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基礎魔導原論 第3章 第7項

第7項 分類しえざる魔導

 ここまで、黒白の二分とその諸属、さらに無属性と生活の術を述べてきた。本章を閉じるにあたり、なお黒白いずれにも素直に収まらぬ、二つの領域に触れておかねばならぬ。複属の魔導と、原理いまだ解き明かされざる古き魔導である。

 複属とは、二つ以上の属を併せ用いて一つの現象を導く、高度の魔導である。第2項に述べた四大元素の相生相剋を踏まえ、火と風を併せて勢いを倍し、水と熱を併せて霧を呼び、地と力動を併せて岩を礫のごとく射出するがごときは、いずれも黒魔導の内での複属である。さらに進んで、強化の属と地の属を併せておのれの肌を岩のごとく硬くし、あるいは感覚の属と光の属を併せて遠き闇を白昼のごとく見通すなど、黒と白の境すら越えて属を結ぶ術も存する。ここに至れば、黒白の分類が、もとより術者の便のための見取り図にすぎず、世界の真理がその線引きに縛られておらぬことが、おのずと知れよう。複属はおのおのの属を単独で確かに御しうる者にのみ許される境地であり、結ぶべき像はいよいよ精緻を要し、二つの属の理が頭の中でせめぎ合うわずかの隙が、たちまち暴発を招く。それゆえ学園では、いずれか一つの属を真に修め終えぬうちは、複属に手を出すことを固く戒めている。

 いま一つは、原理のいまだ明かされざる、古き魔導である。崩滅の日を生き延びた断片の中には、確かに現象を導くにもかかわらず、いかなる理によって働くのか、現代の知をもってしても説き明かせぬ術が、わずかながら伝わっている。たとえば、ある古き呪が、火とも熱とも力動ともつかぬ形でものを朽ちさせるのを、いかなる属の働きとも定めえず、機構が長らく頭を悩ませてきた例などがそれである。これらは黒とも白とも定めようがなく、ただ「未解明」として、機構の厳重なる管理のもとに置かれている。心せねばならぬのは、理を解せぬ術を安易に行使することの危うさである。第2章第4項に説いたとおり、理を誤りて結んだ像でさえ望まぬ結果を導くのである。まして理そのものが知れぬ術を唱えることは、目を閉じて崖際を駆けるにひとしい。これらの中に、第2章第6項に掲げた三つの禁忌──魂・生命・万夜の魔導──に触れるものが紛れていはせぬかを、機構が今なお一文字ずつ慎重に検め続けているのも、このためである。分類しえぬということは、それが安全であることを少しも意味せぬ。むしろ、最も用心して扱うべき術なのである。

 若き魔導の徒よ。本章の初めに、分類とは魔導の海を見渡す羅針盤であり、それでも指さぬ岬があると述べた。複属の自在さも、古魔導の不可解さも、その指さぬ岬の景色である。分類を学ぶは、世界を箱に閉じ込めるためではない。箱に収まらぬものこそが、いまだ言い当てられざる世の理であり、魔導の果てへと続く道であることを知るためである。されど忘れるな、その道は光と闇のはざまの淡いを行く道でもある。常に足元を見続けよ。そして、地図の縁の白きところにこそ、汝が踏み出すべき一歩と、踏み込んではならぬ一線とが、ともに潜んでいることを、忘れてはならない。

 忘れてはならぬ。我々の魔導は、叡智神より授けられた恩寵である。授けられた力をもって、授けし神々の領分を犯すことは、恩を仇で返すにひとしき大罪である。崩滅の日の灰を踏み越えて生き延びた我々が、先達と交わした最も重き誓いこそ、この一線を越えぬことであった。足元を見続けよ。その一歩が、神々の領域へ踏み込む一歩でないことを、常に確かめながら進むがよい。


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