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転生悪役令嬢の前途多難な没落計画   作者: 一花八華
第二章
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85/107

stand by ・・・・

 ルビアナを残し、駆け出した廊下。曲がり角でぶつかると思ったその相手。ドスンという衝撃はなく、ふわりと抱きとめられ、胸が節操もなく早鐘を打つ。


「お嬢様。廊下はあれほど走ってはいけないと・・・・。怪我をされたらどうするのです。」


 暖かな温もりとハンスの香りに包まれて、ときめいてしまう胸が憎らしい。諦めなければいけないのに・・・・傍にいる事が嬉しくて苦しい。手に入らないとわかった所で、はいそーですか。なんて切り替えできる程、私は器用に恋ができないのね。


 初恋は、実らない。


 実らないにしても・・・・実らせたいと思っていた。きっと相手がルビアナでなければ、ありとあらゆる事をして、彼女からハンスを奪うでしょう。ハンスの気持ちすら無視して、無理矢理にハンスを私のモノに・・・・。


 ルーファさんに、偉そうに言っていた癖に。【恋を楽しめ】だなんてどの口が。


 醜く、どろどろとした気持ちを抱えて、好きな気持ちが憎しみに変わりそうで、胸の奥に刺さった棘が毒を持ち・・・・どんどんどんどん黒く染め上げられていく。


 やっぱり私は、悪役令嬢なのね。手に入らない貴方が憎い。こんな気持ちにさせる貴方が憎い。私の気持ちを知っていて、こんな仕打ちを向けるハンスが・・・・憎らしいほど好きなのが辛い。手に入らないならいっそ・・・・



「・・・・お嬢様。」


 ハンスの声にハッと我に返る。私ったら、ずっとハンスの腕の中に?こんな所、ルビアナに見られたら・・・・



 俯く私の顎に、ハンスの手がかかる。


「お嬢様・・・・本当に・・・・どうされたのですか?顔色も悪い。授業も始まってますが・・・・今日はこのまま寮に戻られた方が・・・・」


 心配そうに私の顔を覗き込むハンス。やめて。それ以上、私に近づかないで!それ以上私に、優しくしないで!


「放っておいてちょうだい。貴方に関係があって?」


 睨み付け、腕の中から離れようとつっぱる。


「私・・・・ハンスといたくありませんの。離して下さる?傍に寄らないで」



 傍にいたら、恋しくて胸が軋むから。失恋したばかりで、その相手と四六時中一緒だなんて拷問。受けたくありませんわ。いっそ打首、追放されたい。今すぐに。




「お嬢様・・・・今・・・・なんて?」


 低く狼狽えた声が落ちましたわ。


「俺が・・・・いらない。・・・・傍に寄るな・・・・と?」


 見上げると、悲しみとナニかが混ざった瞳が。


「お嬢様は、俺を捨てるんですか?俺に傍にいろと仰ったのは・・・・お嬢様なのに?貴女が俺を必要としてくれたから・・・・俺は・・・・」


「捨てるだなんてっ!そんな・・・・私は・・・・貴方が傍に居るのが・・辛いのよ。」


 ルビアナと貴方の仲睦まじい姿を、傍で見るなんて耐えられませんわ。


「だからお願い。ハンス。私の執事を辞めてちょうだい。」


 もう、伴侶にだなんて言わないわ。執事を辞めれば、貴方だって自由なのよ?私にまとわりつかれなくてすむのよ?ね?


「・・・・嫌です。」


 ぐいっと引き戻され、ハンスの腕が背中に回るのに気付く。ハンスの胸元に埋もれ、息が詰まりそうになる。


「やだ。ハンスっ。離してっ。離しなさい!」


 何をなさるの!?こんな所を誰かに・・・・ルビアナに見られでもしたら貴方っ



「嫌です。・・・・嫌だ。俺はっ・・・・俺は」



 ゴクリと何かを飲み込むハンス。代わりに強められる腕の力。


「俺は、お嬢様から・・・・離れたくないっ。」


 小さく、苦しげに吐き出されたその言葉。




「お願いだ。お嬢様。・・・・俺から【執事】である事を・・・・俺の【居場所】を取らないでくれっ」








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