11 Go underwater
”KPK”と”acシャンパン”のアイテムトレードに乱入し、アイテムを総取りした次の日。
俺とミナは集まって、戦利品の山分けを行った。
「私が最後まで生き残ったから、このお宝たちを得られたわけで。戦果は私が9割貰うってことで──」
「ざけんな。戦ったの、ほぼ全部俺だろ!フィフティフィフティ。びた一文もまけねぇよ」
ミナが強引に話を進めようとしたのを、慌てて止める。
そもそもミナが戦利品を一部懐に納めている疑惑もあるが、追及しても水掛け論になるだけなので辞めておく。
「ちぇっ。まぁいいわ。頑張ってくれた死ね」
「なんか語尾に怒りがこもってない?」
「気のせい気のせい。じゃ、まずはレアアイテムから。”月吠の双剣”、”禁じ手の兜”、”ノーチラス号の切符”2枚、”三伏に凍るカトレア”、”名刀・昼鳶”。大漁ね!!!」
ミナは御満悦な表情で言う。
「”禁じ手の兜”が欲しいな。ミナは欲しいのあるか?」
「”三伏に凍るカトレア”かしらね。”名刀・昼鳶”と”火星人の置き手紙”は売っちゃう?得たお金は山分けね」
「異議なし」
「売るのは任せて。ぼったくってやる。それと”ノーチラス号の切符”に関するクエストだけど、2枚を使って一緒にクエストを受注しない?」
アイテム”ノーチラス号の切符”。
アップデートで追加されたレアアイテムの1つ。神秘の潜水艦『ノーチラス号』に乗り、深海にある特殊ステージ”海底都市”に行くことが出来る。追加されて日が浅いことに加え、”ノーチラス号の切手”が非常にレアなため、まだそのエリアに行ったことのあるプレイヤーは少ない。故に海底都市に関する情報は少なく、謎の多いエリアだ。
俺は2つ返事でミナの申し出を了承する。海底都市とか、興味をそそられないわけがない。
早速、ノーチラス号が出港する港町”グラビオール”へと向かった。
「でけぇ!!!!!」
ノーチラス号を見た俺は、圧巻のサイズに感嘆の言葉をもらす。千人でも二千人でも乗れそうだ。これほど巨大な潜水艦に乗るのが俺とミナの2人だけとは、もったいないを通り超して、なにか悪いことをしている気分になる。
紡錘形の形に、黒く光る鉄の肌。陶芸品のように美しさと、例え岩礁とぶつかっても傷一つ付かなそうな剛健さが共存。まさに神秘の潜水艦。
いざ船の中に入ってみると、シンプルな外見とは裏腹に、中は絢爛華麗な造りとなっている。
俺たちが搭乗するや否や、船はすぐに出発した。波に揺られること30秒。目的地である海底都市に着いた。日清食品もびっくりの速さだ。まぁ現実のように到着まで何時間もかかるようでは困るが。
ノーチラス号を下りると、言葉ではとても表現しきれない幻想的な街並みが、目に飛び込んできた
昔の日本を思わせる和風の街並み。都市の一番奥にある、立派な朱色の城。都市を覆う、蒼い海。
これほど美しい都市を知る者が数えらえる程しかいないなんて、勿体ないと言うほかない。
「ようこそおいでくださった、冒険者どの」
ファンタジックな景色に息を呑んでいると、NPCの1人が声をかけてくる。
そのNPCは大きく『金』と書かれた腹掛けを着た、力士のような大男。まるで童謡の金太郎だ。
「おらはこの海底都市の番人をしちょる、金太郎ってもんです」
おっと。マジで金太郎だ。まぁ、童謡が元ネタのキャラは、創作物では珍しくない。
「市長まで案内しやすので、こちらの牛車にお乗りください」
金太郎に促されるがまま、牛車に乗る。スピードはゆっくりだが、殿様になったようで気分が良い。牛舎から昔ながら町並みを見渡すと、平安時代にタイムスリップしたのかと錯覚する。
「今日はまた一段と賑やかですのう。久しぶりに冒険者様が来られたからですかねぇ」
金太郎は街の喧騒を眺めなから、温かい表情で言う。
すると突然、牛舎が止まる。
何事かと思って前方を見ると、始めと終わりが見えないほど長い行列が、牛舎の進行方向を妨げていた。
「なんだ、この大名行列」
「これは、桃太郎様の行列ですなぁ」
「桃太郎!!??」
金太郎の言葉を、オウム返ししてしまう。金太郎だけじゃなくて、桃太郎までいるのかよ!お伽噺のクロスオーバーってわけだ。
いや待て。俺たちが向かう先は、竜宮城と言っていた。ということはつまり、あいつもいるな?
「金太郎さん。浦島太郎って名前に、聞き覚えないか?」
金太郎は少し驚いた様子を見せつつ、目を輝かせて答えた。
「はいっ!!彼は、この海底都市に来た最初の冒険者様です」
おっと、マジで浦島太郎いたよ。金太郎に、桃太郎に、浦島太郎。ケータイ会社のCMか?




