基礎魔導原論 第4章 第6項
第6項 対象の三層 ―― 己・相手・全体
呪文の効能を、誰に、どこに向けるのか。コルはこれを三つの層で言い分ける。第3章に学んだ黒白の諸属のうち、とりわけ白魔導を扱う者は、この三層を確かに使い分けねばならぬ。
第一の層は、己に向けるものである。動詞の頭に hit‐(ヒト)を付すと、その効能は詠唱者自身に向く。第3章第4項の自己強化が、その典型である。
heil na nakh / hitkhazku / amen (非常に強く・願い・委ね/己を強化せよ/成れ)
第二の層は、相手に向けるものである。すでに学んだ与格 le‐ で、向ける相手を示す。治癒の呪はこの形をとる。
tam ahava nakh / rafau et yedido le-khaver / amen (平常・慈しみ・委ね/癒せ、その身を、友のために/成れ)
第三の層は、この場・領域の全体に向けるものである。kol(コル=全て)を対象に据えて表す。第3章に触れた、場そのものを満たす類の呪である。
elyon shalom nakh / otemu et kol / amen (全霊・静心・委ね/全てを鎮め止めよ/成れ)
心せよ。層が広がるほど、必要となる魔力と精神は増す。とりわけ全体への呪は、己と外との境を見失わせる危うさを伴う(第2章第2項の拡張の戒めを思い起こすがよい)。まずは己に向ける hit‐ の呪から、確かに修めていくことである。




