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【第二幕】思い出を掻き鳴らして-Play The Star Candle-

 公園の木々は、月夜に照らされて幾分美しく思えた。

 しかし、こんなに背が低かっただろうか。

 さっきあの男とここに来た時は見上げる高さだったのに、今はもっと簡単に届きそうな高さだ。

 小学生でも、割とすいすい登れるくらいだろう。

 そこでふと、あの大きな木の根元に置いた筈だったタイムカプセル、基いあの缶箱が無い事に気づいた。

 あいつがどこかへ持っていたのだろうか。いや、そんな事したところで一体なんの意味が……。

 改めて公園内を歩きまわって僕は見てみる。

 ジャングルジムに砂場、トンネルや鉄棒、小さい頃から何一つ変わってない遊具。

 ……どこか不自然だ。こんなにも錆び付いていたであろうか。

 確かに、ずっとここにあるのだから古いのは当たり前だが、あの頃の感じとは程遠く、明らかに変だ。

 高くそびえるジャングルジムの下に立って手を添えてみる。塗装が剥がれ、中の金属があらわになっているのが分かった。固く冷たい感覚がする。

 続けて長い筒の形をしたトンネルの前に着く。屈んで、広がる暗い空洞を覗き込む。


「なんだ、この紙」


 ちょうどトンネルに入ってすぐのところ、薄汚れた一枚の紙が雑に貼ってあった。

 書いてある文字を間近で見ようと顔を近づけてる。暗くて明朝体の形を追うのに時間がかかったがようやく分かった。


「……取り壊し注意。か」


 書いてあった事が分かった瞬間、何かが違うという、ふつふつと浮かび上がる違和感の正体が理解出来た。

 僕は戻ろうとしている。

 夢から覚めようとしている。

 再び、背の高い木の下へと戻って顔を上げる。改めて見れば上の方の枝が切られていたのが分かった。影で見えなかったが、後ろ側の枝も人工的に折られている。

 しかも蕾をつけたまま。


「切り落とす為の下準備か……」


 僕自身、そもそもこの公園の記憶なんて紙芝居を見に来てた時のモノだ。

 だから、「忘れた」なんて一言で片付けて気付いていなかったんだけど、既にここは無くなっていたのだ。


 そう、公園自体とっくに取り壊されていたのだ――。


「……行くか」


 またがった自転車が、なんだか小さく感じた。

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