第15話 挨拶と担任教師
幸いスライムのヌルヌルは時間が経つとただの水になるらしく、アンリと夏姫は着替えをせずに済みました。
「……まあ、これくらいなら」
「……そのうち乾くだろ」
二人のスクールシャツが濡れてしまったせいで胸元が殿方には見せられないことになっておりますが、ここは人里離れた山の中だからセーフです。
「それじゃあスライム狩りを続けますね?」
だから楽しいSP稼ぎに戻ろうとする私を、
「「ちょっと待った」」
しかし夏姫とアンリが同時に止めてきました。
チッ……流石にそのままスライム狩りを続けるわけにはいきませんか……。
今の失態を理由に先頭交代かと身構えましたが、夏姫とアンリは示し合わせたかのようにマジックバックから折りたたみ傘を取り出して、二人で同時にそれを開きます。
「よし、これで大丈夫」
「いくらでもヌルヌル攻撃していいぞ?」
「……ちょっとバリアー張られているみたいで傷つくのですが?」
「小春のせいなんだから仕方ないでしょ! ちゃんと対策しないとズブ濡れにされそうだし!」
「おら、さっさと進め! トラブルエッチモンスター!」
「ふぐうっ!?」
二人の口撃に私はダメージを受けましたが、しかし被害者は彼女たちなので、私は素直に回れ右してスライム狩りに戻りました。
トラブルエッチモンスターとは酷いニックネームですが……私はこれまでアンリのパンツを何度も引きずり下ろしているので、まったく否定できません。
だから私は親友たちにバリアーを張られた悲しみを、スライムのせいにして狩りまくることにします。
「……おのれスライムっ!」
《――1SPを回収しました》
《――1SPを回収しました》
《――1SPを回収しました》
「……なんだかスライムが可哀想になってきたよ」
「……小春は夢中になると止まらないからな」
そして私が【魔力操作】と【魔力感知】の両方を取れそうなほどSPを獲得し、スライムの死体で親友たちが構える傘をビシャビシャにしたところで、通学路の終わりを示すもうひとつの赤鳥居が見えてきました。
「あれっ!? もう終わりですかっ!?」
昨日までは長く感じられた通学時間が、今日は体感だと三〇分くらいしか経っておりません。
もしやこれも魔道の効果かと思って引き返そうとすると、信玄を消して傘をしまった夏姫とアンリに両脇を持たれて捕獲されました。
「はいはい、もう殺戮はやめましょうね~?」
「小春が集中してただけで、普通に長いこと歩いてるからな?」
そのままズルズルと引きずられ、私たちは【千灯町】側の赫狸様をくぐります。
マキナちゃんまで完全に鳥居を抜けたところでようやく拘束から解放されて、私たちは武器を脇に挟んで赫狸様へと、パン、パン、ペコリしました。
「「「ありがとちゃんちゃんです!」」」
ぴょこっ、と木々の梢からこちらを覗いてくる狐面の幼女。
適切な距離感さえ掴めばその姿はかわいらしくて、私の中から赫狸様への恐怖が薄れていきます。
「……おにぎりあげたら食べますかね?」
「連れて行かれるからやめとけ」
アンリがそう言うならやめておきましょう。
山道を下りた私たちは古峰神社の裏側に出て、そこで私は先輩風を吹かせて夏姫とアンリに天狗さんへの接し方をレクチャーします。
「いいですか、二人とも? 天狗さんへの返答は『う―――っ! にゃ―――っ!』です! これをきっちりやることで【軽業】スキルをくれますから、今のうちに練習しておきましょう!」
「……小春はなにを言っているのかな?」
アンリへと通訳を依頼する夏姫。
「あー……こいつ、古峰様にも気に入られたのか……まあ、あの御方は修験者が昇神したタイプの立派な神様だから、小春のマネしても大丈夫だろ」
「ええっ!? つまりそれは『やれ』ってこと!?」
「古峰様の加護はあたしも欲しいからな」
アンリの許可も得たので、さんっ、はいっ!
