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第77話 目立たずひっそりと

「なぁ、ちょっとおかしいじゃん。絶対におかしいじゃん!」


「やかましい! 何もおかしくはないわ」


「おかしいって! 見てよこの光景」



 ダンジョンに向け家を出た俺は、すぐさまラミンとラムに向かって抗議の声をあげた。

 ラムが選出したのはミナとユギ。2匹の魔法力を上げておいた方がいいというラムの判断だった。2匹は俺の腕に抱っこされ大人しくしてくれている。


 だけど、ふとライオネル王を見ると、その腕の中にはテンとホビィがいた。

 そして、俺の肩や背中にしがみ付くラムとジナ。

 足下を見ると、コハクと一緒に低空飛行をするグゥちゃんもいるとは、一体どういうことだ。



「ちょっと! 留守番はどうしたんだよ?!

7匹とも付いて来たら大騒ぎになるだろう?」


「うむ……どうしても一緒に行きたいとテンとホビィが甘えるのでな。

つい、連れてきてしまった」


「甘すぎない?! ねぇ、ラムにジナ!

俺がラミンを頭に乗せてるからって、ぬいぐるみのふりして引っ付いてるの?」


「オリオンさま。申し訳ございません……

この子達が一緒に行くと聞かないもので……」


「ラム~。リーダーの威厳をどこに落としたんだよ……」



 普段のラムであれば、少し強引でも言うことを聞かせ、いい子にしてくれているというのに。

 今日は何故か誰もラムの言うことを聞かず、俺たちに同行したがったようだ。



「もう、やめてよ……ぬいぐるみ大好きな人みたいになってるから」


「ヒョン! ダンジョン、楽しみ!」


「グゥちゃんはこの前行ったばっかりだろう?

また翼を焼かれて泣いても知らないからなー?」


「ラムヒョン、いる。だから安心!」


「そういう問題じゃないでしょうが……」



 ラムに抗議していると、低空飛行しているグゥちゃんが楽しそうに笑いながら言う。


 (ラムがいるから安心って、どういう理屈なんだよ)


 俺からすれば、竜が7匹に王様に古代竜、そしてコハクがいるというこの状況は異常すぎて頭を抱えてしまうというのに。


 ――オリオンと愉快な仲間たち。


 そう呼ばれる日も近いのではないかと、ひとり怯えていた――









「オリオン殿、現在異常はありません。お気をつけて」


「あ、ああ……ありがとうございます」



 ダンジョンの入り口には王国側が手配した衛兵の姿があった。

 これも必要なことなのだろうけど、俺に声をかけるのは止めていただきたい。



「あの人なに? ドラゴン連れてない?!」


「すげぇ数じゃん?! 危ない人じゃないよな……」


「あの人、暁の翼にいた人じゃない?」


「え? ってことはあの人Sランク冒険者?」



 ダンジョンのボスを討伐してからは、ひとまずおかしな現状は起きていないため、立ち入り許可が下り、冒険者の出入りが再開された。

 そのせいで出くわす冒険者にとてつもなく変な目で見られるし、妙に怖がられている気がする。



「はぁ……王都内ではぬいぐるみで通せたけど、これだけ飛び回ってちゃ、もう言い訳出来ないよなぁ」


「気にするでない。我々は高貴な存在なのだ。見られてなんぼだ」


「俺以外はそうかもしれないけどさ。俺、関係ないから」



  明らかに悪目立ちしているというのに、ラミンはいつも通りというか何と言うか。

 俺以外のみんなは特に気にする様子もなく、ラムたちに限ってはこの場にいる誰よりも楽しそうに、自由に飛び回っていた。



「みんな楽しそうだねぇ。家でちょこちょこ飛び回ってる時より断然元気」


「いくら庭が広いとはいえ、自由に遊ぶとまではいかないからな。

全員で訪れたダンジョンは、さぞ面白いのだろう」


「まぁ、そうだよな。でも……

ラムー! 周りの冒険者の邪魔にならないようにしてね!」


「大丈夫ですオリオンさま。しっかりと面倒みますので」


「ご主人さま! コハクも付いてましゅからぁ!」



 ライオネル王は孫を見守るようにしているし、その言葉を受けた俺は半ば諦めながらラムに呼び掛ける。


 (大丈夫って言う人が1番大丈夫じゃないんだよなぁ)


 なんて少し毒づきながら先を行くラムたちを追いかけた。



「各階層のボスを討伐してから、何となく雰囲気が元に戻った気がするな」


「うむ。確かに前回訪れた時よりも、空気が澄んでいる気がするな」


「ボスはこのダンジョン全体に妙な影響を及ぼしていたのだろう。

今日は小童どもの子守だと思ってさっさと歩け」


「はいはい……」



 異常がないのであれば早く帰りたいけど、最上階層である15階層まで行くまで帰らせてもらえないだろうな。

 ラムたちも夢中になって魔物たちを討伐し始めているし、俺の希望が叶うなんてことはきっとない。


 ただ、本当に他の冒険者の邪魔をしたり、怖がらせたりはしないでほしい。

 俺は、ひっそりと目立たずやっていきたいんだから。

 だけど、そう思う度に心の中でもうひとりの自分が呟く。


『ぬいぐるみを頭に乗せている時点で無理だ』と。


 ラミンと出会った時点で、目立たずにという俺の願いは、空の彼方に飛んで行ってしまったんだ――

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