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朗読家になれない朗読人  作者: 白餅りんね


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13 暗闇の中で

硬く冷たい床。周囲は真っ暗で、何ひとつ見えない。


全身は動かそうとするだけで悲鳴を上げるほどの痛みに覆われていた。頭も割れるように痛む。


そして足には、普段感じるはずのない違和感があった。


――足枷だ。


全身の痛みに耐えながら、辛うじて身体を起こす。

暗闇の中で目を凝らしていると、次第に視界が慣れ、ぼんやりと周囲の輪郭が浮かび上がってきた。


石で覆われた床と壁。凍りつくように冷たい鉄格子。

そして奥には、内部までは見えないが、同じような部屋がいくつも並んでいる。


それはまさしく――牢屋だった。


「な、なんでこんなところに……」


思わず疑問が口から漏れる。


「なんや、起きとったん?

起きとるんやったら声かけてくれたらええのに」


聞いたことのない喋り方だ。


「だ、誰かいるんですか?

それに、その喋り方は……」


恐る恐る問いかけると、男は軽く笑った。


「あー悪い悪い。地元の訛りやねん。

直そ思うとるけど、なかなか抜けへんわ。堪忍な。


それとな、俺もお前さんと同じ、捕まっとる身や。


少し前まではな、お前さん以外にも何人かおったんや。けど、魔族に連れて行かれてしもてな。


その時な、盗賊が愚痴こぼしとるん聞いたんや。

ここは魔族の根城やとか、今回は全然金出してくれへんかったとか言うとったわ。


せやからたぶん、魔族が盗賊を金で雇っとるんやと思うで。」


魔族の根城?

盗賊が魔族に雇われている?


理解が追いつかない。


「魔族と人間が手を組んで、何をしているんですか?」


「うーん……まあ憶測にすぎへんけどな。


あの盗賊ども、だいぶ手慣れとる。

せやけど最近は強い冒険者も増えてきとるやろ?


強い冒険者が増えるっちゅうことは、

狙える相手がだんだん限られてくるっちゅうことや。


せやからこそ、ひとりで動いとるやつを狙うんや。


金品持っとるやつは奪う。

せやけどそれでも、最近は冒険者同士でパーティ組んだり、商人も用心棒つけたりしとる。


……おそらく、盗賊側も赤字なんやろな。


せやからどういう経緯かは分からんけど、

人間を買い取ってくれる魔族に売って、

小遣い稼ぎしとるんやと思う。


魔族の中には人間食うやつもおるらしいしな。

魔族は食いもんが手に入る。

盗賊は金もろえる。


……まあ、いわばウィンウィンっちゅう関係やな」


刺激しないつもりが、まんまと盗賊の手のひらで踊らされていたのだ。


完全に終わった。


どうして今まで戦士を仲間にしなかったのか。

そんな後悔が頭を巡る。


すると男は、声色を少しだけ変えて続けた。


「お前、ここ出たいやろ?

出る気あるんやったら、力貸してくれへんか」


「え? 出られるんですか?」


僕は思わず食いついた。


「俺ひとりやったら無理や。

けどな、力貸してくれるんやったら、お前も一緒にここから出したる。


こんな格好しとるけどな、俺いちおう能力者やねん。


……まあ、お前には俺の姿なんかこれっぽっちも見えてへんやろうけどな。


俺も見えてへんしな。

がっはっはっはっ!」


何を言っているのか半分分からない男だが、力を合わせれば脱出できるかもしれない。

その可能性だけで十分だった。


全身は痛みに悲鳴を上げている。

それでも、このままここに留まるべきではないと、本能が告げていた。


分からないことは多すぎる。

だがまずはここを脱出し、真相を確かめるしかない。


そう決意を固め、僕と男は暗闇の中、ひっそりと作戦を練り始めた。

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