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8 悪魔の仕事 

途中で他者視点になります。



『このシュークリームうまうま』


 もしゃもしゃとデザートを貪る。


 さて、ここで皆さんは疑問に思うことでしょう。

 ———お面をつけたままでどうやって食ってんの?ってね。


 なんと!このお面は通過できるのである!


 最初の頃は必死に外そうと奮闘していたけど、結局諦めるしかなかった。

 それで、物は試しだと食べ物を口にもっていったら食べれたというわけだ。


 ちなみに、外套も外せないよ☆

 ただ、お風呂のときは空気を読んでくれるから助かってる。

 まあ、お面の方はお風呂でも外れないんだけどね……。


「このケーキもおすすめらしい」


 目の前に置かれたケーキは、チョコレートの細工が綺麗な芸術的なオペラケーキだった。


『あっ、ありが———ってなんでここにいるの!?』


 自室で一人スイーツバイキングをしていたはずなのに、自分以外の存在がいた。

 驚きのあまりフォークが手から滑り落ちる。

 それをさっと拾い上げた騎士は、私に渡してくれた。


『あ、ありがとう……』


「俺はアンタの下僕だろう?」


『いや違うし』


 なに勝手に下僕になってんだ。

 募集してないから。


「アンタの面は不思議だな」


『ああ、このピエロのお面?』


 ケーキを口に運ぶのをやめ、フォークを持ってない手で頬の部分を触る。

 固い感触が指先をつたう。


 ———そういえば、私の顔ってどんなだったかな。


「いつか、アンタの顔を見せてくれ」


『う、うん!……いつか、ね』


 考えていたことを読んだかのような発言に、心臓が音を立てる。

 ……このお面が外せる日は、本当に来るのだろうか。


 さわさわとお面を触る私を、騎士はじっと見ていた。

 

 


















「タブラ様!」


 漆黒が空を彩った時間。

 私の部屋に、焦った様子の黒子がやってきた。


『どうした』


 食べていたパンケーキを慌てて飲み込み、威厳ある雰囲気で声をかけた。

 

 危なかった……。

 騎士にはバレたが、黒子達には絶対に私がポンコツであることはバレたくない。


 ドキドキしている心臓を落ち着かせていると、呼吸を整えた黒子が口を開いた。


「タブラ様。実は、『消滅』の依頼が入りました」


『そうか』


 確かに件数は少ないが、『消滅』の依頼は珍しくない。

 何をそんなに慌てているのだろうか。


「その……」


『言ってみろ』


 言い淀む黒子に、嫌な予感がよぎる。

 まさか…………。


「今回の『消滅』は———“人”です」


『……っ!』


 …………どうやら、今日の夢見は最悪になりそうだ。














————————————————————


 夜になり、あの人の仕事の時間になった。

 いつものようにあの人の部屋に向かっていると、途中である人物に会った。


「やあ、騎士殿」


「アンタは……ここのボスか」


「ご名答」


 全身から醸し出される威圧感は、強者のそれだった。

 それに、後ろに控えている従者の睨みようからも上に立っている者だとわかる。


 極めつけは、こいつの表情だ。

 余裕そうな笑みを浮かべるその表情が、気に食わない。

 こんな食えない表情をしている人物が、だたの人物であるはずがない。


「レテは、今日部屋にいないよ」


「レテ……?」


 初めて聞く名に眉を寄せると、従者がすっと前に出てきた。


「タブラのことでございます」


「そうそう、レテだよ」


「…………」


 どうやら、あの人は様々な呼び名を持っているらしい。


「なぜここのボスが俺に、あいつのことを伝えるんだ?」


 その問いに答えることなく、ボスは横を通り過ぎた。

 そして、すれ違いざまに囁いてきた。


「ついておいで」


 あの人に関わることだと確信していた俺は、躊躇なくその背を追いかけた。

 


















 ついた先は、見覚えのある地下牢だった。

 

(確か、この扉の先にはあの人と会った部屋が………)


 錆びついた鉄の扉につけられていたであろう重厚な南京錠が、地面に転がっている。

 その部屋に入ろうとすると、従者にとめられた。


「こちらへ」


 案内されたのは、隣の部屋だった。


 中は何も置かれていなかった。

 血の臭いも鉄の臭いもしない。

 異様なほどの無臭だった。


 おもむろに従者が、地面をつま先でノックする。

 

 コンコン


 すると、一瞬で部屋が暗くなった。

 そして、右を見ると隣の部屋の様子が透視されていた。


「……マジックミラーか」


「大正解」


 ボスは優雅に椅子に座っていた。

 その隣にはもう一脚用意されている。


 無言でそれに座り、マジックミラーを見た。






「アヒャヒャヒャヒャッ!!」


「タブラ様……」


『お前は外で待機していろ』


 あの人の声が聞こえた。

 その声は、酷く強張っていることがわかった。


 黒子が部屋を出ていく。

 奇声を上げる男は、おそらく麻薬に侵されているのだろう。


「あれは『メルト』さ。君も、一歩間違えればああなってたよ」


「…………」


 そんなことはわかっている。

 あの人のおかげで、今の俺がある。

 だからこそ、あの人の下僕になると決めたのだ。


 あの人が男に手をかざす。

 しばらくそうした後、力なく手をおろした。


 その表情は、ひどく苦し気だった。


『…………ごめん』


 小さな声だった。

 しかし、深い悲しみが込めれらた声。


「アヒャヒャ————」


 ———男の奇声が途切れる。

 

 気づけば、男はさらさらと粒子となっていた。

 そして、その粒子さえも宙に溶けて消えた。


 あの人は、両手を胸の前で握りしめている。

 それを見た俺は、胸に言い知れない感情が沸き上がった。


「あの子の仕事は、こういうものなんだ」


 ボスはこちらを見ていない。

 じっとあの人を見つめている。


 その瞳に、自分と同じ色を見つけた。

 ———どうやら、こいつは俺と同類らしい。


「どうか、理解してあげて」


 こちらに向けられた瞳には、慈愛と…………執念があった。


 


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