不機嫌な理由
ーコツコツコツコツ。
私は今、無言で大理石の廊下を歩いていますの。少しでも急いで、教室に戻らなくてはいけませんわ!
困りましたわ…余計な事ばかり起こるので、HRに遅刻してしまっていますわ。
入学早々、遅刻、さぼりだなんて…高潔淑女なヴィクトリア・アクヤックには、あり得ません事よ!?
私、品性方向な悪役令嬢でしてよ?
ほんと、嫌な攻略対象に絡まれるは、ハンスはヒロインとフラグを立てるは…散々でしてよ!?
こうも、次々余計な事が起こるだなんて…私、呪われているのかしら?誰に?運営に?
私が、運営に何をしたっていうのかしら!?ハンス攻略に勤しんでるだけじゃない!
攻略対象との絡みはいらないから、もっとハンスとのラブロマンスを寄越しなさい!
ああ…本当に腹立たしいですわ!
「お嬢様…何をそんなに怒っていらっしゃるのですか?」
「煩くってよ。ハンス。黙って足を動かしなさい。」
ハンスが、おろおろとしながら私に話かけてきますわ。
何を怒っているかですって?
決まってるでしょう?
先程起こった、貴方のイベントに関してでしてよ!
貴方が、うっかり…ヒロインとフラグなんて立てるからですわ!私とのフラグはないのに!!
だから、私…憤慨してましてよ!
それもわからないなんて!本当にハンスは、鈍感な分からず屋ですわね!!
ーええ、私の勝手な嫉妬ですわよ。
まったく私に靡かない貴方が、人たらしなヒロインと接触してるだなんて…気が気でなくってよ!
貴方…私には、鉄壁ディフェンスを誇る癖に…よもやヒロインに絆されてなどいないでしょうね!?
ちょっと介抱されたから落ちるなんて…チョロンスすぎますわよ!相手によって攻略難易度が違うなんて…私納得いかなくってよ!!
しかも…「可愛らしいご令嬢」ですって?
貴方…私の事、一度でも褒め讃えた事がありまして?
褒め讃えるどころか、残念と慈愛が満ちた瞳で、私を見つめますわよね!?
この、美しく気高き高嶺な花なヴィクトリア・アクヤックワタクシを、そのような目で見るなんて…ハンス…貴方の目は、節穴ですわ!!
そうね…その節穴…拡張すれば、私の事も良く見えまして?
ふふふ。この形状記憶型高性能ドリルで、拡張して差し上げても良くってよ!ハンス!!
「お嬢様。」
「煩いわ。おだまり。チョロンス。ドリルるわよ!」
「チョロンス!?ドリルる!?」
ハンスが、びくつきましたわ。
ふん。私を不快にさせるのが悪いのですわ。
もっと私の事で、困ればいいのですわ。
…でも、あまり困らせるのもいけませんわよね。
完全な私の八つ当たりですもの。
何より、私がハンスよりお兄様を優先したのがいけなかったのですわ…。
ハンスが、「私は大丈夫ですので、ブルーテス様の元に…」っと微笑んだのを鵜呑みにして…。
ハンスの痩せ我慢に、気付けなかった私が一番悪い。
ちゃんと謝るべきだわ。
「ハンス…ごめんなさい。私の八つ当たりでしたわ…」
「…お嬢様。」
立ち止まり、ハンスと向き合い。頭を下げますわ。悪い事をしたら、ちゃんとごめんなさい。精神誠意を持って謝らなくてはいけませんわ。
「わかってますよ。お嬢様。」
ハンスの優しい声がしますわ。
私…やっぱり…この声が好きですわ。