リピート、アフター、ミー。
「う―――っ! にゃ―――っ!」
「「……うーっ! にゃーっ!」」
気合いが足りませんっ! こうですよっ! こうっ!
「う―――っ! にゃ―――っ!」
「「……ううーっ! にゃあーっ!」」
赤面しながら美少女ふたりが私の真似をします。
「違いますっ! ううーっ、ではなく、う―――っ! にゃ―――っ!」
「「……う―――っ! にゃ―――っ!」」
恥ずかしがりながらニャ―ニャ―騒ぐこの巨乳美少女たちなら完成度は低くても加護をもらえそうでしたが……叫ぶたびに揺れる大きなお乳にイラッとしたので、私はそのまま手を抜かずに教育を続けました。
「はい! あとは二人とも羞恥心を取っ払って! う―――っ! にゃ―――っ!」
「「う―――っ! にゃ―――っ!」」
それからさらに五回ほど練習を繰り返すと二人ともいいシャウトができるようになってきたので、私はひとつ頷いて本番へと向かいます。
「うわ……なにあれ? ほんとに天狗が座ってる……」
夏姫が言う通り、神社の拝殿の上では昨日と変わらず天狗さんが坐禅を組んでおり、私たちへといつもの挨拶をくれました。
『――励め』
もちろん私たちは先ほど練習した猫っぽいシャウトを披露します。
「「「う―――っ! にゃ―――っ!」」」
『――うむ』
《――【軽業】スキルが深化しました》
天狗さんの威厳たっぷりな姿に驚いたのか、夏姫が少し遅れそうになりましたが、ちゃんとシャウトには気合いが入っていたので大丈夫でしょう。
【直感】スキルによってそんな確信を得て、私は硬直する夏姫を引っ張って、石鳥居へと向かいます。
そのまま石鳥居の下で一礼して、曲がりくねった参道を下り出したところで、私の操り人形と化していた夏姫が再起動しました。
「え? なんで? ほんとに【軽業】スキルくれたんだけど?」
「だからそう言ったではありませんか」
「前にあたしが参拝した時はなにもくれなかったのに……古峰様は猫が好きなのか……?」
「そういえばここの神社ってけっこう猫がいますよね。そのわりには猫糞を見かけませんけれど」
私がそう言ったところで、ようやく夏姫の頭が回りはじめます。
「……ほんとに天狗さんが猫好きだったら『うんちの神隠し』説が誕生しちゃうね?」
脳裏を過ぎる、ホウキとチリトリを手にした天狗さん。
「なんだそれ……和むじゃねえか」
アンリもそんな姿を想像したのか頬を赤く染めました。
そうして雑談しながら坂道を下りて、麓の石鳥居でも一礼し、少し歩いたところで私は流れるように鯛焼き屋さんへと向かいます。
「はい、登下校時の買い食い禁止」
が、今朝は真面目な風紀委員の夏姫がいるので、私の服の襟首が掴まれました。
「うう~っ! 一個だけ! 一個だけですから!」
「今月はもうお財布の中身がピンチなんでしょ? 月末に泣きついてきても知らないよ?」
「ちゅ、昼食代として五〇〇円もらってますし! 一個くらいならいけますしっ!」
「…………プニるよ?」
「…………くぅ……」
その夏姫の囁きには乙女心を殺す冷たい響きがあって、私は泣く泣く通学路へと戻ります。
「っ!?」
すまぬ鯛焼き屋のおばちゃん……そんな目で見ても私は今日の売り上げに貢献できないのです……。
「……というか小春はダイエットしてるんじゃなかったのか?」
「…………」
アンリからの鋭い指摘に、私は静かに顔を背けました。
そうして愛しき鯛焼き屋のおばちゃんと別れ、農協の前まで来たところで私は例の黄色い時計で時間を確認します。
現在の時刻は午前七時四五分。
うむ! 昨日よりも早い!
