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第56話 子竜の名づけ

 1週間後――


「なぁ。産まれた時10センチくらいだったよな」


「うむ。そうだな」


「じゃあ、なんで今この子たち身長30センチ超えてんの?

ぬいぐるみじゃん。ラミンじゃん」



 7匹の子竜が生まれてからの毎日は、それはそれは賑やかだった。

 言葉を喋るわけでもないのに、1日中なにかを喋っているような気がする。


 そして、生まれた時は本当に小さかったのに――

 今、目の前にいる7匹は明らかに大きくなっている。

 黙っていればぬいぐるみそのもので、可愛いような、少し怖いような。



「我より少しばかり大きいな。さすがは七星の守護竜だ。

いいから早く朝飯を食わせてやれ」


「「「キュイイイッ!!」」」


「はぁ……はいはい。ほら、朝ご飯だよー」



 急成長についてラミンに聞いても、嬉しそうに感心するだけ。


 (訳が分かんないな……まぁ、いいけど)


 そう思いながら、俺は子竜たちに“魔力入りの飴玉”を口に放り込んだ。

 どうやらこの子たちの基本的な食事は俺の魔力らしい。


 普通の食事も摂るけれど、朝は決まってこの飴玉。

 美味しくなさそうだけど……


 バリバリッと音を立てて噛み砕くと、額の星の紋章が一瞬光る。

 それがエネルギーチャージ完了の合図だ。



「キャハハハッ!!」


「キュイッ!」


「飯食ったらすぐ遊ぶ……子供は元気だねぇ。感心するよ」


「そうだな。子が元気なのが一番だ。

ところでオリオン、そろそろ名前を与えてやらんとな」


「んー……そうなんだよ。

ラミンにも“名付けをすれば俺と深く繋がるから早くしろ”ってうるさく言われてて」



 コハクと遊び始めた子竜たちを見ながら、小さくため息をつく。

 子育てがどれほど大変か、よく分かった1週間だった。


 そんな中、ライオネル王に名前の話題を振られた。

 ラミンがうるさいと愚痴ると、頭上からポカポカ叩かれる。



「うるさいとは何だバカたれ!

この子竜どもは貴様のために生まれて来たのだ。

親が子に名を与えるのは当たり前だ!」


「分かってるけど7匹だよ? そんなの知らないよー……」


 ラミンやコハクの名付けとは訳が違う。

 7つの名前を一気に考えるなんて難しいに決まっている。



「この世界の生き物は名を授かることで一回りも二回りも進化する。

こやつらが貴様を護るためにも、名は必要なのだよ。頑張れ」


「ううっ……そんなこと言われてもなぁ……」



 どうしたものかと悩んでいると、濃い紫色の子竜が近づいてきた。

 鑑定してみると――闇属性の竜。



「ふーん、闇魔法を使う子なんだな。

君はいつも他の6匹をまとめてくれる子だよなぁ。

んー……そうだな、君はラムだ。なんかラム酒の匂いがした」


「貴様……安易な。さっきこやつが酒樽を壊した時に浴びたんだろう……」


「ダメ? じゃあ――」


「キュイイッ!」



 ラム酒の匂いがしたからラム。

 ラミンにポカポカ叩かれたが、その瞬間、ラムの額の星がふっと光り、静かに消えた。

 驚いてステータスを確認すると――


 【個体名:ラム】


 しっかり刻まれていた。


 (え、なんかごめん……)


 そう思ったが、ラムは嬉しそうに俺の周りをぐるぐる飛び回り、

 そのままコハクたちのもとへ戻っていった。



「まぁ、いい。ほれ、さっさと次の子竜を呼ばんか」


「分かったよー……えっと、青い子おいでー」


「キュイ?」



 呼び寄せた青い子竜を鑑定すると、水属性、水魔法の使い手だった。



「この子、いつも落ち着いてるよなぁ。

みんなが騒いでても、のんびりしてるっていうか……

……そうだな、君はユギだ!」


「キュイッ!」



 理由なんてない。

 響きが気に入ったから、その場で決めた名前。

 ラムと同じように、額の星が静かに光り、消えていった。



「よし、あと5匹……頑張れ俺」



 名付けを終えるたびに、身体が少し重くなるのを感じた。

 身体の中の魔素がごっそり持っていかれるような、そんな感覚だ。



「えっと……赤い子。元気な君はホビィだ。火属性だな。

それから黄色い子……ジナにしようか。光属性だな。

で、次は黄緑の君は……ミナだ。風属性の魔法の使い手だな。

オレンジ色の君は……テンだ! 土魔法を使うんだな」



 名付けというより、もはや事務作業のような勢いで名前が決まっていく。

 適当すぎて申し訳ないと思いつつも、最後の1匹を呼び寄せた。


 黒く輝く体に、右の翼は青、左の翼は赤。

 水と火、2つの属性を持つ――ある意味、1番の大物だと感じていた。



 "グウウッ……"



「あはは、さっき食べたのにお腹空いてるのか?

それじゃあ、君の名前はグゥだ。グゥーちゃんだな!」


「キュイイイイッ!」



 お腹が鳴ったので、そのまま“グゥ”と名付けると、額の紋章が静かに光り、個体名が登録された。



「貴様は本当に、名付けのセンスが皆無だな」


「しょうがないだろう? 俺は名付け専門じゃないんだから!」


「良き名ではないかラミン殿。これでこの子たちも安心しただろう」


「みんな、可愛い名前でしゅねぇ~」



 ラミンには散々な言われようだったが、なんとか全員の名前が決まり、俺はホッと胸をなでおろした。


 名前が決まったからといって、劇的に何かが変わるわけではない。

 だけど――

 この多属性の子竜たちが、この名前と共に健やかに育ってくれたら。

 今の俺には、ただそれだけが願いだった――

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