17 fixer
どこで選択肢を誤った?
桃太郎の屋敷に侵入した際、侵入が露見したことか?俺たちが桃太郎を怪しんでいることが、茶屋にて桃太郎本人にバレた時か?或いは、俺たちが気付かぬうちに見過ごした穴があったのか?
ゲームオーバーの予感に、手足から熱がサーッと引いて、視界がレンズのように歪んで見む。
桃太郎は鋭い目を光らせ、淡々と言葉を発する。
「金太郎殿。今一度問う。何故、此処を調査したいと申す」
金太郎は冷や汗を垂らしながらも、精一杯の虚勢を張る。
「浦島さんの毒殺未遂に使われた、“ブチコロ草“。それが、この施設から盗み出されていないかどうかを確かめるんです」
金太郎の言葉に、桃太郎の部下である狗が反論する。
「なにぃ!??その件については、この私が既に調査を行い、ここで管理している“ブチコロ草“の量が減っていないことを確認した!今一度調査する意味などない!」
「ですから、お前らの調査は信用ならんと言うちょるんです!!!浦島さんを憎んでいた桃太郎の息がかかっちょる奴を、どう信用せいゆうんですか!!」
金太郎は一息で言い切ると、しまったという顔をする。
「貴様ぁ!!捜査令状を偽造した上、我が主を濡れ衣をふっかけるとは、何様のつもりだ!!!」
案の定、主人を愚弄された狗は怒りを爆発させ、日本刀を腰から抜く。それに対抗して、金太郎も鉞を構える。俺もミナも、戦闘に備えて各々の武器を取り出す。
いつ決壊してもおかしくない一触即発の空気感。その中で一番最初に動いたのは、唯一武器を構えていない桃太郎だった。
「よい」
あまりに唐突な一言に、皆が困惑する。
「金太郎殿に、施設の調査を許可する。好きなだけ調べるがいい」
桃太郎の発言に、その場の誰もが固まる。暫くして、やっと硬直の解けた狗が言う。
「どど、どうしてですか!?調査は私がしました。こんな田舎育ちの不届き者に調査を任せるなど、言語道断!!考え直してください!!」
「お前が調査をして、異常ないことは分かっているのだろう?ならば、再度調べさせても、困ることは何もない。とはいえ、これほどのことをしでかしてて、何の成果も得られなければ……分かっておるな?金太郎殿。我の度量はあまり広くない」
桃太郎は狗の異論を退けながら、金太郎を真っすぐ見つめる。
金太郎もそれに応えるかの如く、桃太郎を真っすぐ見つめる。
「はい。煮るなり焼くなり、なんとでもしてください」
金太郎は迷いのない足取りで、施設に入っていく。その3歩後ろを、俺たちもついてく。親カルガモに付いて行く子カルガモの気分だ。
なんでかはよくわからんが、桃太郎が調査を許可してくれた。異常は見つけられないと、高を括っているのか?
頭にクエスチョンマークを浮かべながら歩くと、狗がしゃがれた声で喚く。
「待てぇぇぇ!!!まだ話は終わってないわぁ!!!!!」
白い部分なくなるほど目を充血させた狗が、先頭を歩く金太郎へ飛び掛かる。
慌てて応戦しようとしたその時。
「伏せ」
低い声がしたと同時に、刀を鞘に納める音が空気に染みる。同時に、狗はまるで電池が切れたように地面に寝転がった。
気絶した狗を見下ろして、桃太郎は言う。
「安心せい。峰打ちだ」
かぁぁぁっっこよっ!!
今の一瞬で、狗を気絶させたというのか?斬った瞬間はおろか、いつ動き始めていつ動き終わったのかすら分からなかった。
ヤバい、あまりのカッコよさに、呼吸の仕方を忘れてしまう。
「あんた、こういうの好きよね」
目を輝かせる俺を、ミナが冷めた目で見る。
違う。好きじゃなくて、大好きだ。更に言えば、俺に限らず、男子はみんなこういうのが好きだ。
ブチコロ草の管理状況を調べると、意外な事実が分かった。
結論から言うと、犯人は桃太郎の配下である狗だった。
管理場を調査した結果、丁度成人男性を殺せる分だけ、”ブチコロ草”の量が記録より少なかった。以前狗が報告した内容と食い違っていることから、狗に取り調べを行うと、狗が島太郎のご飯に毒を盛ったことを自白した。供述によると、動機は主人である桃太郎が乙姫の結婚するためには、浦島太郎が邪魔だったから、とのことだ。
ただ、あくまで狗が独断で行った行為。桃太郎は事件について全くの無関係だそうだ。
「ほんまに、ありがとうございました。浦島さんの仇が取れました」
事件の犯人を捕まえることができ、金太郎は地面に頭がつきそうなほど深々とお辞儀する。
「どうか、受け取ってください。おらの故郷で祀られてた神器です」
金太郎は背負っていた銀色に光る斧を渡す。
ミナがそれをひったくるように奪い、どんなアイテムか確認する。礼儀もへったくれもありゃしないな。
「なんにせよ、これでクエストは終わりか。結構長かったな」
俺がため息交じりにそう言うと、ミナは意味ありげにほほ笑む。
「何言ってるの?まだ話は解決してないわ」
ミナの発言を理解できず、オウム返しをする。
「解決してない??そっちこそ何言ってんだ?もう事件は解決しただろ?」
「いいえ。まだまだ未回収の伏線があったでしょ。着いてきて。あっ、金太郎さんも一緒に来て頂戴」
放心する俺を置いて、ミナは鼻歌を歌いながら歩き出す。
「待て待て待て。ついてこいって、どこに行くんだよ」
「決まってるでしょ。桃太郎の屋敷よ」




