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第69話 輝いていた頃に戻りたい?

「初代国王陛下にその部下の方々でしたか! 大興奮です!

まさか生きている間に皆さまとお会いできる日が来るなんて。

人形師をしていて本当に良かったです!」


「ははは、私も嬉しいよ。我々のような特殊な存在を受け入れてもらえてな」



 ライオネル王、そして部下たちの正体が分かると、目を丸くして驚いた表情を見せたムーアさん。

 大人しい性格かと思っていたけど、どうやらそれは俺の思い違いだ。

 どこかローランドさんにも似た、好奇心旺盛で熱い血を持っている人のように感じた。


 そんなムーアさんは、ライオネル王をじっと見つめたあと、真剣な表情に変わり口を開いた。



「ライオネル陛下……いえ、ライオウ様。

今回僕がお引き受けしていたご依頼は4体でしたが、ライオウ様のお体もお作りしましょうか?」


「えっ?! ムーアさんそれはさすがに……」


「部下の方々だけ、というのも無粋でしょう。

せっかく再会できたのです。ここは全員分、精魂込めて制作させていただきます」



 王家から依頼されていた4体に加えて、ライオネル王の器も制作したいと申し出てくれたムーアさん。

 非常にありがたい話ではあるが、1体につき途方もない金額がかかる魔導人形。

 それを追加で作成となると、簡単に二つ返事をするわけにもいかなかった。


 (ライオネル王は、どう思ってるんだろう……やっぱり鎧を脱ぎたいとか思ってるかな)


 そう思い、静かに問いかけた。



「……ライオネル王、どうしたい?」


「うむ……そうだな。

もし、可能であれば、とは思うが……」


「そっか……」



 ライオネル王は遠慮がちに答えて視線を落とした。

 その言葉を受け、俺は意を決してレガリアに手を伸ばし、赤い宝珠まで回転させ通信を試みた。



「リアム陛下。オリオンです。今、お時間よろしいですか?」


『ああ、どうした? 何かあったのか?』


「今、ムーアさんのところに来ているのですが……

ライオネル王の器も一緒に制作してもらいたいと思ったのですが……ダメ、でしょうか?」


『おお! それはいいな!

ムーアの手にかかればライオネル王にとって居心地の良い魔導人形が出来るだろう。

私が許可する。しっかり頼むぞオリオン』


「ありがとうございます。では、失礼します」



 プツッと通信が切れたあと、思わずフウッとため息を吐き出した。

 ライオネル王の願いを叶えるためとはいえ、国王陛下を相手に自分からおねだりをする日が来るとはな。



「ライオネル王、リアム陛下が作っていいってさ。良かったね」


「そうか。ありがたいことだな。では、ロイ・ムーアよ。

我々の魔導人形をよろしく頼む」


「さすがオリオン様。リアム陛下に直接交渉されるだなんて。

これで心置きなくライオウ様の魔導人形も制作できます」


「楽しみが増えましたな、ライオネル陛下」


「ああ、そうだな」



 リアム陛下からの許可が下りたと告げると、ライオネル王は静かに頷き、その声がいつもより少しだけ弾んで聞こえた。


 (魔導人形が完成したら、今まで分からなかった表情も見られるようになるのかな)


 そう思うとなんだか少し、楽しみになっている俺がいた。



「では、早速ですが、皆さんの当時のお顔についてお聞かせください。

初代の皆さまについては、書物はあれどハッキリとした肖像画がライオウ様以外、遺されていなくて。

しかし、僕は見た目も精巧に制作したいので、なるべく生前のお姿の情報をいただきたいのです。

顔のパーツのサンプルもありますので、そちらを参考にしながら教えてください」


「ほう。そうか。ではまず、我々の容姿について話すとしよう」


「本格的だなぁ。ラミン、なんか凄いことになりそう。俺、蚊帳の外じゃん」


「仕方があるまい。ライオネルたちからすれば、生前と同じ体が手に入るのだ。

興奮するのも無理なかろう。それに、ムーアとやらの目を見てみろ。

あれの目には貴様などもう映っておらんわ」


「だよな。俺もそう思う……」




 許可が下りた途端、キラキラと瞳を輝かせながら、スケッチブックを開きペンを手に取ったムーアさん。

 ライオネル王たちの生前の容姿について、聞き取り調査を始めた。


 その瞳には俺の姿はまるで映っておらず、ラミンと共にただ茫然とその光景を見つめていた。



「私は一般的な女性の顔立ちです。黒髪は腰ほどありました。

瞳は、そうですね……少し柔らかい感じで――」


「私は……そうだ、どことなくザッカリー宰相に似ています。

髪の色は濃い紫色ですね。そうです。ええ、そんな感じですね」


「私の容姿ですが、一般的な執事長と大差ないと思います。

銀色の短髪に、口ひげも生やしておりました。瞳はこの形に近いかと」


「俺の顔は、あの時代でも男前な方だと言われてたぞ。俺はそうは思わないけどな。

高い鼻筋に、切れ長の鋭い目が素敵って言われてたな。

ああ、そう。そんな感じだ。髪は金色で――」



 ライオネル王の部下たちが入っているぬいぐるみが、楽しそうに揺れている。

 ラミンが言うように、生前の自分の姿を再現してもらえるということは、この上なく嬉しいことなのだろう。

 そう思いながら見守っていると、ライオネル王が呆れた様子の声で彼らに告げた。



「ランジム、チェル、それにジヨンよ。それはお前たちの若い頃の顔じゃないか?

クリストだけが私の記憶にある最後の顔立ちだな……」


「うっ……やはり覚えていらっしゃいますか……

せっかくこのような機会をいただきましたので、一番輝いていた時期になりたいと思ったのですが……

どうか、ご容赦ください……」


「私は別に構わんよ。皆が望む姿になるのが一番だからな」



 どうやらクリストさん以外の3人は、自分たちの最終的な容姿ではなく、最も輝き生き生きとしていた頃の姿を要望しているようだった。

 その気持ちは分からなくもない。

 新しい体を手に入れられるのであれば、自分のピーク時の容姿を要望したくもなるだろう。


 (まぁ、楽しそうにしてるから、何でもいいけどさ)


 あんなに楽しそうにしているライオネル王たちを見ていると、俺がいちいち何か口出しする必要もない。

 ただ、このまま続けていけば確実に日が暮れるだろう。

 夜が更ける前には話を終わらせて帰りたい。それだけを願っていた――

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