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第65話 宰相候補?

「あー……オリオンです。リアム陛下。

今、お時間よろしいですか」


『おお、オリオン。大丈夫だ、調査は順調か?』


「はい……そのことでご報告が」



 洞窟を出てすぐ、俺はレガリアを起動させ宝珠を回転させ赤色に変わったところでポチッと宝珠を押した。

 繋いだ先は当然リアム陛下だ。

 この洞窟に何があり、この場所で何が起き、現在俺の中に何が存在しているかを話した。



『本当に存在していたのだな……竜族が創った地下都市が。

この国の史実として書物として残されていたが……

これからそこに向かってもよいか?』


「えっ」


『エリックとザッカリーを連れて行く。少し待っておれ』


「あのっ、リアム陛下?!」


 プツッ――


「はぁ……なんでこうなるんだ」



 ただの報告で済まそうなどと考えていた自分を呪った。

 1秒でも早く家路につきたかったというのに、これからこちらに来るだなんて。



「リアムの奴、まさかこれから来るのか?」


「うん。もう……帰りたいのに」


「まぁ、仕方がないだろうな。

リアムたちが単独で行ったところで、地下都市の扉は開かんからな」


「だとしても後日で良くない?」


「貴様は学習せん奴だな。

この話をすれば即行動に移すことくらい容易に想像出来るだろうが」


「ううっ……ラム~助けてよ」


「オリオンさま、ご武運を」


「なっ……ラムが俺を見捨てた!」



 俺という存在がいなければ、この洞窟の中にある地下都市が姿を現すことはない。

 その事実を把握しているリアム陛下が飛んでくるのは必然だった。


 (王都に戻って報告をしたところで、きっと結果は変わらないのだろうな)


 ウィンエバー王国の歴史を語るうえで竜族という存在は欠かせないと言う。

 そうなると、この地下都市という場所は、王家であれば誰しもが確認したいのだろう。

 巻き込まれた俺からすれば、勝手に見学でも何でもしてくれて構わないから、帰らせてほしいと願うだけだった――









 あれからどのくらい待機していたのか。

 リアム陛下一行の気配がし、馬車の音が遠くから聞こえ始めた。



「オリオン! 待たせたな」


「いえ、大丈夫です」



 馬車から降りてきたリアム陛下、ザッカリー宰相、エリック騎士団長は挨拶も早々に洞窟に続く扉に視線を移した。

 すると、扉の前に翼を羽ばたかせ移動したラム。

 キリッとした瞳でリアム陛下たちを見つめながら、その口を開いた。



「リアム陛下。僕です。ラムです」


「おお! ラム! 本当に言葉を交わせるようになったのだな」


「ドラコポリスでの覚醒を経て、ようやく自らの言葉を紡げるようになりました。

リアム陛下、陛下には深く感謝しています。

僕たちのような竜の存在を、世間の好奇に晒すことなく、静かに見守る選択をしてくださったこと。

その寛大な守護に、心より感謝を申し上げます」


「聡明な子だなラムは……

いや、気にすることはないぞラムよ。そなたたちは我が国の宝となる存在だ。

無下に扱うようなことはせんよ」


「感謝します。では、ドラコポリスにご案内いたします」


「……勝手に話が進んでる」



 リアム陛下に対し深い感謝を述べたあと、俺の言葉を待つことなく洞窟の扉を開き中へと入っていくラム。

 その様子を後ろから見ていた俺は、ラムが神の遣いのように思えていた。



「ねぇ、ラミン。ライオネル王。

ラム、本当は人なんじゃないの?」


「守護竜ともなれば、ああいう脳みその出来が違う個体が生まれることもある。

貴様を護るための存在なのだ。聡明でなければ判断出来ぬ事態も出てくるからな」


「かつて存在した竜や竜族の中にも稀に頭の切れる者もいたからな。

ラムはその中でも特別優秀なようだ……宰相にもなれそうだな」


「宰相だなんて勘弁してよ……

甘えん坊のままでいて欲しい……」



 ラムについて冷静に分析するラミンとライオネル王の言葉に、ガクッと肩を落とした。

 俺の胸にギュッと抱きついて可愛らしく笑うラムであって欲しいというのは、俺の我儘なのだろうか。

 ジナやミナたちも、どこか規格外な存在だということが更に深まり、何かに巻き込まれてしまう予感しかしない。


 それに、俺は思うんだ。

 ラムたちの力が大きければ大きいほど、自分という存在の在り方が問われていると。



「まぁ、そう項垂れるな。ラムたちはオリオンを護るために己の力を使っているのだからな」


「うん……分かってるんだ。

でも、そう思えば思うほど、俺は一体何者なんだろうって思うだろ?」


「貴様は竜族の血を継ぐただのポンコツだ」


「なっ……まぁ、ポンコツのままでいたいな俺は」



 割と大きな悩みだと思っている。

 それなのにラミンは俺をポンコツ呼ばわりし、その柔らかいぬいぐるみの手でポカポカと頭を叩く。


 そのいつもの光景に少しだけ安堵する。

 俺がポンコツでいる間は、何も起こらず平和に過ごせる気がしていたから。



「さぁ、オリオン。我々も行くぞ」


「ああ、そうだね」



 ライオネル王に言われ、ラムたちの後を追うようにして再び洞窟に向かう。

 リアム陛下たちはドラコポリスを見て何を思うだろうか。

 俺が頭を抱えるような発言がなければいいなと願いながら、階段を下りて行った――

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