29 pretender
ミナが俺をキルし、人狼デッドウォーは人狼の勝利で幕を閉じた。
ゲームが終了して役職を確認すると、俺の予想通り人狼はミナと又三郎。狐はガープだった。
「よう、ミナ。説明しろ」
待機ブースを歩き回って、座ってチョコチーノを飲んでいるミナを見つける。
ミナは計画が首尾よく成功したり勝負で完勝できたりすると、自分へのご褒美として、決まってチョコチーノを飲む。
「なんのこと?記憶にございません」
「政治家か、お前は。説明責任を果たせ」
「大体察しついているんでしょ?説明なんている?」
キルログを見たから、ミナの行動は大方把握した。1日目の夜に、市民の“イノセント“を殺す。2日目の夜に、俺と遭遇。3人のプレイヤーがチーミングをしている可能性を俺に示して信頼を獲得しつつ、“イノセント“を人狼に仕立て上げる。3日目の夜に“アルジャーノン“をキル。その後で、俺と遭遇。そして最後に、俺を4日目の昼にキル。
残りの市民である“前世は負け犬“と“エルマ“さんは、又三郎がキルした。村人陣営全滅により、人狼の勝利。
ミナのゲームコントロール力が遺憾なく発揮されたわけだが──
「2日目と3日目の夜に、なんで俺をキルしようとしなかった?あそこで俺を生かして、何の得がある」
「序盤に3つの狼煙が上がったとき、あの時点で私はチーミングを疑ってたのよ。疑惑を確定させるために、情報が欲しかった。だから襲う前に、あんたと話して情報を集めるべきだと思ったの。処すのは情報を集めてからでもいいからね」
処すって、暴君かよ。というか、初日の狼煙からチーミングの可能性に気付いていたのか。
言われたら気付くが、普通は変わったこともあるなぁと、気にも留めない。本当に、疑り深い奴だ。
「“イノセント“は何も情報を持ってなかったからキルしたけど、あんたが持っていた情報で前提条件は大きく変わった。普通のプレイングをしてたら、勝ちの芽が無い。早急に狐を殺さないと手遅れになる。だからリクを生かしたのよ。狐をキルするためには、”蜉蝣”による高い索敵性能を持ったリクを頼るのが一番確実だったから」
「なぁるほど。でも、3日目の夜は?既に狐をいない。俺を殺せば、確実に勝てたろ」
「その通りね。これが普通の試合だったら、私も間違いなくリクをあの場で殺してた。でも、私って意外と欲張りなのよ」
「欲張りであることに、意外性があると思っていたことが意外だよ」
「このミニゲームは、活躍に応じて貰えるコインの量が増えるじゃない?」
ミナの言う通り、このミニゲームでは試合の勝敗と、プレイヤーの活躍度に応じて報酬が振り分けられる。敵陣営を沢山殺せたり、長く生き残れるなど、陣営により大きな貢献をしたプレイヤーは、貰える賞金が多くなるシステムだ。
「リクを見逃せば、リクは又三郎をキルしてくれる。そしたら人狼陣営で残ったのは私だけ。最後の1人になっても勝利を導く活躍をすれば、獲得する報酬が増えるでしょ?」
ミナの説明を聞き、俺は驚愕する。
それだけ?たったそれだけのために、俺を見逃したのか?あの場で俺を攻撃すれば確実に勝てたのに、もっとたくさんの金を貰うがために、俺を見逃したというのか!?
「普段だったら、私の高潔な精神が許さないけどね。でも今回は味方がチーミングしていた訳だし、私も迷惑かけるくらいがちょうどいいでしょ」
ミナはそう言って、チョコチーノを飲み干し、ニヤリと微笑む。その笑みは上品で冷酷で、さながら人を騙して喰らう狼のようだった。




