48:化粧水
無事にイサク達をもてなすことができたという安堵感とは裏腹に寮に戻る足取りは随分と重かった。
校内に入ってからすれ違う生徒達の様子が明らかに城に行く前と比べ違うものになったのがわかったからだ。
(わかってはいたけど、きついな)
自室のドアの前でリオンは立ち止まった。
サラは何と言うだろう。嘘をついていたわけではないけれど、本当のことは伝えていなかった。
彼女のことだからきっと今まで通り接してくれるのだろうが、そうでなかったとき自分はどうすれば良いのかと立ちすくんでしまった。
彼女が部屋にいて欲しいと思うものの、いてほしくないとも思う。
少し震える手を一度ぎゅっと握った後、意を決してドアを開けるとサラは部屋にいた。
「ただいま……サラ、あのさ……」
そう続けようとするが案の定何を言えば良いのか分からなくなってしまう。
「そんなところで何突っ立ってるの?部屋の中丸見えだから早く閉めてよ」
そう言われ急いでドアを閉め、サラの様子をそっと伺う。
「……私、ちょっと怒ってるんだからね。教えてくれたってよかったのに…私にくらい。しかも私は知らないのにカイは知ってるし」
そうサラは頬を少し膨らませてリオンに言う。
「……ごめん、私…」
思わず俯いてしまうリオンにサラは続けた。
「だから。リオンの使ってる化粧水3本くらいもらわないと気が済まないからね」
その言葉にハッと顔をあげると、サラはいつものように呆れた顔で笑っていた。
「……サラぁああぁぁぁ」
思わず彼女に抱きつくと、はいはいと言ってリオンの頭を撫でてくれた。
「サラごめん。ほんとうに、わたし。ほんと、なんか、もう。許して……」
「だから化粧水3本でって言ってるじゃない」
「友達やめるなんて言わない…?」
「はぁ。ほんとこれだからリオンは。私怒ってるとは言ったけど友達辞めるなんて一言も言ってないわよ?」
「ゔうぅぅ……サラ、好き。大好き。一生ついてく」
そう食事の時間までべそをかいて彼女になだめてもらうことになった。




