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08話 カイトとリリア

 

 奴隷達は、目の前で起きた光景を未だに信じることが出来ない。

 今日まで自分達をゴミのように扱っていた人間達が、同じ奴隷の手により、一瞬で惨殺されたのだ。

 ただ恐怖はなく、むしろ盗賊達がやられていく様をみて、胸がすく気持ちの方が大きかった。


「大丈夫か?」


 先ほど銃口を向けられていた少女に声をかけるが、返事はない。

 あれ、もしかして撃たれてた?

 顔を見ると、どうやら生きているようだ。

 目をキラキラさせて俺の方を見つめていて、返事をする気配がない。

 隣にいた少年が見兼ねたのか、代わりに口を開いた。


「あ、あの! 妹を助けて頂いて、ありがとうございます!」


 妹? あぁ。この二人は兄弟で奴隷なのか。

 それにしても、まだ10歳くらいだろうか?

 兄弟そろって奴隷とは、なんとも可哀そうだな。


「気にするな。お前達、名前は?」

「俺はカイト。ほら、自分で名前いえって」

「わ、私はリリア……です」


 二人のステータスを確認する。

 あれ?

 盗賊共が死んだからほかのやつらは天命が見えるけど、こいつらは奴隷のままだな。


「お前達の主人はここの奴らじゃないのか?」


 話を聞くと、どうやら二人は元々別の盗賊に囚われていて、数日前に奴隷交換で連れてこられたとのこと。


「私達は、これから奴隷印の解除をする予定だったんです」

「奴隷状態を解除するアイテムはどこにあるんだ?」

「それが、何故か宝物庫が潰れてしまって」

「あーそれは何というか、ごめんな」

「な、なんで謝るんですか」


 知らなかったとはいえ、宝物庫を潰してしまったのか。

 これじゃぁ地図も一緒に消えた可能性もあるな。


「おーい! カナ--ってなんだこれ!」


 遅れてきたロイが、死体の山をみて言葉を失っている。


「遅かったなロイ」


 ロイは死体を避けながら、俺のそばまでやってきた。


「ほんとにカナタは強いんだな。地図は見つかった?」

「それが宝物庫が潰れたらしく、一緒に消えたかもしれない」


 ロイがお前のせいだろと言う顔をすると、カイトがタイミングを伺いながら声を出した。


「あ、あのー。地図だったらグラゴの部屋にあるんじゃないですか?」


 グラゴは俺たち奴隷達を収容していた洞窟に部屋をもっていた。

 置いてある可能性は高い。

 奴隷の一人に取りに行かせると、グラゴが普段身につけていた鞄を持ってきた。


 中を見ると、丸められた羊皮紙が1枚、そして四角い印鑑のようなものが入っている。


「これ、地図じゃないか?」


 ロイに手渡すと、これが目的の物だと頷いている。


「こっちは何だ?」

「それが奴隷艦だよ。主人の資格を持つ人がそれを使えば奴隷の出来上がりだぞ」

「資格って、レベル10になったら誰でも主人になれるんじゃないのか?」

「そんな訳無いだろ。誰がどんなスキルを手に入れられるのかってのはわからない」

「そうなのか。じゃあお前も村人だけど、凄いスキル覚えられるかもしれないのか?」

「可能性は限りなく低いけどね」


 可能性があるだけでも面白いなと思う。

 しかし、レベルを上げるためにはどうしたらいいのかも謎だ。

 その辺りはロイも詳しく知らないみたいだし、情報収集が必要だな。


 奴隷艦には青と赤のボタンが付いており、その横には数字が4と浮かび上がっている。


「このボタンは何だ?」

「赤で奴隷艦を押すと、スキルだとか行動に制限を付けられる。青だと主人には逆らえないけどスキルだとか行動の制限はなくなる」

「青で押す意味ってあんのか?」

「貴族とかの護衛とかはスキル使えないと意味ないだろ」

「あーそういうこと。この数字は?」

「使用回数」


 ロイとの会話が途切れたのをみて、奴隷達が問うてくる。


「あの、私達はこれからどうしたら」

「もう奴隷じゃないんだし、好きに生きたらいいんじゃない?」

「とはいいましても、行く宛もない身なので」


 こいつらを解放してやろうとは思ったが、その先のことまでは面倒が見れない。

 どうしようかと考え込んでいると、カイトが思いついた顔をした。


「明日襲撃予定だった村へ、とりあえず行ってみるとか」

「場所わかるのか?」


 奴隷の一人が手を挙げる。


「私は昨日、盗賊達と一緒に下見に行ったので……多分たどり着けるかと」

「よし。そしたらお前たちはそこを目指せ」

「あなた様は付いてきてくれないので?」

「俺は急ぎの用事がある。そこまでは面倒みれない」

「俺とリリアが付いていけるなら、多分安全に行けると思いますけど」


