壁は友達
「お嬢!散々だったなー!」
はははは。とレオニダスが、私の肩をバシバシ叩いてきますわ。
ですから、貴方…力加減をお考えになって。というか、気安く私に触れすぎですってよ。
寮に戻り、着替えてからこちらに戻ってきましたのに…殆どの生徒がもういませんわ。
「今日は、入学式とホームルーム…それと学園案内だけですからね。殆どの生徒は、学園の中を上級生に案内してもらってるんでしょう。」
「そうですのね…。私…結局、クラスメイトと殆ど話ができませんでしたわ。」
女の子のお友達ができるかと思いましたのに…。女子が三人だけなのですわよ。これでお友達になれなかったら、私…人生に絶望しますわ!
例えそれが、フィロス・インカであっても…背に腹は変えられなくってよ!不本意ですが、私の友人の1人に加えて差し上げても宜しくってよ!ヒロイン!!
「せっかくですから、声をかけてはいかがですか?ほら。彼女もこちらをチラチラ見てるようですし。」
彼女?
ハンスの指差す方を見ますわ。
壁しかありませんわよ?
「どなたかいらっしゃるの?」
教室に残っているのは、ハンスと私とレオニダス。それと、暗い顔をしてびくびくと震える男子生徒。ムスッとした顔で外を見つめる、痩せ細った男子生徒だけですわ。
しかし…こんな所に壁などあったかしら。
教室の真ん中にあるなんて、邪魔ですわね。
前が見にくいのでなくて?
「この壁…邪魔ですわね。」
ポツリと呟くと、壁がビクッと震えましたわ。
ー地震?
いえ…でも揺れは、感じませんでしたわね。
「今…あの土壁が震えたような…」
不思議に思い、近づいてみましたの。
ースススス。
あら?今、壁が後退したような…。
首を傾げ、凝視してみますわ。
「どこも、おかしくはないわね。」
「いえ。おかしい所ばかりかと思いますが…。」
ハンスに突っ込まれてしまいましたわ。何故ですの?
「壁があるだけじゃない。何かおかしくて?」
「…そもそもそこに壁ソレがあるのが、おかしいかと…」
何故疑問を持たないのですか…と残念な視線を投げかけられてしまいましてよ。非常に遺憾ですわ。
「おい。ルビアナ。隠れてないで出てこいよ!お前、お嬢の事心配してたんだろ?」
レオニダスが、笑いながら壁に話かけますわ。
貴方、壁に話かける趣味がありましたのね。
壁は、お友達じゃなくってよ?私だって人前では、(壁に)話かけるのを自重しますわよ?
「…あっあの…」
なんと!?壁が返事をしましたわ!!
それもなんだか、愛らしく可愛い声ではありません事!?
ちょっと!この壁、萌えますわ!小刻みに震える所など、私の庇護欲を掻き立てましてよ!!
「ルビアナ嬢。安心して出て来ておいで。お嬢様は、少々あれだが…物理的に噛み付いたりはしない…筈だから。」
ハンスまで、柔らかく優しい声で壁に語りかけますわ。色々と言葉に、異議がありましてよ???
「…。ヴィ…ヴィクトリア…さま?」
「はい。」
「あっ…あの…私…。」
おずおずと、土壁から可愛らしいご令嬢が顔をだしてきましたの。
「私…ルビアナ・アマルフィ…と申し…ます。…アマルフィ男爵家の次女になります。…その。ヴィクトリア様と同じクラスになれて…私…嬉しくて…」
ゆるふわウェーブのかかった、ハニーブラウンの髪。不安げに揺れる焦げ茶色の瞳。ソバカスかかったお顔をほんのりとピンク色に染め、小柄な容姿は、まるで小動物のリスのよう…。
「愛らしい!愛らしいですわ!」
思わず抱き締めて頬ずりしましたわ!何この子!小さくてふわふわしてて、柔らかくてよー!!!
「ふわわわわわっ!?…ヴィッ…ヴィクトリアさまっ!?」
「貴女!ルビアナと言うのね!私と同じEクラスですのよね!?私を心配してくれてたって本当かしら!?ルビアナと呼んでも宜しくて?私の事は、ヴィーと呼んで下さって結構よ!お友達!お友達になって頂戴!!」
むぎゅーっと力いっぱい抱き締めますわ!
こんな愛らしいご令嬢と同じクラスなんて、なんという幸運でしょう!?捕まえましたわ!離しませんわ!逃がしませんわよ!逃がしてたまるかー!ですわー!!!
「お嬢様…。落ち着いて下さい。」
「何よハンス。邪魔しないで頂戴。」
私の人生初の女友達ゲットが、かかっていましてよ?邪魔をするなら、貴方であっても許さなくってよ?
「…そのままですと、ルビアナ嬢が窒息してしまいます。」
「は?」
「おいおい。お嬢の胸は、凶器かよ!?」
気付けば、私の胸元で息ができずにもがくルビアナが…。
「あああ!?ごめんなさい!!ルビアナ!!私ったら!!なんてことを!!」
「ふわわっ…らいりょーぶれふ。うぃくとりあしゃまー。」
くるくると目を回しながら、ルビアナがこてんと倒れてしまいましたわ。
閲覧ありがとうございます。
その凶器。
私も欲しい。




