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基礎魔導原論 第3章 第1項

第3章 魔導の分類

第1項 黒魔導と白魔導

 第1章にて魔導の原理を、第2章にてこれを修むる道を述べてきた。本章より説き起こすは、魔導の分類である。世に魔導は数知れず、火を呼ぶものあり、傷を癒すものあり、心を揺らすものあり、その様は千差万別である。これらを一つの体系のうちに整え、見通しをよくすることは、魔導を学ばんとする者にとって、地図を手にして山野に分け入るがごとき助けとなる。分類とは、ただ物事を箱に納める手すさびではない。己が今いかなる術の前に立っているのか、その術がいずこより来たり、いずこへ向かうのかを知るための、確かな足場なのである。

 魔導の分類は、大きく黒魔導と白魔導の二つに大別される。長き年月にわたり先達が分類を試みる中で、諸国・諸文化における語の用いられ方を照らし合わせるに、この二分こそ最も直感に適うとされ、今日まで採られてきたのである。

 ここで若き徒がまず解いておかねばならぬ誤りがある。黒と白の別に、正邪善悪の意味合いは一切ないということである。黒魔導が邪悪なるもので、白魔導が善良なるものなのではない。これはただ、魔導の効能の向かう方向を大別して言い慣わすにすぎぬ。

 しからば、なぜ正邪なきところに、いかにも善悪を思わせる黒・白の語が用いられているのか。これには苦き来歴がある。統一会議より後の一時期に至るまで、人は己が御しがたき魔導、わけても身体や心に直に触れる内なる術を畏れ、これを「黒き業」「闇の術」と呼んで蔑み、忌んだのである。御しえぬものを邪と決めつけるは、いつの世も人の弱さの常であった。この色眼鏡を払ったのが、機構第4研究院のハイネ・ロ・ヴェルダである。ヴェルダは王国歴1251年、術の善悪は術にあらず使う者の心にあると説き、黒・白を正邪の符牒から、効能の方向を指し示す中立の語へと定義し直した。今我々が何のためらいもなく黒魔導の語を口にしうるのは、この一人の功による。

 黒魔導とは、主に四大元素を用いるもの、物理の現象、ものの理に基づく作用といった、外に向かいて働く効用の魔導を指す。火を呼び、水を操り、風を起こし、地を隆起せしめる類がこれである。

 白魔導とは、主に身体や生命にかかわるもの、精神に作用するものといった、内に向かいて働く効用の魔導を指す。傷を癒し、力を増し、心を鎮める類がこれである。

 なお、このいずれにも容易に収まらぬ魔導もまた、少なからず存する。原理のいまだ解き明かされざる古き魔導、無属性と呼ばれる初歩の術、あるいは生活魔導と呼ばれ、日々の暮らしを支える類の術などである。これらについては、章を追うて改めて述べることとしたい。黒白の二分は魔導の海を見渡す大きな羅針盤であるが、羅針盤の指さぬ岬もまたあることを、若き徒は心に留めておくがよい。


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