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基礎魔導原論 第4章 第7項

第7項 打ち消しと安全な詠唱


 初学の徒が最初に唱えるべきは、何かを生み出す呪ではない。何かを打ち消す呪である。これは第2章第3項に説いた制御の理――生み出す呪は失敗すれば過剰を生むが、打ち消す呪は失敗しても何も生まぬ――を、そのまま言語の学びにも当てはめたものである。


 コルにおいて打ち消しを担う語根は二つ。akar(アカル=取り除く・根絶する)と otem(オテム=止める・閉ざす)である。


 第2章第3項に挙げた基礎呪「無火」は、火を取り除く呪にほかならぬ。コルではこう唱える。


tam shalom gazar / akaru et esho / amen (平常・静心・断ち切り/火を根絶せよ/成れ)


 同じく「無流」は、水の流れを止め閉ざす呪である。


tam shalom gazar / otemu et mayimo / amen (平常・静心・断ち切り/水を止めよ/成れ)


 これらは、たとえ像が乱れても、火が燃え続け、水が流れ続けるだけのことで、過剰を生まぬ。ゆえに、意思に意思を乗せる稽古として、これほど安全なものはない。志向には静心 shalom、継続には断ち切り gazar を据えるのが、打ち消しの基本の構えである。


 また、文そのものを否定したいときは、文頭に loを置く。lo oru といえば「光らせるな」となる。発動を望まぬ稽古や、すでに唱えた呪を抑えるときに用いる。


 若き徒よ、灯火一つを点す呪に憧れる気持ちは分かる。されど、まずは灯火一つを確かに消せるようになることである。消すことを知らぬ者に、点すことを許してはならぬ――これは学び舎が血をもって贖った戒めなのである。


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