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20 villagers&cancers

 ”ザ・ヘル”は世紀末の無法地帯をコンセプトとしているため、基本的にはいつでもどこでも自由にPKが出来る。しかし幾つかの特殊エリアは、その限りではない。

そんな数少ない平和的法治地帯の1つが、”小競り合いエリア”である。どうだ。いかにも平和な名前だろう。

小競り合いエリアとは、要するにミニゲームエリアだ。ルール無用何でもあり戦闘ではなく、特殊なルールに基づいたゲームを行い、勝てば金を得て、負ければ失う。

その中で特に人気のミニゲームは、『人狼デッドウォー』。

名前の通り、人狼を元にしたゲームだ。

市民陣営5人と、人狼陣営2人、狐陣営1人に分かれ、各陣営の勝利を目指すチーム戦バトルロワイアル。

市民陣営の勝利条件は、人狼と狐を()()させること。人狼陣営の勝利条件は、市民と狐を()()させること。狐陣営の勝利条件は、市民か人狼の()()()()()()が全滅した時、狐のプレイヤーが生き残っていること。

最初にプレイヤー8人がマップ上にランダムにリスポーンされ、昼のターンが始まる。200秒が経過すると夜のターンが始まり、再び200秒が過ぎると昼のターンとなる。このように200秒ごとに昼と夜のターンが入れ替わり、その度に生存しているプレイヤーはマップ上へランダムに再転送させられる。

夜のターンでは市民は視界が非常に悪くなり、反対に人狼は攻撃力が高くなる。端的に言えば、夜は人狼が狩りをするのに絶好のタイミングなのだ。

またこのゲームでは特殊な役職として、占い師と狩人がいる。

占い師は、昼のターンに1回だけ指定したプレイヤーの役職を知ることが出来る。狩人の能力は、夜のターンで人狼と同様にバフが入り、また視界が鈍くなることはない。占い師も狩人も、どちらも市民陣営である。

以上がざっくりとしたルールだ。



今日はミナを誘って、その人狼デッドウォーに参加している。

「珍しくリクが誘ってきたからどんな要件かと思えば、人狼やりたかったの?チーミングしようってこと?」

試合が組まれるのを待機している間、ミナが言う。一言目から、ゲーマーの風上にも置けないゲス発言だ。

「ずっとこのミニゲームやってみたかったんだ。でもカンスト前の影魔法だと弱すぎて、こういう野良のチーム戦だと戦犯になるからやめておいた。カンストして大分強くなったからやってみようと思って、折角だし誘ってみた」

「なるほど。私これ得意だから、ギタギタのバキバキのグチャグチャのモグモグにしてやるわ」

どんだけ俺を潰したいんだ。あと、モグモグにしてやるって何?食べられるの?

他愛のない会話をしていると、10秒後ゲーム開始という表示がされた。

「そろそろ開始か。緊張するなー。お手柔らかに頼むぜ」

「同じ陣営になることを願っているわ」

空中に赤文字で『ゲームスタート』と表示されたかと思えば、白い光に包まれ、気づいたら雑木林の中にいた。

どうやら森ステージのようだ。木々が生い茂り、見通しが悪い。その特性上、比較的人狼が有利なステージだ。

役職を確認すると、狩人だった。つまり、村人陣営。人狼と狐を全滅させれば勝利だ。

初日は情報が0だから、誰かと合流して情報を集めないと話にならない。取り敢えずマップの中央を目指して歩く。

少し歩くと、1人の男性、いや男の子の姿をしたプレイヤーと遭遇した。雪のように真っ白な髪。無垢な印象を与える、あどけない顔。俺がショタコンなら、間違いなく誘拐しているだろう。

「あっ、、、ぁの、すみません。初めまして、リクって言います。よろしくお願いします」

初対面の人に話しかけるのは苦手だ。意識すればするほど、どもってしまう。何も知らない人が見れば、美麗な小学生男子に声をかける不審者として、即刻通報されるだろう

「あっ、僕はエルマです。よろです。リクさんの役職は何ですか?」

エルマさんは優しい笑みを浮かべて、答えてくれる。

「狩人です。エルマさんは?」

俺が言うと、

「本当ですか??僕は占い師です!初日占いで、”アルジャーノン”ってプレイヤーを占って村人と出ました」

初日から役職持ちが互いを認識できるとは、かなりラッキーだ。尤も、エルマさんが真の占い師である保証はないが。他に占い師を名乗るプレイヤーが現れるまでは、安心できない

それはエルマさんにとっても、同じことだろう。


他にプレイヤーがいないか、周囲を見渡すと、奇妙なものが目に入る。

「ん?煙???」

「狼煙ですね。しかも1つじゃないです」

エルマさんの言う通り、狼煙は3つ。

奇妙なことに、黒色、白色、赤色と、上がっている狼煙は全て色が異なっていた。

「どういうことですかね?取り敢えず、狼煙の上がったところに行きます?」

「そうしましょうか。多分、他の人も集まるだろうし。一番近い狼煙は…こっちすね」

俺たちは一番近かった白色の狼煙に向かって移動した。

その道中で、”ガープ”というプレイヤーと合流した。ガープに、狼煙について聞いたところ、「何も知らない」と言っていた。

その後は特に何も起きずに200秒が経過し、謎が残ったまま恐ろしい夜を迎えた。

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