「……やっぱりあの道って時空が捻じ曲がってますよね?」
私の疑問にアンリが頷きます。
「霊道はその昔、忍びや伝令の抜け道としても使われていたからな。あの道だと一層でも外界の五倍くらいは時間の流れがゆっくりらしい」
ふむ……つまり外界での一時間が、あの通学路に入ると五時間になるということですか……。
私は歩きながらちょこっと頭を働かせて、今日の通学時間を計算してみます。
えっと……家から赫狸様までが二〇分くらいで、赫狸様から学校までが一五分くらい。
つまり一時間半の通学時間のうち、赫狸様と赫狸様の間を通っている時間は六〇分くらいですから、現実の時間に戻すとおよそ一二分ということになります。
「合計四七分……明日からは七時半に家を出ても余裕ですね……」
「いや、遅刻したら騒ぎになるから、それはやめとけ」
アンリの言葉に私は首を傾げます。
「? 学生が遅刻したくらいで、そんな騒ぎになりますかね?」
素朴な疑問にアンリは重々しく頷きました。
「なる……めっちゃなる。星女には上成村と協力関係にある陸上自衛隊の小隊が学生に紛れて駐留してるんだ。だからあたしらが遅刻すると、【怪異調査対応群】の連中が救助にくる」
「! それって!」
「マキナちゃんが所属している部隊だよね?」
昨日の自己紹介を思い出してマキナちゃんを見る私たちに、アンリは手をパタパタさせます。
「あー……いや、マキナが所属しているのは天照大御神の本体が創った秘密結社だから、【対応群】の名前は身分を隠すために使ってたんだろ」
「「秘密結社!?」」
「まあ、裏社会には掃いて捨てるほどあるらしいからな」
秘密結社などという素敵ワードを出してきたアンリの後ろでは、私たちの視線を嫌がるマキナちゃんが縮こまっていて、私と夏姫は彼女の過去に興味を持ちました。
「……マキナちゃんは」
「……どんな仕事をしていたのかな?」
もしかしたらヤバい仕事なのではないかと思って事情を知ってそうなギャルへと訊ねると、アンリはわかりやすく視線を彷徨わせたあとに、斜め上を見ながら嘘をつきます。
「……い、いちごジャム職人だ」
「「かわいい」」
昨日ゴブリンをいちごジャムにするマキナちゃんを見ていた私と夏姫は、事情を察して深く追求することをやめました。
「…………?」
このかわいい女の子はいちごジャム職人。
ショーコ姉さんならともかく、ちゃんとした天照大御神様が創った秘密結社に所属していたということは、きっといちごジャムを作る必要があったのでしょうし、その原材料のことを気にする必要はないのです。
彼女の仕事に理解を示した私と夏姫は、話題を学校にいるという【怪異調査対応群】のことへと戻します。
「救助に来てくれるというなら、挨拶くらいしておいたほうがいいんですかね?」
「アンリは誰が自衛隊の人か知ってるの?」
マキナちゃんの頭を撫でて落ち着けていたギャルは、その話題にすぐさま乗ってきました。
「実働部隊のことは知らねえけど、学校に常駐している大人の指揮官となら何度か話したことがあるぜ?」
赫理様に守られた【久遠岳】の魔道には子供しか入れないという話でしたから、実働部隊も私たちと同じ女学生のみで構成されているのでしょう。
そんな話をしていると学校の正門が見えてきて、ちょうどそこに立っていたスーツ姿の先生にアンリが反応します。
「あっ! すげえいいタイミングっ! おーい! 藍沢先生ーっ!」
アンリが声をかけたのは一年A組の美人教師こと――藍沢響子先生でした。
名前を呼ばれた藍沢先生は、こちらを振り返って眉間にシワを寄せます。
「……ようやく来ましたか、美少女問題児集団……」
「美少女はともかく」
「問題児集団とはこれいかに」
酷いネーミングに私と夏姫が苦言を呈すると、先生は私たちが持つ武器の数々を指差してきます。
「「「あ……」」」
警棒に鉄パイプに金属バット。
