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3 my black partner

 2人を片付けた俺は、残りの1人と戦っているミナの援護に向かった。がしかし、その必要はなかった。

既にミナと戦っていたプレイヤーは、遥か遠くへと背を向けて逃げていた。

遁走する敵を見送っていたミナが、俺に気付いて喋りかける。

「もう2人とも倒したの!!防御力を無視できるんだから早々に決着がつくとは思ったけど、ここまで早いなんてね」

「相手が弱かった。隠密にステ振ってて、初心者以外との戦闘を想定していなかった。んなことより、何してんだ?逃げられているじゃねぇか」

「それは大丈夫。()()()()()んじゃなくて、()()()()んだから」

ミナはそう言うと、ある物を見せる。電波を送ることで発信機の位置情報を教えてくれるアイテム。要するに──

「GPS発信機!!今逃げて行ったあいつに、発信機を付けてたのか」

「そ。戦闘中にコレをバレることなく付けるの、結構大変なのよ。でもおかげで、あいつがどこに逃げたのかが分かる」

「でもなんでそんなことした?ここで仕留めた方が速いし楽だろ」

俺の発言に、ミナは肩を竦めて、大袈裟にため息をつく。

「分かってないなぁ。まぁ、ボッチプレイヤーのリクさんには分かんないか。相手はチームよ。もし仲間がやられて自分だけ逃げ切れたら、リクはどうする?」

「…仲間に文句を言う?」

「だからボッチなのよ。リスポーン地点に戻って、仲間と合流する。それからまた3人で初心者を狩ろうと出かけるでしょ。ならこの場で狩るよりも、発信機を付けて泳がせたら、あんたがキルした2人をまたキルできてお得じゃない」

「なるほど。つっても、そんな計算通りにいくか?俺らにやられたわけだし、相手がログアウトする可能性もあるくね?そしたら、発信機が無駄になるじゃん。バッテリーの問題で、位置情報を教えてくれる時間は長くないだろ」

「確かにね。でも、リクがボコボコに負けたとして、そのままログアウトする?誰かをキルして、スッキリしてからログアウトしたくない?」

ミナの意見に思わず唸ってしまう。

多くの人は、負けてゲームを終わろうとはしないだろう。勝って気持ちのより状態で、ゲームを終わらせたいはずだ。


ミナの読み通り、逃げたプレイヤーは復活したプレイヤーたちと合流し、今度こそ初心者を狩ろうと、”始まりの町”周辺に移動した。

俺たちと戦った場所から少し離れた場所に移動したが、発信機で居場所が筒抜けなのだから意味はない。今度は俺たちが奇襲を仕掛け、3人全員をキルした。粘着(特定のプレイヤーを執拗に狙う行為)は、悪質な嫌がらせのためご法度だが、初心者狩りをするようなカスプレイヤーに、その配慮は不要だろう。

