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49:怒りと感謝


「ねぇ、リオン……さん。私たちのこと騙してたの?」


サラと2人食事をとっていた時にかけられたその言葉に思わずリオンは使っていたスプーンの動きを止めた。

体が一瞬でヒヤリとするような感覚に襲われた。

顔をあげるとミーナ達クラスの友人数名が立っていた。


「何よ、その言い方…」

サラが言う。


「え…あの……騙してた、訳ではない……。けど、よく思わない…よね。それは謝らせて」


そう思わず俯きながらミーナ達に言う。


「本当にこの国の王族は怖い。人に平気で嘘ついて、心の中で私たちのこと馬鹿にしてたんでしょ?」


「そんなこと…ない」


「……それにカイと授業以外いつも一緒にいるのも、結局人を近寄らせないためだったんでしょ?彼に近づく人なんていないもんね」


その言葉に思わずテーブルに手をつき立ち上がってしまった。


「……私のことは好きに言ったらいい。王族だって黙っていたのは事実だし、嫌な思いさせたのであれば謝る。けど、カイは、関係ない。彼をそんな風に思ったこと一度もないし、彼に近づく人がいないなんて言わないで!」


思わずキッとミーナ達を見てしまうと、彼女らは少し怯んだ様子だった。


「リオン……」

サラが心配そうにリオンの顔を覗いてくる。


「……好きにすれば。でも私たち、王族の近くにいるのはちょっと怖いから、ごめんなさい」


そう言ってミーナ達はいなくなった。


「リオン……大丈夫?」


「うん、ごめん、サラ。ちょっと頭にきちゃった。ダメだね、こんなんじゃ、逆効果だ」


そう力なく笑って食事を続けた。

味なんて、もちろんわからなかった。



***



いつものあの、広場に向かった。

図書室に行く前にここにカイがいるかどうかを確認するためだ。

けれども彼は今日はそこにはいなかった。


(図書室か。今日寒いもんな)


そう思っていつもの図書室のあの窓際の席に向かった。


窓際には、いつも通りカイがいて、今日もまた大層難しそうな本を読んでいる。表紙の色からしてあの夏に買った古の文字の本だろう。少し前に面白くてハマってると言っていたのを覚えている。


そっとカイに近づくとリオンに気づいた彼は顔を上げた。


その顔を見た瞬間、エミリアを城に送ってくれたお礼を言わなければと思う。けれども昨日のミーナ達とのことが一緒に思い出され何を言えば良いのかわからなくなる。


その様子に気づいたのか、カイは荷物をまとめリオンを連れ立って図書室から出た。

ちょっと寒いけど、と言いながら食堂の裏の広場に向かい2人ベンチに並んで座った。


「あのさ」


リオンがなんとか口を開く。



「エミリアさん、城に来てくれた」


「ああ。ちゃんと行ったって聞いた。余計なお世話だった?」


ふるふると横に首を振る。


「ローブまでもらっちゃったよ。エミリアさんとお揃いの色」


「え?」


「あれ?聞いてない?お土産だって言って持ってきてくれた。刺繍がすっごく綺麗なの」


「好き勝手やりすぎだな、あの人」


「でもすっごく元気出たよ」


「まぁなら良かったけど」

そう少し困った笑顔でカイが言う。


「あとさ……クラスの…ミーナ達に、カイ、私といるとあんまりよく思われなさそうなんだ…だからさ…」


「サラに聞いた」


「…そっか」


「ありがとう」


「え?」


カイになぜありがとうと言われるのかリオンには全く理解ができなかった。


「怒ってくれたんでしょ?サラが言ってた、『リオンは表情豊かだけど怒ったの初めて見た』って」


「……怒ちゃって、逆効果だったけどね」


「自分のために誰かが怒ってくれるなんて経験なかったけど、案外嬉しいもんなんだなって思った」



そうカイがリオンに笑いかけると、リオンの涙腺が緩んだ。



「ねぇカイ……多分私、カイに何回ありがとうって言っても足りないや」


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