私たちはそれらをしまわずにここまで歩いていました。
周囲に誰もいないかと見回して、私たちは急いで武器をマジックバックにしまいます。
そうして私たちが非行少女から普通の少女に戻ると、続けて先生はマキナちゃんへと視線を向けました。
「それと、今朝うちの部隊に最寄りの自衛隊基地から問い合わせがあったんだけど……あなたたちの中に自動小銃を借りっぱなしにしている子がいないかしら?」
「あ、はい……それならボクが預かってます……拳銃とかナイフもいっしょに」
マジックバックを小さく開いてマキナちゃんの武器を見せる夏姫。
「……手りゅう弾まで持ち出したのね……どうりで所在確認の催促がやたらとくるわけだわ……」
バックの中には銃やナイフの他に二つの手榴弾まで入っていました。
……これを使われなくて本当によかった。
まあ、映画の知識が正しいなら手榴弾はピンを抜いてから爆発するまで時間がかかりますから、少人数を相手にした戦闘では使い勝手が悪かったのでしょうけれど。
しかしこれほどの武器を借りパクするとは問題児の極みでした。
物騒な荷物点検を終えた先生は深々と嘆息して、夏姫に鞄を閉じさせます。
「まあ、紛失してないならいいんだけど……いちおう私たち【対応群】も一般人には存在を秘匿している部隊だから、ちゃんと銃火器所有の定時報告を基地まで送るように……そこの銀髪ちゃんが正気に戻ったら伝えといてくれる?」
そう言って先生は内ポケットから一枚のカードを取り出して、アンリへと差し出しました。
「……なんすか、これ?」
「その子の偽造学生証。転入手続きはすぐにできないから最低限の保険よ。それとまさかとは思うけどあなたたち……そんなに目立つ子をそのまま校内に入れるつもりじゃないでしょうね?」
「「「あー…………」」」
この準備の良さから察するに、先生は私たちが来るのを待ち構えていたのでしょう。
挨拶ついでに未熟な私たちへと指導をするために。
「しっかりしてよね。先生はあなたたちと協力関係を築けるのか、とても心配です」
「……すみません」
「……とりあえずマキナちゃんの帽子かなんかを買ってきます」
「そうしなさい」
先生から色々とダメ出しされてしまった私たちは、回れ右して近くのお店を探すことにします。
早朝だと開いてる店舗も限られるので、学校から徒歩五分のところにあるコンビニに入り、そこで見つけたセール品のニット帽をひとまず購入しました。
マキナちゃんはとにかく日本人離れした髪色が目立ちますから、まずは頭を隠すのが最優先でしょう。
私たちの中で一番お小遣いに余裕がある夏姫が支払いを担当してもらい、コンビニの駐車場の隅を借りてマキナちゃんの銀髪を覆い隠すと、しかし完成したニット帽姿の美少女を見たアンリが困惑した声を出します。
「……帽子を被っても目立つな、この子」
「……もとの顔立ちが綺麗すぎるんですよ……これではパパラッチにオフの日を撮影されるハリウッド女優みたいです」
「……マスクも追加で買ってくるね?」
夏姫が再びコンビニの中に戻っていき、すぐにマスクを手にして戻ってきて再挑戦。
しかし完成したニット帽&マスク美少女を見て、私たちは再び困惑しました。
「……マスクを追加しても目立つな、この子」
「……アーモンド型のブルーアイズが強すぎるんですよ……むしろ顔が中途半端に隠れているせいで、マスクの下への妄想が止まりません」
「……花粉症用の伊達メガネも追加で買ってくるね?」
そうしてニット帽&マスク&伊達メガネを装着した圧倒的不審者が生まれてしまったわけですが……そこまで徹底的に顔を隠しても、マキナちゃんからは人の目を惹きつけるオーラが漂っていました。
「……これだけ顔を隠しても美人ってわかるのがすげえな」
「……スタイルが日本人離れしてますからね……パリコレのモデルみたいです」
「……あとは制服の上からジャージでも着せようか?」