その後も同じように、別の初心者狩りを数組キルした。


そしてリアルでは日が暮れ始めたころ、初心者狩りの狩りを終えた俺たちは、ゲーム内にあるカフェでまったりとしていた。

「実際に戦闘をしてみて分かったけど、影魔法は想定よりも強力ね」

「だな。加護もそうだが、スキルが予想以上に便利だ」

「今まで弱弱の影魔法で戦ってきたリクのテクニックあってのことだけどね。1対1なら、上位プレイヤーでも勝てるかもよ」

コップが空になってからも、ミナと影魔法について話し合った。互いの意見を大方交換できたところで、ミナは徐に席を立つ。

「一先ず、今日は付き合ってくれてありがとう。私はまだゲーム内でやらなきゃならないことがあるから、解散ね」

「おい、ちょっと待て」

その場から立ち去ろうとするミナを、俺は引き留める。

「ん?どかしたの?」

「お前、今日の件で隠してることない?」

俺の言葉で、一瞬ミナの顔に動揺が走る。すぐに平静を取り戻して素知らぬ顔を装ったが、刹那の内に表情がコロコロ変わったので、逆に動揺したことが浮き彫りとなった。

「…なんのことかしら」

ミナは白を切るが、それで誤魔化されるほど、俺はミナとの付き合いが浅くない。

「聞き方を変える。お前、依頼を受けているだろ」

引き攣った顔のミナを見て、俺の考えが正解であることを確信した。


言い忘れたが、ミナは外道だ。

ミナは複数のサブ垢を所持し、アカウントごとに異なるギルドに所属している。その理由は、よりたくさんの情報を集めるためだ。

そして集めた情報を、敵対しているギルドへ売ったり、別の第3勢力に情報を流したりすることで、火種を煽り、戦争を生む。裏で戦火をコントロールし、争いから生じる利益を密かに掻っ攫う。

ミナは所属しているギルドの利益など、微塵も考えていない。

己が得をするために、誰であろうと平気で騙す。

そしてなにより厄介な点が、ミナは本質的には儲けたいから暗躍してるわけではないことだ。

裏切り、裏工作をし、裏で手を引く。その行為が楽しいから、暗躍している過ぎない。利益を得るのは、あくまでもついで。

過程そのものが目的という、一番タチの悪いタイプだ。

同じ中学に通うというリアルでのつながりがあるから、ミナは俺を信用し、俺を暗躍の協力者として選んだ。故に俺はミナの裏の顔を知っている。

だがそんな俺のことも、ミナは躊躇いなく騙してくる。



「そもそも、どうして初心者狩りを狙ったのか、気になってたんだ。腕試しなら、出現する場所に規則性があるモンスターの方が適している。それにお前、やけに気合が入っていた。わざわざ発信機まで使って念入りに潰す。それも1組だけじゃなくて、数組。流石にちょっと変だ」

目を泳がすミナを尻目に、推理を続ける。

「だが依頼を受けたとすれば、辻褄は合う。そうだな…例えば、『”始まりの町”を出ようとしたら、初心者狩りからイジメられました。自分たちの代わりに、連中に痛い目を合わしてくれませんか?』って感じの依頼を受けたんじゃないのか?そしてお前は、カンストした影魔法がどんなものか見るという名目で、俺に依頼を協力させた。違うか?」

俺の指摘に、ミナは観念したといった具合に開き直る。

「バレた?まぁ細かいことを言うと、『”始まりの町”を抜ける道中の護衛』が依頼内容だね。報酬の都合上、護衛は私1人だけいいんだけど、相手は複数人だし、私自身はともかく護衛対象の初心者まで守り切れるかが不安でね。その憂いを消すために、前もって初心者狩りを潰そうと思ったの。初心者狩りをフルボッコだドンすれば、連中が私を覚えて、手出ししてこなくなるでしょ?ついでに初心者狩りから金を巻き上げられるから、一石二鳥だね。いや、影魔法をカンストしたリクのテストも兼ねていたから、一石三鳥だ」

「細かいことはいいや。報酬は?初心者からとはいえ、お前が引き受けた以上、安い報酬じゃないんだろ?俺も手伝ったわけだし、2割くらいはよこしてくれても、バチは当たらねぇと思うけど?」

「人をぼったくりみたいに言わないでよ。ごめんけど、その提案は受けられない。報酬は山分けできるタイプじゃないの。リクには良い装備上げたんだから、それで手をうって頂戴」

こいつ、企みがバレても言い訳が立つよう、俺に装備を与えたな。

俺が企みに気付かなかったら、恩が売れるからラッキー。本当に悪賢い奴だ。

「で、報酬の内容は?」

「ほら、初心者狩り防止に、一定以上レベル差のあるプレイヤーを高頻度でキルした場合、ペナルティが課されるじゃない。それを利用したいの。護衛した初心者に手伝ってもらって、とあるプレイヤーに初心者軍団を(けしか)ける。そいつに初心者を大量にキルさせて、ペナルティを受けさせるって寸法」

俺は公共の場にも拘わらず、感情を抑えられず声を大にしてしまう。

「お前は悪魔か!!!」

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