基礎魔導原論 第4章 第4項
第4項 助詞と語順
動詞が定まれば、次は「何を」「誰に」「何をもって」を示さねばならぬ。コルでは、これを語に添える小さな助詞によって示す。助詞があるがゆえに、語の置かれる順は本来自由であり、ここがコルの扱いやすき所以である。
助詞は四つである。対格をつくる et は「〜を」を表し、et esho といえば「火を」となる。与格の le‐ は「〜に・のために」を表し、le-khaver といえば「友に」となる。具格の be‐ は「〜で・にて」を表し、be-kamea といえば「護符にて」となる。そして hen は、主語を明示するための語で、「…が」にあたる。
ここで初学の徒が心に刻むべき大切な定めがある。主語は、原則として唱えぬ。 なぜなら、意思は常に詠唱者のものであり、呪文を成す主は、言うまでもなく詠唱者自身だからである(第1章第3項)。ゆえにコルでは「我は」と言わぬ。
詠唱者ではない何者かを主語に立てるときにのみ、その語の前に henを置いて、これが主語であると示す。たとえば、燃え立つ焔それ自体を主語とするならば hen を用いる、という具合である。
学園で教える標準の語順は、次のとおりである。
〔意思部〕― 動詞 ―〔hen 主語〕― et 目的語 ― le-与格 ― amen
例を挙げよう。熱を増す呪は、動詞 ravah(増す)に、目的語 khom(熱)を et で添えて、次のようになる。
ravu et khomo amen (増せ、熱を/成れ)
与格を加えれば、向ける先も示せる。
shamaru et yedido le-khaver amen (守れ、その身を、友のために/成れ)
助詞さえ正しく添えれば、語順を多少入れ替えても理は崩れぬ。されど初学のうちは、まず標準の語順を体に染み込ませることである。順を崩してよいのは、順を守って淀みなく組めるようになってからである。




