくが、今度は湊もただ撃ち続けるだけではなかった。


「もっとだ!これで動きを止める!」


周囲の植え込みから新たな蔓が伸び、それらは大きくしなりながら、怪物の巨躯へと次々に叩きつけられていく。


続いて地面が大きく隆起し、地中から無数の根が飛び出て怪物の脚へと一斉に絡みつく。


さらには、新たに生み出された木の葉が空中を埋め尽くし、第二波、第三波と途切れることなく怪物へと襲い掛かっていく。


まるで――。


かつて湊たちを追い詰めた、あの水録願掛の木の攻撃そのものだった。


無数の葉を怪物の装甲へと激突させつつ、怪物の動きを制限させる。


絶え間なく続いた連撃の果てに怪物の身体が押され、傾く。


「効いてる……!」


湊の瞳に、確かな手応えが宿る。


やがて――。


ドォンッ!!


怪物の巨体が、ついに地面へと倒れ込んだ。


「これで終わりだ……!」


湊は荒い息を吐きながら、倒れた怪物を見つめる。


(今なら……いける!)


湊はデュアルブースターの装着された右腕を大きく掲げる。


休日の水録市を照らしていた、眩しい太陽。


(植物は、太陽の光を使って成長する、ならば……。)


「……植物の力っていうなら、これもできるはずだ!」


湊は、ガントレットに接続していたデュアルブースターを1回転させる。


【 Awakening Chronicle Charge!】


――次の瞬間。


ザワァァァァァッ!!


まるで湊の言葉に応えるかのように、公園中の植物が一斉に揺れ動いた。


公園の木々の葉が太陽へ向かって広がり、植え込みの植物の葉が次々と開いていき、芝生や、果てには雑草の一枚一枚にまで、淡い緑色の光が宿っていく。


湊は右腕を再び空へ向かって突き出すと、クロニクルガントレットの周囲に、緑色の光が集まり始めた。


「なるほど……植物が受け取った太陽の力を、一つに集められるのか!」


光がさらに強くなり、公園中の植物から集められたエネルギーが、湊の前方へと集中していく。


やがて、その中心に太陽そのものを小さく凝縮したかのように、眩く輝く巨大な光球が形成された。


【 PLANT Special Energy Release!】


「これで……終わらせる。――『デュアルソーラービーム』――ッ!」


湊の掛け声と共に、公園中から集められた太陽の力が、一気に解き放たれる!


「いっけえええええええ!!」


ズドォォォォォォォォォンッ!!!


巨大な光線が怪物へ向かって一直線に伸びていく。


その生命力に満ち溢れる光は、まさに一本の巨大な太陽そのものだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