 そういえば、この二人のステータスは奴隷と表示されていたが、レベル15前後あった。


「お前ら戦えるのか?」

「元々二人で旅をしていた途中に不意を付かれて捕まったんで、ある程度は戦えます」

「だ、だけど私達は奴隷のままなので、今の状態だとスキルが使えないです」


 奴隷さえ解除できれば、この二人に村まで送ってもらえそうだな。


「でもカナタ、こいつらを解放するアイテムは今ないし、どうしようもないぞ」


 そういえば、、、


 俺は常時ステータスにある『奴隷の王』に触れ続けてみる。


 奴隷の王:奴隷の主人を含めた、全ての者を奴隷とする。同格以上には発動不可。また、同格以上のスキルによって奴隷とされた者にも発動不可。


 これはもしかすると、

 俺は奴隷艦の青いボタンを押し、カイトの右手に当てる。


「ちょっとカナタ。こいつらはもう誰かの奴隷だから無駄だっ--!」


 カイトの右手が光だし、奴隷艦を離すと先程あった模様が消え、三角形の真ん中に稲妻の形をした印が浮かび上がっていた。


「これが、俺の奴隷のマークってことか」

「な、なんで! カナタ何したの!」

「まぁなんだ、俺に出来ないことはないってことかな」

「もう何か、段々驚くのも馬鹿らしくなってきたぞ」


 俺はリリアの右手にも奴隷艦を押してやる。

 奴隷艦を見ると、持ち手の数字が2へと変わっていった。


 自分の奴隷印が書き換わった事を理解した二人は、目を輝かせながら俺を見つめる。


「カナタさん!ありがとうございます!」

「カナタ様!あ、ありがとうございます、です!」


【カイト】

 レベル:15

 天命:剣士


【リリア】

 レベル:11

 天命:狙撃手



 兄弟そろって戦闘系の天命か。

 この二人はロイと違って役に立ちそうだな。

 こいつはほんとうるさいだけで、戦闘とか何もできなそうだからな。


 ロイの方に目を向けると、視線に気付いたのか嫌そうな顔をする。


「何だよカナタ」

「いや、お前はタメ口何だなーと思って」

「ふん。名無しに敬語は使わないぞ」


 俺は奴隷艦をロイの右手に押そうと近づける。


「おい! やめろ!」

「生意気な奴には奴隷がぴったりだろ」

「やめろって! 俺は奴隷にはもうならないぞ!」


 何度か押そうと試みるも、ロイは素早くそれを避け、逃げ回る。


 こいつ、意外と運動神経いいな。

 まぁロイには今度こっそり押してやればいいか。

 俺は二人へと向き直す。


「カイト、リリア。お前らへの最初の命令だ」

「「はい!」」

「こいつらをその村まで送ってやれ。その後は俺のとこに来てもいいし、自由に生きてもいい。好きにしろ」

「「はい!」」


 そもそも旅をしていたってのも、何か目的があるのかも知れないしな。

 どうやら宝物庫と一緒に食料庫も消失してしまったようなので、村までは食べる物がない。

 二人には深くは聞かず、すぐ行動するようにと伝えた。


「さて、ロイ。俺たちも行くか」


 ロイは持っていた地図を広げる。


「カナタ。ここに魔力を流し込んでみて」


 地図の右端に小さな魔法陣が書かれていたので、俺はそれに触れてみた。

 すると地図上に光の点が現れる。


「ここが今いる場所だぞ」

「ここからだと、まずはシエンタって街に向かうのがいいか」


 とりあえず、情報収集と活動拠点は欲しい。

 そしてとにかく、腹が減った!


「カナタさん!俺たちは準備が出来たので出発します!」

「気をつけてな! あ、そうだ。これ持ってけ」


 首をかしげながらカイトは両手を前に出すと、その手に金貨3枚が落ちてくる。


「え? カナタさん!こんな大金受け取れません!」

「1枚はこれから行く村に渡してやれ。残りは、お前とリリアで使っていい」

「そ、そんな! 受け取れません!」

「じゃあいつか返しに来い」


 俺が引かないとわかったのか、カイトは少しの沈黙のあと、納得したような顔をする。


「必ず、返しに行きます!」


 二人を先頭に、奴隷達は森の中へと消えていった。


「いつか、俺のとこに来るリリアが楽しみだな」

「カナタってロリコンなの?」

「馬鹿。成長したあいつはきっと凄い美人になる」

「まぁどうでもいいけどさ。俺達ももういこうよ」

「そうだな。早くしないと途中で餓死しかねない」


 俺とロイは、奴隷達が消えた方向と逆へ体を向け、歩み始めた。


 目的地は、シエンタ!

 そして飯だ!

いつもご覧いただき、ありがとうございます!

前話ではまたも感想を頂き……感無量!

更新頑張ります!

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