24 rule breakers
「恐らく、チーミングしているのは3人。又三郎とアルジャーノンは、更にもう1人いる。そうでもないと、ゲーム開始と同時に、狼煙が3つほぼ同時に上がることなんてことはないからね」
ミナは苦虫を噛み潰したような顔で言う。きっと、俺も同じ顔になっているのだろう。
「そりゃまずいな。チーミングしている奴が、全体の1/3以上を占めている。きついってもんじゃない。徒党を組んでる3人が、アルジャーノンと又三郎とあともう1人が誰か分からないと、勝負にならねー」
「チーミングしているもう1人が誰かは、大方想像はつくわ。”又三郎”と”アルジャーノン”。プレイヤーネームに、共通点があるでしょ?」
俺は手に顎を置いて思案する。が、何も思いつかない。
見かねたミナが、答えを言う。
「小説のタイトルよ。『風の又三郎』、『アルジャーノンに花束を』。聞いた事くらいはあるでしょ?2人のプレイヤーはどちらも、有名な小説のタイトルにある名前。チーミングしている連中はゲーム前から友達で、友情の証に規則性のあるプレイヤーネームでもつけたんじゃないかしら?」
「ちょっとこじつけがすぎないか?」
「私もそう思う。けど石橋を叩く余裕はない。協力者も同じく小説のタイトルを参考にしている可能性に賭けるしかないわ。で、人狼参加者の1人に、丁度その条件を満たす名前がある。”ガープ”ってプレイヤーよ。『ガープの世界』。これも世界的に有名な小説ね。偶然の可能性も捨てきれないけど、信じる価値はあると思う。”又三郎”、”アルジャーノン”、”ガープ”がチーミングしている3人だと仮定しましょう」
本当に博識で機知に富む奴だと、つい感心してしまう。狼煙とプライヤーネームから、ここまで推理できるなんて。
というか、一般常識があるかのようにミナは言ったが、『アルジャーノンに花束を』や『ガープの世界』なんて小説、全く知らん。『風の又三郎』はギリ知っているが、読んだことは当然ない。
「上がっていた狼煙は、黒と白と赤。もし狼煙の色で自分の役職を伝えているのだとすれば、ガープの役職は恐らく狐だな。役職は、市民、占い師、狩人、人狼、狐。狩人は俺で、占い師はエルマさん。狼煙の色は3色だったから、チーミングしている奴の役職は市民、人狼、狐の3つになる。アルジャーノンは確定で市民。又三郎はまず間違いなく人狼だから、ガープは狐だ。そうなると、チーミングしている連中の狙いは、狐の単独勝利か?」
ミニゲームで勝利すれば、報酬が貰える。貰える報酬は、例えば『他陣営のプレイヤーを殺した』『自陣営で最後まで生き残った』など、活躍度に応じて参加した全プレイヤーに配分されるが、報酬の大半は勝利した陣営に分け与えられる。
チーミングしている3人は、3つの陣営に1人ずつ分かれている。
各陣営が勝利した際の、3人組が手にする報酬はざっくり算出すると、以下のようになる。
村人陣営(合計5人)の勝利→全報酬の約20%をゲット
人狼陣営(合計2人)の勝利→全報酬の約50%をゲット
狐陣営(合計1人)の勝利→全報酬の約100%をゲット
徒党を組んでいる3人にとって、狐陣営の勝利が一番報酬が多い。従って、狐陣営の勝利が最優先のはず。
「そうでしょうね。それで、残念なニュースと、嬉しくて残念なニュースがあるわ。どっちから聞きたい?」
「洋画かよ。取り敢えず、残念なニュースは?」
「最近、ダイチさん(※推しのYoutuber)が、別ゲーにハマって、”ザ・ヘル”の投稿頻度が減ったの」
「知るか。それで、残念で嬉しいニュースは?」
「逆よ。嬉しくて残念なニュースね」
「どっちでもいいわ」
「どっちでも良くないわよ。亀とすっぽんぐらい違うわよ」
「ほぼ一緒じゃねぇか。ていうかそもそも、嬉しくて残念なニュースって、どういうことだよ」
「私、1日目の夜に、イノセントってプレイヤーに襲われたの」
下らない雑談から急に真面目な情報を投下されて、脳をぶん殴られた気分になる。
「はぁっ!!??じゃあ、イノセントが人狼?」
「えぇ。その夜はなんとか逃げ切れた。そしたら2日目の昼に、偶然その”イノセント”ってプレイヤーに遭遇したの。そのまま戦闘になって、そいつをキルしちゃった」
「マジ!!??人狼をキルできたとか、メッチャ嬉しいニュースじゃん」
「これが普通の人狼ならね。でも、チーミングしている連中がいるせいで、状況が特殊なのよ。私が人狼を殺したことで、残る人狼は”又三郎”1人。”又三郎”が自死したら、人狼陣営が全滅により、狐の勝利となる」
やっとミナの懸念が分かった。
チーミングしている3人の目標は、狐の勝利。
このミニゲームでは、デスしたプレイヤーの遺体はゲーム終了時まで、死んだ場所に残る。だからイノセントの死体が見つかり、その情報が広まるのも時間の問題。
イノセントがデスしていると分かれば、又三郎は自殺するだろう。そうすれば、人狼が全滅し、狐陣営の単独勝利となる。
つまり俺たちは、イノセントの死が広まる前に、狐であるガープを殺さねばならない。
連中にイノセントのデスが伝わるまで、あまり猶予はないだろう。今この瞬間にゲームが終わっても、不思議はない。遅くとも、4日目の昼にまでは気づかれる可能性は高い。
現在、2日目の夜。夜は視界が悪く人狼が有利なため、チャンスは3日目の昼だけ。
明日の昼にガープを殺せなければ、十中八九、狐陣営が勝利する。




