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転生悪役令嬢の前途多難な没落計画   作者: 一花八華
第二章
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84/107

une jeune fille amoureuse


ーーー



恋は、するのではない。

落ちるべくして堕ちるのだ。


意図して好きになれるなら

あなた以外を選ぶのに


目は、あなたをさがし。

耳は、あなたの声を求め。

口は、音にならない  名前をなぞる。


零れるため息。軋む心。焦がれる想い。



あなたの 瞳が 私を射抜く

あなたの 優しさが 棘になる


甘く優しいその棘が いつもわたしを狂わせる




恋はかくにも愛おしく

青く白い薔薇の蕾に香る


触れて口づけ  紅く染めよう


棘を刺し

瞳を閉じ

想いもすべて閉じ込めて


棘で あなたを 殺さぬよう


深い眠りに堕ちて 逝く


ーーー




「クレメンテの詩だね。」


 詩集を広げ、ぼーっと頬ける私にルビアナが声をかけますわ。ふわりと笑うルビアナ。可愛い。天使ですわ。大人しくて慎ましやかで、女の子らしいルビアナ。穏やかな空気が、ルビアナがいるだけで流れる。私と正反対ね。


ーそっか。そうですのね。ハンスはルビアナのような子が好きだったのですわね。



「あーそりゃ私じゃだめですわ。」


 納得ですわ。悲しいけど、悔しいけど、当然よね。


「ヴィー。大丈夫?なんだか元気ないけど。」


 心配そうに私を見つめる焦げ茶色の瞳。優しくてそれでいて芯を持つ、ルビアナの眼差し。私が元気ないのは、貴女の所為よ。なんて、嫌な感情が生まれて苦しい。嫌な子。嫌な子。私ってなんて醜く嫌な子なの?友達をそんな目で見てしまうだなんて。


「大丈夫ですわ。何でもありませんわ。」


 詩集を閉じ、笑いますわ。大丈夫?ちゃんと笑えてまして?


「そう?辛い事あるなら、ちゃんと話てね。」


 心の底から心配そうに私の顔を見つめるルビアナ。ごめんなさい。私、貴女には話せそうにない。


「ルビアナは、大丈夫ですの?」

「え?」

「ここ最近、ずっと食欲がなかったでしょう?それに寝不足なのか、目の下にクマもありましたし。」


「ああ!あれ?うん。もう大丈夫だよ。やっと終わったし。もう平気だから。ごめんね。ヴィーにも心配かけたみたいで。」


 ふにゃりと笑うルビアナ。そう。もう大丈夫ですのね。恋に患う事もなくなった。つまり・・・・そういう事ですの。


「ルビアナ・・・・付き合う事にしたのですわね。」


 ぼそりと吐き出す私の言葉。それにルビアナが大きく反応しましたわ。


「え!?ヴィー!」


 顔を真っ赤にさせ、慌てて私の腕を掴み教室を飛び出す。そうして、使われていない空き部屋に私とともに入るルビアナ。


「ねぇ。ヴィーっ。なんでヴィーがその事を?」


 目を大きく見開き、オロオロと狼狽えるルビアナは可愛くて、それを見るのが苦しくて、直視する事ができませんわ。


「もしかして・・・・聞いたの?ハンスさんから・・・・」


ルビアナの可愛らしい口から、ハンスの名前がでる。



「いいえ。でも、見かけたのアルテで貴方達を・・・・」



 私の言葉に、ルビアナは「ああ。そっか。見ちゃったんだね。でも、あの事は知らない振りしてあげてね。ハンスさんも内緒でヴィーに・・・・」っと何か告げますわ。


 確定ですわね。アルテで見かけたのは、ハンスとルビアナ。

二人は好きあっていて、付き合っている。私には内緒にしていたかった。



内緒になんてしなくていいのに。そんなに私の事が信用できなかった?

悪役令嬢だから、好きな#ハンス__男__#を奪った、ルビアナに危害を加えるとでも?


信用すらされてないのね。


ハンスにとって、私って・・・・そんな女だったのね。




「ルビアナ。」

「ん?なぁに、ヴィー。」



みくびらないで欲しいものね。


「貴方達の事、心から祝福するわ。」


たとえ時間がかかっても

大丈夫。私は、ヴィクトリア・アクヤックですもの。




「えっと・・・・まだ、付き合うかどうかは・・・・」

「どうして?何か不満でもあるの?」


ハンスは、とっても素敵よ。そりゃあ#攻略対象__イケメン__#達に比べたら、顔は少々見劣りするかもしれませんけど。優しくて、包容力もあって、いつも傍で支えてくれて・・・・きっと貴女を大切にしてくれますわ。ただの【お嬢様】でしかない私ですら、こんなに大切にしてくれていたんだもの。


「まだ、よく知らないし。それに、いきなり『嫁に欲しい』って言われたのもびっくりで」

「あら、そこまで告白されているの?」


ーハンスったら。私との約束すら忘れてしまったのね。



・・・・馬鹿みたい。

縛り付けていた私が、馬鹿ね。もっと早く解放してあげるべきだったのに。



「ハンスはいい夫になるわ。中身も私が保証する。だから、ルビアナ・・・・ハンスの気持ちを受け止めてあげて?」



ー私には、それができないから。


にっこり微笑み、踵を返す。

大丈夫よね。私、笑えてましたわよね?


「え?ヴィー?え?ええ!?受け止めるって!?」

「それじゃ。ご機嫌用。私ちょっと用事がありますの。」


後ろを振り返りませんわ。足も止めない。走って走って。何処かに。

誰も居ない何処かに。





・・・・ひとりになりたい。





そう思い駈けた先で、私は捕まってしまった。

逢いたくなかったその腕の中に。







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