04話 もう、解放されている
外から心地よい風が入り込んでくる。
多少寒さは感じるが、我慢できないほど寒くはなかった。
日中の暖かさから考えると、前世での夏終わりくらいのはずなんだが……
なんで寒いんだ?
もしかすると、昼と夜で寒暖差が激しい世界なのかもしれないな。
この世界にも、四季とかあればいいんだけどな。
ふとそんな事を考えながら、先程目にした天命を再び確認する。
「雷帝か。うん、強そうだな」
たしか、帝の文字がつく天命は珍しく、スキルも強いはずだったな。
これは、ついに俺の幸運が働いてきたのか?
でも幸運が欲しいっていったけど、そもそも幸運って何なんだろうな……
とりあえず、スキルの方も見ておくか。
ステータスバーにあるスキル項目を確認する。
スキル欄には、回復と雷帝という文字が表示されていたので、回復の文字に触れてみる。
スキル名のようなものが縦並びに表示された。
一番上のスキルを見ると『小回復』と書いてあるが、文字が薄暗くなっていて使えそうにない。
スキルの横に10Pって書いてあるな。
右上の方には800Pって表示されてるし、つまりポイントを割り振っていくことでスキルを覚えるってことか。
ピカさんだったら、どういう割り振りが一番いいのか悩んで一生決められなさうだな。
回復系のスキルは20個。
全て覚えようとすると、500Pくらいは必要になりそうだ。
まぁ回復専門の天命ではなさそうだし、回復系スキルがあるだけでもラッキーか。
スキル名を上から下まで流し見していきながら、頭の中でポイントの計算をしていく。
やや後半辺りにある『超回復』のスキル名で一度計算を止めた。
戦闘系のスキルが無いとすぐ死んじゃうだろうけど、回復ってこういう世界じゃ絶対重要だろうし、この超回復くらいまでは覚えたほうがよさそうだよな。
しかもこのスキルより下に関しては、スキル名を見てもどういった効果なのかさっぱりわからん。
一番下にある『危機修復』とか何だこれ?
とりあえず超回復まで覚えて、あとは雷帝スキルにふっておくか。
俺はどんな事でも適当に即決するところがいいところなんだよね。
まぁ前世では後で後悔することも多かったんだけどね!
スキル欄の一番上まで戻り、小回復の文字に触れた。
触れると同時に、先程まで薄暗かったスキル名が白く発光し、横に30という数字が表示される。
何だこの数字。
考えてもわからないし、一旦スキル覚えちゃうか。
それにしても、覚えるのがスキル名を触ればいいだけって楽だな!
連打! 連打! 連打!
超回復までの12個のスキルを覚えると、右上にあった800Pの表記が500Pに変わっている。
まずは使ってみないと何もわからないからな。
ちょうど俺の体は傷だらけ!
右の手のひらを自分に向けて呟いてみた。
「小回復」
体が緑色の光に包まれ、目新しい小さな傷が綺麗になっている。
ただ傷跡だらけの見た目に、さほど変化は見られない。
小回復じゃこの程度ってことか。
「中回復」
最近できたであろう傷が全て綺麗になった。
しかし、古傷とか足先の折れ曲がった指が治っていない……
「大回復」
そう唱えると、俺の座っている地面に緑色の魔法陣が出現し、先程よりも大きな光が俺の体を包み込んだ。
「おぉ! 治ってる!」
古傷や折れた指も、全て綺麗に元通りになっていた。
ただ、やせ細った体はそのままのようで、これに関してはたくさん食べるしかなさそうだ。
回復スキルの効果を少し理解したが、もう一つ気になった事がある。
とりあえず使ってみないとわからないし、やってみるか。
「超回復!」
先程よりも大きな魔法陣が出現し、同じように体が優しい光に包まれる。
綺麗になった外見に関しては何も変化はないが、明確に変わった事があった。
……寒いくない。
全然寒くないんだけど!
俺やっぱり、風邪的なのひいてたのか!
レベルが高いせいか、生命力のせいなのか、風邪の怠さとかレジストしちゃうのかな?
とりあえず、これでわかったことがある。
超回復は状態異常も治せるってことだ。
他の覚えた回復スキルは、名前だけだと判断できそうにない。
まぁこの辺は追々調べるか。
次は本命、雷帝のスキルを見ようとして目線を動かすと、左上にある数字が目に入った。
魔力:10,990/12,600
あ、これそういうこと?
もう一度回復スキル欄に目を戻す。
『小回復:30』『中回復:80』『大回復:500』『超回復:1,000』
この横に書いてある数字って、使うとそれだけ魔力を消費するって意味か。
超回復:1,000って……
風邪治すのにどんだけ消費してんだよ。
というより、集団で大怪我とかしても今の魔力だと10人ちょいしか治せないのか。
まぁ回復職じゃないし、その辺は問題ないか。
問題があるとすれば、魔力以外のステータスが見当たらないことだ。
転生とかした世界って、攻撃力とか素早さとかあるんじゃないの?
そういう概念がないなら結構まずい。
スキル以外は結局素の自分で戦わなけらばならないということになる。
まぁなんとかなるか。
たとえそうだとしても、戦闘系のスキルがめちゃくちゃ強ければいい話だ。
雷帝のスキルをまず確認しないとな。
……うん。
スキル名だけ見ても全然わからん。
こればっかりは使ってみないとわからないな。
とりあえず……
連打! 連打! 連打ぁぁ!!