流石にコンビニの駐車場でお着替えはできないので、私たちは学校へと移動して、運動部用のトイレでマキナちゃんを着替えさせます。
私と夏姫が入口を見張っている間にアンリが着替えを担当し、やがてトイレから出てきたマキナちゃんは、ようやく美少女オーラを隠せていました。
頭にはニット帽とマスクと伊達メガネ。
そして体には星女の指定ジャージをブレザーの上とスカートの下に装着させて、マキナちゃんの真っ白な素肌はほとんど見えなくなっています。
「……よし、これならなんとか普通の学生に見えるか……これはこれで目立つけど……」
「……ときどきこういう格好してる先輩いますもんね……風紀委員に怒られてますけど……」
「……病気ってことにすればいいんじゃないかな?」
現役の風紀委員からアドバイスもいただけたので、私たちは完璧と判断して靴箱へと向かいます。
マキナちゃんの上履きがなかったのでアンリが体育館シューズを穿かせてあげて、校舎の中に入ろうとすると、廊下から藍沢先生が顔を出しました。
おそらく変装の出来栄えを確認したかったのでしょう。
マキナちゃんの全身を観察した先生は、私たちへと普通の教師らしく質問してきます。
「その子はどうしたの?」
他の先生に絡まれた時のシミュレーションだと判断して、私たちは堂々と答えました。
「病気です!」
「この子は重度の花粉症と!」
「風邪を併発しました!」
三人で絞り出した変な格好の理由に、先生は一言。
「…………休んだら?」
実にまともな教師らしい正論で返してきました。
「「「ですよねー」」」
深々と嘆息した先生は、見ていられないとばかりにアンリへと指示を出します。
「仕方ないわね……【瘴気酔い】した子を放置するわけにもいかないし……その子は保健室に預けておきなさい」
「保健の先生に部外者だとバレねえか?」
「大丈夫よ。養護教諭の永峰も私と同じ【対応群】の隊員だから。治癒系の異能を持つ彼女なら、その子の看病にも力を貸してくれるでしょう」
先生の神対応に私と夏姫は感動しました。
「「藍ちゃんっ!」」
「……ちょっとやめて……まだうちの部隊員にも渾名で呼ばれていないのに……あなたたちが先に距離を詰めてこないで……」
「まあまあ、冷たいことを言わないでくださいよ」
「ボクたちと先生の仲じゃないですか」
「……早乙女さんと会話したのは今日が初めてだけど?」
「「まあまあまあまあまあまあまあまあ」」
寄生できそうな大人には全力で寄生して行けと、私たちはショーコ姉から教わっていました。
藍ちゃん先生は確実に面倒見がいいタイプ……つまりはここで仲良くなっておくのが吉ということです!
私と夏姫はアイコンタクトを取り同時に左右から先生の腕を抱きしめて、自分に懐いた教え子を先生が見捨てられなくなるように、強張る肩へとほっぺたを擦り付けます。
「「ごろにゃ~ん♪」」
そんな私たちの浅ましい思惑を察したのか、ロックオンされた先生は、ぶるり、と震えて私と夏姫を振りほどきました。
「や、やめてっ! 私に寄生しようとしないでっ!」
「……藍ちゃん先生?」
「……どうしたんですか?」
やたらと過剰反応した先生は二、三歩後ずさってから、踵を返して走り出します。
「――わ、私はもう【ダメ男生産機】を卒業したんだからあああああああああああっ!!!」
「「「ええ…………」」」
あっという間に先生は消えてしまったので、私たちは顔を見合わせて首を傾げてから、ひとまず指示通りに保健室を目指します。
入学式の日に案内された保健室にはすでに色気と母性たっぷりの永峰先生が出勤していて、私たちから藍ちゃん先生とのやりとりを聞いた永峰先生は、遠い目をしてこんな情報を教えてくれました。
「ごめんね……あいつ、大学時代から養っていた屑男にフラれたばかりなの……」
「「「藍ちゃん…………」」」




