★グレイとオズワルド
「面白いね。彼女。」
走り去るヴィクトリアの背を、グレイが愉しげに見つめる。
「アレは俺様のモノだぞ。」
あからさまに機嫌を損ねるオズワルドに、グレイは含みを持たせた視線を向けた。
「使える権威を、行使しまくっても…今だに婚約者候補・・にしか成り得ていない…のにかい?」
「…ぐっ。」
「あいつが…俺様に靡かないのが悪い。」
オズワルドは、忌々し気に呟く。
「簡単に靡かないから、執着してるんだろ?」
「…違う。」
「そう?手に入らないから欲しがってる。こどもの我が儘の延長に見えるけど?」
「違う。俺様は本気だ。」
友人の強い瞳に、グレイはふふっと笑う。
「そうだね。本気でなければ、魔力がだだ漏れになる程の熱い視線を向けたりしないだろね。」
「それを言うな!」
ヴィクトリアを見つめる度に、気持ちが暴走し熱(※物理)を込めた視線を投げてしまうオズワルド。
オズワルド・ラバグルート。
属性は、炎。
自信家で激情家の第一皇子。赤く燃え盛る情熱と熱烈な想いを瞳に宿す。見る者を惹き付け、魅了する、大輪の深紅の薔薇のような…天性のカリスマ皇子。
そんな彼が、執着し心乱す存在のヴィクトリア・アクヤック令嬢。
オズワルドが、グレイとヴィクトリアを引き合わせるのを嫌がる為…彼女の事は、遠目からしか見た事がなかった。
熱暴走するオズワルドを鎮める為に、氷魔法で落ち着かせる役目を持つグレイ。(※こちらも物理)
友人の瞳を通して見るヴィクトリアに、自然と興味が沸いていた。本来、他人に無関心なグレイが、誰かに興味を持つ事などあり得ない。
グレイ自身はそれを、主の伴侶になるであろう人物への見定め。純粋な興味本位からくるものだと推測している。
「グレイ…ヴィクトリアあれは、ダメだぞ…。」
「オズワルド様の想い人に恋慕する程…愚か者ではありませんよ。」
わざとに恭しく頭を下げるグレイ。
一途で情熱的な我が王は、恋に盲目的で存外狭量が狭いらしい。心配しなくとも、僕が他人に、恋心など抱くわけがないのに…
グレイの世界は、自分とオズワルド…そしてそれ以外。幼かったあの日から、それは変わらない不変の理。オズワルドを裏切るような事など、グレイがする筈がないのだ。
ーやれやれ。と大袈裟に両手を挙げ、ため息をついてみせる。
「まぁ、アレがお前に靡くとも…俺様は思わないがな。」
グレイが見つめても、惚けた顔もせずに…寧ろ眉間に皺を寄せ、嫌そうな表情を見せたヴィクトリア彼女を思いだし、グレイも苦笑する。
「そうだね。あんなあからさまに嫌がられたのは、初めてだよ。」
自身の見目の良さを、グレイは良く理解している。寧ろソレを進んで活用し、事を運んできた。息を飲む程美しい見目のグレイに、向けられる惚けた顔。表面では、うっとりする程の美しい微笑みを向け、内心では能面のような心でただただ、冷静に益だけを計算してきた。
顔と態度で、簡単に転がる人間を見るのは愉快だ。幼い頃から、張り付けた笑顔とみせかけの優しい声色で他人に接する。それだけで、面白い程、全て思い通りになる。
それがどうやら、ヴィクトリア彼女には、効かないらしい。
本当に面白い存在だな。
まぁ、…他のと違って、ちょっと愉しそうだと思ったくらいだけど…。
それよりも今は、オズワルド友人の暴走しがちな恋心の手綱を、三年間どう導いて行くべきか…それの方が重要だ…。
っと、右手を見つめながら思案する。
面倒だな…と呟きながら…その口元は弧を描く…ヴィクトリアと会話した事に、柄になく自分は喜びを感じているらしい。
普段なら、きっと不快に感じる心の揺らぎ。
他人に気分を左右されるなど…不快以外の何者でもない。それなのにー。
揺らぐ心に喜びを感じている…その矛盾にグレイ自身は、気付かずにいた。
ありがとうございます。
ヴィーは、厄介な人物に興味を持たれてしまったようです。
残念ストーカー皇子と腹黒ドS美形。碌なイケメンがいませんね。




