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33話 この温もりを護るために

三日後――


頭の中で声が聞こえた。

ご主人様、ご主人様、と可愛らしい声だ。

それに、さっきから頬がくすぐったい。


……犯人はコハクだな。

俺の顔を舐めたり、自分の頬をこすりつけたりして、必死に起こそうとしているのが分かる。


その気配を感じた瞬間、ずっと重かった瞼がゆっくりと持ち上がった。




「ふぎゃ!ご主人様ーーーーっ!!コハクでしゅーー!!」


「……ああ、おはようコハク。」


「死んだかと思いましたぁぁぁぁっ!!」


「はは、ごめんごめん。」



目を開けた瞬間、一番に飛び込んできたのはコハクの大きな丸い瞳だった。

その瞳がさらに見開かれ、次の瞬間には両前足で俺の顔にガシッと抱きついてきた。



「俺、どれくらい寝てた?」


「三日ほどだオリオン。そなたの今を超える魔法だったせいだな。」


「まったく…貴様はまだまだだな。

さっさと元気になるのだ。レベル上げしに行くぞ。」


「はは、そうだね。もう倒れたくないから頑張るよ。」



コハクは全身で心配を表してくれていて、

ライオネル王も表情こそ落ち着いているが、声に優しさが滲んでいた。

そしてラミンは――見た目の可愛さとは裏腹に、完全に鬼教官モードだ。


だけど、今回倒れたのは完全に俺のレベル不足が原因だ。

だからこそ、ラミンの言う通り早めに鍛錬を再開しようと決意した。

また倒れたらと思うと、ちょっと怖いからな。



「そういえば、ちゃんと治せた……?」


「ああ。あの部屋にいた10人はすべて元通りだ。

だが、この事実は伏せる必要がある。そのためヴァンスが患者すべてと話をした。

助かったと言いふらしたい者には、記憶操作の魔法をかけるつもりでな。」


「ええ?わざわざそんなことをしなくても……」



意識がはっきりしてくると同時に、あの子たちのことが気になった。

黒い液が体から抜けていくところまでは見えたけど、

俺が倒れたせいで処置が中途半端になっていたら……そう思うと不安で仕方なかった。


だけど、全員が無事に回復したと聞いて、胸の奥がふっと軽くなる。


そして、ヴァンスさんが“かん口令”を敷こうとしていると知り、思わず目を丸くした。

確かに依頼が殺到したら困るのは分かるけど……

そこまで徹底する必要あるのか?と苦笑いしていると、

ライオネル王が静かに口を開いた。



「ヴァンス殿の判断は正しいぞ、オリオン。」


「……そうなの?」


「よいかオリオン。そなたが契約した上位精霊と契約できる王族が、今この国に何人いると思う?

上位精霊、そしてイグニスのような最上位精霊と契約できる者――

それは天より"王の資質"を証明されたようなものだ。

本来、上位精霊・最上位精霊に認められる者とは、一国を背負うべき王の権利を得た者。

だが今の国王の跡継ぎたちは、未だに誰一人として精霊との契約を果たせておらぬ。」


「そ、そうなんだ……」


「そんな時に、オリオンのような者が現れたと知られたらどうなると思う?

王家の権威を守るため、無理矢理にでも王族の養子に引き入れるだろう。

あるいは政略結婚で血筋に繋ぎ止め、一生その力を国の道具として使い潰すこともあり得る。

そして考えてみなさい。

王族に引き込まれれば、そなたが竜族の末裔であることもいずれ露見する。

そなたの望むスローライフなど、瞬間で消え去るのだ。

この際だから言うが――

オリオンは己の力の価値を誰よりも理解し、慎重にならねばならんのだ。」


「ライオネル王……」



ライオネル王の言葉は、胸の奥に重く沈んだ。

ただ“すごい魔法だな”としか思わず使っていた力。

そして、自分の血統がもたらす意味。

それが“自分だけのものではなくなる未来”を想像した瞬間、

背筋がゾクリと冷えた。



「貴様は本当に何も分かっておらんからな。

もう少し自分のこと、世間のことを学ばねばならん。

そうせねば、貴様自身が傷つき、闇落ちしかねん。

分かったな?オリオン。」


「……うん。分かったよ、ラミン。ライオネル王……」


「ご主人様は凄い人でしゅからねぇ!皆が狙っちゃうんでしゅ!

でも、コハクが絶対に護ってあげましゅからね!」


「コハク~……!ありがとうな、コハク。

俺もコハクのことは絶対に護るからな!」


「はいでしゅ~!」



事の重大さに気づき、自分の無知さに少し落ち込んだ。

そんな時、尻尾をぶんぶん揺らしながらコハクが寄り添ってくれた。

この子は本当に純粋で、心の底から癒してくれる。


コハクを護るためにも、

そしてライオネル王やラミンの存在を守るためにも、

俺はもっと自分のこと、この世界のことを学ばなければならない。


やっと手に入れた、この温かい家族と時間。

絶対に誰にも奪わせない。


スローライフを死守ために、俺ができることは全部やっていく。

そう、改めて強く誓った――

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