身に降りかかる不遇2
「嫌だ。」
オズワルド皇子は、腕を組むと、私の前に仁王立ちし胸を反りましたわ。
「俺様は、お前を俺様のモノにして、屈従させるつもりだ。お前くらいだからな!まったく俺様に媚びず靡かぬ愚か者は!俺様の魅力がわからないお前に、俺様自ら教えてやると言っているんだ。身に余る光栄に、心が歓喜で震えているだろう?」
ー…身に降りかかる不遇に、心が怒りで震えていましてよ?
「嫌がらせの為だけに、私を婚約者候補にするなんて…私…一生かかっても、貴方には屈従なんて致しませんわ!!」
「ふん。吠えていろ。いずれお前は、俺様に屈服し自ら望んで嫁になる。」
「なりませんわよ!」
例え婚約者になったとしても、嫁になんて絶対なり得ませんわ!
貴方は、私を断罪し、ヒロインと結ばれるのでしてよ!?
何をおかしな事をおっしゃってるのかしら?
「貴方は、私でなく他の運命の方と婚姻されますわ。私を婚約者にする意味などありませんことよ?」
呆れた顔で告げる私に、オズワルド皇子はムッと顔をしかめ怒鳴りましたわ。
「運命の相手なら、既に出逢っている!」
あら?そうなの?もう既にヒロインとは、お会いになっていらっしゃるのね?なら尚更、婚約者候補 など、不要でなくて?
「お前だって…その…既に出逢っているだろう?」
あら、皇子ったら。知っていらしたのね?そう!ハンスは、私の運命の相手でしてよ!ただし…今はまだ、一方通行ベクトルですが…
「ええ。そうですわね。」
お互い。運命の相手とちゃんと結ばれるといいですわね。そう願いを込めて微笑みましたの。
私の言葉に、皇子は口元を緩め笑顔を見せましたわ。その笑顔に、周りのご令嬢が きゃあっと色めき立ちましたの。そう、たくさんの黄色い喜声…気付けば、私達の周りには人だかりが…
ーしまったわ。入学早々、オズワルド皇子に絡まれたせいで…私…とんでもなく目立ってなくて?
悪目立ちなんて、したくなくってよ!? 何よりこの、きゃあきゃあと騒ぐご令嬢達を静めなければ…どうしましょう!?得意の水魔法で、水をぶっかけ、冷水で冷静にさせるべきかしら!?
「オズ…君は、何をやらかしているんだい?」
その凛と通る涼やかで、気品溢れる声に、ざわめきが静まり返りましたわ。ああ、良かった。
「こんな所で、騒ぎを起こして…ほら、君達も早く教室へ。」
皆、その声に素直に従い居なくなりましたわ。
他の生徒を捌けさせた後、1人の人物が現れましたの。
薄い紫色の混じる銀髪。長い睫毛に灰紺の瞳。
美しく整った顔は、まるで…人形のよう。
えーっと。この方…何処かで会った記憶がございますわね。
何処だったかしら…っと眉間に皺を寄せたまま、凝視していたら
「ふふ。見つめてもらうなら、できれば頬を薔薇色に染めて、潤んだ瞳でお願いしたいな。」
っと歯の浮くような台詞を呟かれてしまいましたわ。柔らかく微笑みかけてくる癖に、まったく目は笑っていませんわ。この方…要注意人物ね…。賢いヴィーちゃん、危うきに近寄らずですわ。
「まったく。君のフォローに回る僕の身にもなって欲しいものだね。オズ。」
「ふん。将来の宰相候補が、これくらいの事で音をあげていたら、俺様の補佐など務まらないぞ?グレイ。」
「そうだね。君が問題を起こした後でなく、起こす前に対処できなかった僕の失態かな?アクヤック侯爵嬢が入学した時点で、予測のできた事だからね。君の暴走は…。」
グレイ?
宰相候補?
んんん?
「はじめまして。っでいいのかな?」
冷や汗が、つつつと頬を伝うのを感じましたわ。
「僕は、グレイ・ミステリューズ。オズワルドの友人で、将来の宰相候補だよ。」
そう言って、にこやかに(張り付けた)笑みを湛え、右手を差し出してきましたわ…。
嫌よ…嫌だわ…何故なのよ…。
この男…攻略対象の一人じゃないの!!
腹黒どSとなんて、関わりたくありませんわー!!




