14 Be intruder
俺とミナは火事の真相を暴くべく、金太郎と協力をして調査を始めた。
まずは離れが燃え始めた際に、現場から去っていたという不審な人物の足取りを追うため、聞き込みを始めた。ある程度情報が集まると、『茶屋で休んでいる金太郎の元へ行き、情報を共有しよう』とミッションが来た。
お前が調査を手伝ってくれとお願いしたのに、誰より早く休むなよ。なんて野暮なツッコミを心の中でしつつ、茶屋の個室で団子を食っていた金太郎と合流。集めた情報を整理した。
──目撃者の証言をまとめやすと、不審者は2名。菅笠を被っちょるため、顔は分からない。逃走ルートは...こんな感じですな」
金太郎が、竜宮城周辺を記した地図に、赤い筆で不審者が通った道をなぞる。
「遠回りしてでも、人通りの少ない道を選んで移動しておりやす。人目を憚る事情があったことは間違いないでしょう。情報が少ないんで確定はできやせんが、進行方向から不審者の目的地は恐らくここ」
金太郎が、地図上にある一際大きな屋敷に丸をつける。
「この家は?」
「桃太郎様の屋敷です」
俺とミナは顔を見合わせる。
「つまり、離れに火を放った奴と桃太郎は、関係があ───」
「失礼。邪魔させてもらう」
個室を区切っていた暖簾をくぐり、長身の男性が入ってくる。噂をすれば、なんとやら。桃太郎であった。
固まる一同を歯牙にもかけず、桃太郎は机の上にある地図を一瞥。そこからどういう会話が行われていたのかを推察して、深くため息をつく。
「金太郎殿。浦島殿と乙姫様が逝去され、断腸の思いであることはよく分かる。我も同じ気持ちだ。されど、あの火事は我々が事故と判じた。それに異議を唱える行為は、あまりお勧めしない。我々にも面子がある。これ以上この件を追求するのであれば、相応の処罰を覚悟してほうがよい。…では」
桃太郎は冷淡な口調で言い放つと、こちらの返答も待たず、背を向けて去ろうとする。
すると金太郎は椅子が倒れる程勢いよく立ち上がり、殆ど怒鳴るように啖呵を切る
「処罰じゃと?そんなもん、好きにすればえぇ。覚悟はとっくに決まっちょる。おらは何があろうと必ず!!この事件の真実を暴く!首を洗って待っとけぇ!!!!」
金太郎が叫び終わると、桃太郎は止めていた足を動かし、振り返ることすらなく無言で店から出て行った。
金太郎は椅子を戻すと、どさりと腰を下ろす。
「やっと確信がついた。犯人は、桃太郎でさぁ!!ただ桃太郎が犯人ならば、”桃組”の捜査は当てにならん。おらたちが証拠を見つけねぇと」
”桃組”は、この都市における警察のようなものらしい。警察が当てにできない以上、この件を調べるのは俺たちだけ。
「これ以上、不審者の足取りは追うのは無駄でしょう。おらたちが不審者を探しているとバレたから、桃太郎に対策されてしまう。ならば、残る鍵は毒だけですな」
「毒?」
「前に申し上げたように、あの日の浦島様の食事には、毒が盛られとりやした。その毒は、”ブチコロ草”という植物からとれる毒でさぁ」
あぁ。そう言えば火事が起きる前の食事会。浦島は体調不良で食事会を途中退出したから奇跡的に回避できたが、食事に毒が盛られていたんだった。それにしても、”ブチコロ草”って、ひどいネーミングセンスだ。
「ブチコロ草は強い毒を持つ反面、良い薬にもなる。そのため、幾つかの公的機関で栽培されちょりやす。その1つに、桃組が管理している機関がありやす。浦島さんに盛る毒を作るために、そこで育てているブチコロ草を使用したはず。桃組が管理しているブチコロ草が事件前に不自然に減少していることを突き止められれば、浦島の毒殺未遂に関与したことの動かぬ証拠となりやす」
「で、どうやって調べるんですか?ブチコロ草の在庫を調べさせてーって言って、調べさせてくれるんですか?」
ミナの質問に、金太郎は首を振る。
「素直に調べさせてはくれないでしょう。だからといって、管理している場所に忍び込んで調べるのも無理でさぁ。”ブチコロ草”の管理を任されているのは、桃太郎の懐刀の1人、”狗”。奴の嗅覚を掻い潜ることは不可能でさぁ」
「じゃあ、どうやって?」
「忍んで調べるのが無理なら、堂々と調べればええ。偽の捜査令状を作るんです。捜査令状は、桃太郎が発行するもの。主である桃太郎の命令とあれば、狗も捜査を邪魔できやせん」
「偽の令状を作るって、そんなことできんの?」
「危ない橋を何度も渡ることになりでしょう。まず絶対条件として、特注のハンコが要りやす。ハンコの押印が、捜査令状の証明となりやす」
「ハンコの入手方法は?」
「ハンコは桃太郎の屋敷にありやす。ですのでお2人には、桃太郎様の屋敷に忍び込み、ハンコを盗み出してもらいやす」