スキルポイントがなくなるまで連打しまくった。
表記が0Pになったところで、スキル欄を閉じる。
ここから出て、外で雷帝スキルの確認でもするか。
俺は立ち上がると、横で寝ているロイの方に顔を向けた。
……あれ? なんだこれ?
ロイの頭の上に何やら文字が見える。
レベル:1
天命:村人
ステータスが見える!
そういえば、一定のレベルに行くと、そういうスキルもあるっていってたな。
俺はもう一度ステータス画面を開くと、下の方に常時スキルがあるのに気付いた。
常時スキル:『レベル10:奴隷の主人』『レベル50:ステータス開示/秘匿』『レベル60:魔力回復』『レベル70:思考加速』『レベル80:奴隷の王』
雷帝常時スキル:『避雷』『雷帝・思考加速』
ロイのステータスが見えるようになったのは、これのおかげか。
秘匿ってことは、俺のステータスは見えないようになってるのかな。
ん? まてよ。
だとしたら、ステータスを見れないやつがいたらそいつはレベル50以上確定か。
そんなやつと出会ったら気を付けないとだな。
それよりも……
「……奴隷の王って何だよ」
奴隷の主人は、奴隷を持てるってことか?
だとしたら、奴隷を持っている奴は全員レベル10はあるということか。
あれ、でも確か奴隷制度ってアンカー王国以外はないんじゃなかったっけ。
結界が出来てから国同士の関わりがないっていってたけど、その国独自のスキルとかあるのかな。
まぁこの辺も情報収集しないとダメだな。
今考えても仕方がないと思い、ステータス画面を閉じた。
さて……
ここから出ることは決めたものの、ロイを連れて行ったほうがいいのか。
アニメとかのお決まりだと、最初に出会ったこういう奴を連れて旅に出るもんだよな。
ここから先も奴隷とかかわいそうだし、ロイの情報はかなり助かった。
それに、俺はこれから魔王を討伐する=勇者みたいな立ち位置だ。
人助けをしていくのが今後の為にも定番か。
…………いや、いらん。
そういうお決まりとか好きじゃないし、そもそも少年だとしてもロイは男だ。
俺はゲームでも主人公は男、それ以外は女でパーティを作ると決めている。
まぁ見殺しにはせずに、ここから逃げれるようにはしてやるか。
恩を受けたからにはしっかりと返す。
それくらいはやっとかないとな。
そうときまれば、まずはここから出るか。
小窓の枠の大きさからするに、30センチメートルくらいの壁だろう。
外が見えるってことは、この壁さえ抜ければ脱出は簡単そうだな。
手の平を壁に触れて力を入れてみるが、微動だにしない。
今の体だと土の壁でも鉄のように感じる。
ここはスキル使ってみるか。
といっても慎重に選ばないとだよな。
いきなりここで大爆発とか起きても困る。
とりあえず……この辺りか?
「雷体」
スキルを発動すると、バチバチと音をたてた光が体全体を包む。
よく見ると、時折光の外側を雷のような線が走っている。
雷を纏えるってことか。
それに感覚が急激に研ぎ澄まされたのがわかる。
今ならこの壁も破壊できそうだし、とてつもない速さで移動できそうだ。
試しに部屋の隅に移動してみると、まるで瞬間移動したかのような速さだった。
体にまとった光が残像として綺麗に伸びている。
これって発動中、常時魔力が減っていくんだっけ。
ステータス画面を確認すると、確かに何秒かに一度数値が減っているが、すぐに回復している。
回復というか、むしろ減った以上に増えていく。
どうやら、常時スキルの魔力回復の方が勝っているようだ。
先程使った魔力分も、今のスキル状態でもあと何分かすれば元に戻りそうだ。
やばい。
異世界転生チート主人公になってきた気分だな。
気分というか、なってるのか?
あれ、でも確かレベル80以上は上位1%っていってたよな。
もしこの国に1億の人間がいたら……
は?レベル80以上って100万人もいるのか?!
でもそんな感じは今の所しないんだよなぁ。
そもそも、転生に関してあの少女の説明は雑だったし、質問されてないから言いませんでしたとか、思い返すと不親切な点ばかりだ。
風貌はかなりお淑やかな感じだったけど、何か段々とあの女怪しく感じてきたな……
今更いってもしょうがないと思い、壁の方へ体を向ける。
殴って破壊もできそうだが、余り騒ぎにはしたくない。
手刀をイメージして、指をまっすぐにピンと張る。
指先からそっと壁に触れると、豆腐に指を入れてるかのように、どんどんと壁の中へと手が進んでいく。
指先が外にでた。
そこから円を書くように、大きく腕を回していく。
「じゃあな、ロイ。奴隷からは解放してやるから待ってろよ」
ロイは薄っすらと目を開ける。
壁に空いた大きな円形の穴から、月明かりが差し込んでいた。
森の中へと消えていく後ろ姿を見ながら、小さな声で呟くのだった。
「もう、解放されてるんだけどな……」
初ブックマーク、初コメント頂きました!
嬉しすぎて泣きそうです。。
読んでくれた人がいた、と知れただけで感無量・・・
頑張りますので、応援よろしくお願いします!




