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第76話 魂星

 バリッ、バリッ、バリッ――


「キュイィッ~!」


「……美味しいって言ってる?」


「ええ。我々はオリオンさまが作って下さる魔力飴玉が大好きですからね」



 会議に参加した翌日の朝。

 いつものように魔力を込めた飴玉を与えると、ご機嫌な様子で食べ始めるラムたち。

 表情で何となくの感情は読み取れるものの、やっぱり少しだけ不便だと感じてしまう。



「美味しそうには見えないけどね……

ねぇ、ラム。この子達もお喋り出来るようになってほしんだけど。

どうにかならない? 意思疎通が出来なくてちょっと困っちゃう」


「うーん……

毎日オリオンさまからいただく魔力飴玉が身体に馴染んできてますので、いづれカタコトでもお喋り出来るようになるかと思うのですが……

やはり覚醒しなければ、僕のようになるのは厳しいかなと」


「そうかぁ……そう簡単には出来ないよなぁ。

これからしばらくダンジョンに出入りするから、言葉を話してくれた方が助かるんだよね」



 少しの期待を込めてラムに方法はないかと尋ねたけれど、世の中思い通りにはいかないものだった。

 だけど、俺が与える魔力の飴玉が身体に馴染めば少しは言葉を発することができるようになるという事実は希望に繋がった。


 今回は諦めるしかないかと思っていると、ラムは何か思い出したように自分の額に埋め込まれている星形の宝石に短い前足で触れた。



「オリオンさま。我々には星の守護が埋め込まれています。

これは魂星こんせい、ソウル・ステラと呼ばれます。

魂星は我々を守護するだけでなく、主であるオリオンさまとの繋がりがあることを示しているのです」


「何それ? よく分かんないけど……」


「元々我々は、結晶化された竜の涙に魔力が集まり誕生した、とても稀な存在です。

竜の涙は、純粋な愛で構築されているのはご存じですね?

それが元となり誕生した我々は、孵る前からオリオンさまに魔力を注いでいただいていましたね。

オリオンさまの深く温かい竜族の血から作り出される魔力が注がれたことで、涙の中に眠っていた愛の記憶が実体化し、我々が誕生したと言っても過言ではありません」


「んー……?」


「つまり、かつての竜たちが紡いできた愛と、オリオンさまの持つ愛が共鳴して我々を誕生させてくれたのです。

僕たちの額にあるこの魂星は、オリオンさまと僕たちを繋ぐ「愛の絆」そのものなのです」



 ラムはスラスラと小難しい話をして、俺とラムたちの関係性について教えてくれた。

 だけど、俺の脳には全く入ってこない。あまりの理解力のなさに自分を呪った。



「何か難しいなぁ……

そもそも、俺に愛なんてあったのかが疑問なんだけど」


「家族を護りたいという立派な愛があるではないですか。

その愛が我々に伝わり、オリオンさまを守護するために我々の命が誕生したのです。

ですから、オリオンさまとの繋がりを深く示すこの魂星に口付けをすることで、ほんの少しではありますが、ジナたちの気持ちが伝わるようになります」


「くっ、口付け?!」


「はい。チュッと触れるだけです。やってみて下さい。

みんな、オリオンさまとお話したくてウズウズしてますから」


「口付けって……恥ずかしいじゃん」



 あまりよく分かっていないが、どうやら額の魂星という宝石に口付けをすることで対話が可能になるようだった。

 だけど、対話を可能にするためにキスをするだなんて、そんな恥ずかしいこと出来ないと小さく拒否をした。


 すると、そんな俺の煮え切らない態度に痺れを切らせたラミンが、俺の頭をポカポカと叩きはじめる。



「いいからさっさとやらんかバカたれ!

キスの1つや2つ、どうってことないだろうが!」


「何で怒るわけ?!」


「オリオン。挨拶のひとつと捉えてやってみなさい?」


「うぅっ……ライオネル王まで……

分かったよ……やればいいんだろ!」



 ラミンに怒られ、ライオネル王に促され、仕方なく口付けをする決意をした。

 ラムが声をかけると、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて近寄ってきたジナたちの額に、チュッと6回キスを落とした。


 すると、額の魂星がポワッと淡い光を放ち、そのまま静かに光が消えた。

 

 (本当にキスだけで言葉が分かるようになるのかな……)


 そんな不安を胸にじっと待っていると、頭の中に一斉にその声が届いた。



『ヒョン! 遊ぼ!』

『ヒョン! 大好きぃ!』

『飴ちゃんちょうだい。ヒョン!』

『オリオンさま~! お出かけ! ダンジョン!』

『オリオンさま! お散歩行こ!』

『オリオン、僕の声、聞こえているのか?』



「一斉に喋らないでー! なにこれ!」


「早速、聞こえてきましたね。

ちなみにですが、オリオンさまに魂を救われた皆さまにも聞こえています」


「ええ? そうなの? どっちにしても元気すぎる……」



頭の中に響き渡る6匹の元気すぎる声。

その声に一瞬パニックになりながらも、これで少しはこの子たちの考えていることが分かるんだなと安堵していた。


だけど、1つだけ知らない言葉を耳にした。



「ラム。さっきからミナたちがヒョン、ヒョンって言ってるの何?

ホビィとジナとユギは名前で呼んでくれたけど……」


「ああ。ヒョン、とはお兄さん、と言ったところでしょうか。

主なので、オリオンさまと呼んで欲しいところではありますが……」


「へぇ……そんな呼び方があるのか。まぁ、何でもいいけど」



 初めて聞く単語に首を傾げたが、呼び方なんて対して気にすることじゃないな。

 そう思いながら、順番に頭を撫でてやると、キャッ、キャッと嬉しそうな声が響き渡った。

 これなら誰を連れて行っても困ることはなさそうだ。

 

 さて、今日から新たな仕事が始まる。誰が一緒に付いて来てくれるのか。

 ラムに選ばせたあと、ランジム宰相たちに子守をお願いしてダンジョンへと向かった――

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