07:寝坊②
授業が終わり図書室へ向かっていると、今日は朝からよく見る栗色の髪が見えた。
これまであまり気にしたことなどなかったが、
どうやらリオンと自分の行動が似ていることにカイは気がついていた。
授業が終われば図書室に向かい、休みの日にも図書室へと足を運ぶ。
他の女子生徒のようにどこか遊びに行くことはないのかと思うほど、リオンは図書室にいた。
ごく稀に、不定期だが授業後に急いで教室から出ていく姿を見たことがあるが、基本的には図書室にいる。
近くの席に座って良いかと聞かれてから、
確かに図書室に行くといつもリオンはカイが気に入っている窓際の席から、一つ空けた席に並んで座るようになった。
基本的には各々勉強をしているが、たまに分からないところがあると話しかけられる。
勉強のこととなると、あの嵐のような勢いはなく、粛々と、淡々とリオンは聞いてくる。
そちらのほうがカイとしてはありがたい。
リオンのあの嵐のような勢いが出ると、何を話して良いのか正直わからなくなる。
そんな勢いでカイに話してくるのは、母親くらいだからだ。
カイが前を歩くリオンに声をかけたほうが良いかどうか考えていると、
ちょうど廊下の角でリオンが後ろを歩いていたカイに気がついた。
「あ、今から行くところ、だよね?」
そう言って図書室の方向を指さしたリオンはゆったりとした笑みを浮かべていた。
リオンのことは周りが思うのと同じように美人だとカイは思う。
先日から何度もその笑顔を向けられたからか少しは慣れてきたが、
カイにはその笑顔が眩しすぎて目を逸らすことがあった。
特別な感情がある訳ではなく、ただ見ていられない。
いくら美味しい食べ物でも沢山あれば良いと言うものでもないというのと同じ感覚だ。
美人は美人で大変だなと思っていた。
図書室に入ってからはお互い何も言わずとも、
いつもの窓際の席に座った。
ノートを広げ、ペンを走らせ始めると段々と集中していく。
その魔法や魔術を目の前にすると、
その世界に自然と吸い込まれていくのだ。
黒魔術師の大家と言われるベイル家の次男として生まれた時から、魔術を学ぶのは当たり前に決められたことだ。
けれどもカイはそのことを嫌だと思ったことは一瞬もなかった。
生まれた家のせいなのか、それとも本当に個人の興味関心なのかはわからないが、
その世界に入り浸るのがカイにとって1番の楽しみなのだ。
黒魔術というと、呪いや人に危害を加えることが多いとされているが、実際は違う。
確かに使い方によってはそういうこともできるが、ベイル家はその魔術を主に護身の依頼を受けて使っているのだ。
ただそのことは公にはなっていない。
依頼主は自国他国問わず王族や貴族など高貴な人間が多いことからその仕事の依頼は秘密裏に行われる。
そのせいで、黒魔術師の大家というキャッチフレーズだけが一人歩きし、
暗殺や呪殺ばかりをやっている一家だと思われているらしい。
そのことは面倒だと思いながら、仕事を続けるためには良いカモフラージュなのかともカイは思っていた。
「ねぇ、これ、あってる?」
その声にぱっと右側を見る。
リオンが小さな声と共にあの綺麗な字で書かれたノートを見せてきたので、その内容を見て頷くと、声を出さず嬉しそうにリオンは笑っていた。




