40:ドレス
夏休みぶりの街だ。
休みの日、サラにパーティーのためのドレスを見繕いに行くからついて来てと言われ一緒に出かけてきたのだ。
サラの言っていた通り、相手を決めたとなった途端、どこの誰かもわからない男子生徒の誘いはパタリとやんだ。カイ、さまさまである。
「サラ、何色にするのか決めたの?」
「うーん、まだ決めてない。生地見てから決めようかと思って」
この街には魔術学校の生徒御用達の仕立屋がいくつかある。ちょうどこの時期、夏休みが明けた残りの夏の期間中に秋のはじめにあるパーティーのためのドレスを特急で仕上げてくれる店だ。
生徒としては相手が決まってから仕立てられる、店としては必ず毎年一定数の注文を受けられるのでお互いにメリットがあるようだ。
「で、リオン。カイと参加するって本当?」
「うん。あまりに困ってたらカイが相手しようかって言ってくれて。ほんと、ありがたい友人サービスだよ」
そう言うと何故かサラはちょっとため息をついた。
「けどさ、パーティー参加するならリオンもドレス、着るでしょう?一緒に今日、決めよう!」
そういえばそうだったとリオンは思い出した。
城で着るようなドレスは学校には少し華美だし、何よりも取りに帰らなければならない。
極力近づきたくない場所なのでそれは避けたい。
「あぁ、そうか。そういえば私カイに言っちゃったんだった。『とびきりオシャレでもしてくね』って」
そう言うとサラは急にニヤニヤし始めた。
何かあった?と聞くと何でもないとすごく上機嫌に言うので、きっとアーロンとのパーティーを楽しみにしてるのだろうと思って隣を歩いていた。
目的地としていた仕立屋で生地を見繕う。
ほとんど自分で洋服を注文したことがないリオンにとっては新しいことづくめで随分と楽しんでいた。
「ねぇサラ、これすごいね。こんなただの布からドレスできるなんて」
「リオン、何言ってるの?ドレス作ったことないの?」
「あ…いつもお父さんが知り合いに頼んで見繕ってくれてたからさ…」
下手なことを言っていないか一瞬ドキドキしたが、サラは何てことない顔をしていた。
「あ〜迷う!ねぇこれとこれ、どっちが良いと思う?」
そう見せてきたのは、どちらも柔らかそうな生地でサラの雰囲気にぴったりのものだった。
「うーん、水色も綺麗だけれど、ミントグリーンもサラ似合うと思う。お出かけ用のワンピースで水色持ってたから違う色の方が良いよ。あと、スカートの部分は同じ色のレース生地重ねてもらっても良いと思う」
自分で作ったことはないが、ありとあらゆるドレスは着てきた経験がある。どんなドレスがその人に似合うかくらいかはリオンにはわかっていたのだ。
「そう言う意見、ありがたいわ。できるかどうか店員さんと相談してくる」
ルンルンとミントグリーンの生地を持って店員の元にサラは向かって行った。
(さて。どうしようか)
数多の生地の前にリオンは腕を組んだ。
自分に似合うものなら知っている。
ただ問題なのが幼く見えるようにしている学校用のメイクに合わせるか、それを辞めてちゃんと顔立ちに合わせたメイクと装いにするのか、だ。
(ま、オシャレしてくって言っちゃったし、一回くらい良いか)
そう思ってリオンは落ち着いた、少し大人っぽい色合いの生地をいくつか手に取った。




