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06話 バッカスと左腕

 

 盗賊達がアジトにしている洞窟内は意外と広い。

 奴隷達がいる場所とは別の場所から数百メートルほど掘り進められており、ここに約100人程住めるだけの部屋がある。

 食料庫や宝物庫、そして一番奥に大きな広場があり、襲った村から運んできたテーブルや椅子が不規則に並べられている。

 盗賊団の頭であるキールは両足を机に乗せ、右手に持った金貨を眺めている。

 キールの向かい側では、現在一人欠けてしまった幹部達3人が横並びになり、その様子を伺っていた。


「何でゴミみたいな村に金貨がありやがる」


 金貨を眺めていた目だけが幹部達に向けられるが、誰も答えようとはしない。

 沈黙のままでは主人の機嫌を損ねるかもしれないと、グラゴの横領を見破った幹部の一人、バッカスが口を開いた。


「じじぃ共がたまたま拾った、とかですかねぇ?」

「あんな辺鄙な場所に金持ちが通りかかるか?」

「それは考えられないですねぇ」


 キールは目線を金貨に戻し、思考する。

 グラゴは1年前に入った新参者だが『奴隷の主人』を発現させていたこともあり、幹部に昇格させた。奴隷に対する態度は横暴だが、キールを裏切るような度胸もなく、従順にこれまで命令には従っていたので、故意に横領したとキールは思わない。


「本当にじじぃ共が金貨を持っていたか」

「それしか考えられませんねぇ」


 奴隷達の誰かが金貨を持っていた、そんな事はありえないと幹部達は切り捨て、それ以降発言しようとする者はいない。

 キールもそんな事はありえないと思ったが、用意周到だからこそ盗賊団の頭をやっていられる。

 念を入れておこうと判断し、今度はしっかりと顔を幹部に向けた。


「グラゴの奴隷共をここに連れて来い!お前らはついでに奴隷鑑もだ。明日にしようと思ったが、今からやるぞ」


 幹部達は返事をすると立ち上がり、すぐさま行動を開始した。

 キールはもう一度、金貨を見据える。


「嫌な予感がすんな」


 広場を出た幹部達は、奴隷艦が置いてある宝物庫へ向かう。

 宝物庫は、広場から出口までまっすぐ伸びる通路を途中で右に曲がるのだが、曲がり角でバッカスが立ち止まったことに、先を歩いていた幹部2人が気付き振り返る。


「おいバッカス。何立ち止まってんだ?」

「今日は俺のとこに新しい奴隷がきたからねぇ。奴隷艦はもう手元にあんのよぉ。だから先に奴隷共のところにいって広場へ連れていくよぉ」

「そうか。じゃぁお前がこれを持っていけ」


 幹部の1人が、グラゴの奴隷達の部屋の鍵をバッカスに渡そうと腕を伸ばした。

 バッカスもそれを受け取ろうと右手を伸ばす。


 その時だった。

 突然、洞窟内に轟音が鳴り響く。


 「ん? なんだぁ?」


 それは一瞬の出来事。

 バッカスの目の前が、真っ白な光で覆われた。

 しかし、その光が何かは理解は出来ない。

 バッカスには、突如巨大な光の壁が出現したとしか思えなかった。


「----っな! 何だあぁぁ!」


 何が起きたのか、常人の脳では理解が追いくはずもない。

 唯一認識できたことは、光が消失した後、目の前が突然外になったということ。


 先程までいた幹部2人の姿が消え、宝物庫へと続く通路もなくなっていた。


 何故か数百メートル先に森があり、上空には満月が見える。


 バッカスはゆっくりと、月明かりに照らされた足元へ目線を下げる。


 そこにあったのは、数百メートル程の大きな穴と、鍵を握りしめた仲間の左腕だけだった。


 ----洞窟広場


「な! なにが起きた!!」


 地響きと共に激しい揺れが襲い、両足を机に乗せていたキールはバランスを崩して椅子から地面へと放り出された。


 この世界でも地震はよく起こる。

 たが、キールがこれまで体感したどんな揺れ方よりも激しい揺れだった。


 「何が起きてやがる」


 様子を確認しようと広場を後にするキール。

 しばらく歩いたところで、通路の端に立ち尽くしているバッカスを発見した。


「おいバッカス!今の揺れはなんだ?」

「なんだこれぇ……なんだこれぇ……」

「おい、聞いてんのか!ぶっ殺すぞ!」


 バッカスは放心状態になっており、反応はできない。


「っち。とりあえず外の様子でも見に行くか。……あ?」


 洞窟内では、天井にオレンジ色のランプを吊るしているが、数が大量に必要だったためにさほど明るさのない安値のアイテムを使用していた。

 そのはずなのに、出口の方へ目をやると、少し先の通路がやけに明るい。


「なんであんなに明るいんだ?」


 気になったキールがその明るさの原因を確かめるために足を進め、そして驚愕する。


「な……なんだこりゃぁぁ!!」

今回は短めです!

次回!ついにカナタの無双がスタート!!

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