44:凍てつく花①
季節は冬になっていた。
その日の授業は座学が多い日だった。
ミーナの隣で、ノートをとりながら先生の話に耳を傾けていた。正直なところ座学となるとリオンの知識はもう授業の先を行っていたので復習のようなものだ。図書室で勉強をし、わからなければカイに聞くを繰り返していたからだ。
(もう少し難しいこと教えて欲しいな)
そんなことを考えながら授業を受けていた時だ。
窓際の席に座っていた生徒たちがざわざわとし始める。
それに先生も気づいたのか教科書を読み上げていた声が止まった。
なんだろうと思いリオンも窓際の方を向くが何が起こっているかわからなかった。
ふと窓際の前の方に座るカイの方を見ると、何だかすごく難しい顔をしてリオンを向いていた。
「おい、あの馬車すごくないか?王族のものじゃねぇの?」
クラスの誰かが言ったその言葉にリオンは凍りついた。
城での仕事は明日のはずだ。それに迎えに来られる時は目立たないよう人気のない場所まで、王族のものとは言えない普通の馬車に迎えに来てもらうよう頼んである。
「え、王族?この学校に来るのかな?怖い」
そうだ。この国の国民は数代前の独裁的な国王のせいで、王族のことを無条件に怖がる傾向がある。
何も知らないミーナが隣で言った言葉にリオンは何も答えられなかった。
教室中がザワザワしていると、ガラッと扉が開かれ校長先生が入ってきた。
「リオン、少し良いか?」
(終わったな)
そう思い、リオンは無言で立ち上がり教室を後にした。
ミーナは隣で、えっ?え?っと何度も言い、クラスの生徒たちのざわつきは先ほどのものと比べ物にならないものになっていた。
夏頃からの幸せな日々は一瞬で崩れ落ちた。
ガラガラと音を立てるように、束の間の夢だったかのように、消え去った。
(絶望とは、こういうことを言うのかな)
そう思いながら校長に連れられ階段を下っていた。
「リオン!」
カイの自分を呼ぶ声が聞こえ振り返ると、彼は随分困った顔をしていた。カイが困ることなど、ないはずなのに。
「えへへ、やんなっちゃうや。隠してること、もう意味なくなっちゃった。サラに、明日もいないからって伝えておいてくれる?」
そう力なく笑った。
「……わかった」
じゃあねと言ってカイを置いて学校の外に向かった。
教室の窓から沢山の生徒がこちらを見ていることには気づいたが、慌てて身を隠すように乗り込む気力も何もなく、やけにゆったりとした足取りで馬車まで歩いて行った。
その姿はまるで風に惑う花のようだった。




