シーファサル
晶は月から陽一たちの様子を伺っていた。
陽一に変化が起きている。
晶が昔、地球へ逃がされた時、持っていた宝玉は陽一郎に与えた。彼が亡くなった時に同時に消滅していると思っていた。しかし、陽一があれだけ痛めつけられたのにも関わらず、無事でいる事と晶たちの血筋の者にしか扱うことができない三輪守が反応したことは通常ではありえなかった。
陽一郎に与えた石が陽一の中に存在するのなら、もしかしたら、陽一自体が宝玉になっているのかもしれない。
晶は、その可能性を考えて体が震えた。
我はなんてことをしてしまったのか――。
しかし、今は一刻を争う時だ。それについては後で反省するしかない。晶は、陽一に呼びかけようとした。その時、
「お兄様っ」
と舞の声にハッとした。振り向くと、俊介が葵と菜々を連れて月に戻ってきている。負傷者が数名いてその場が急に騒がしくなった。
「俊介っ」
「姫、すみません……」
俊介の弱った顔を見た時、晶はあることを思いついた。
「そうじゃ! 俊介、レアンは宝玉を探しておると言っておったな」
「はい」
晶は、自室にある赤猪子からもらったシーファサルの骨を思い浮かべ自分の手に瞬間移動させた。
桜色をした魚の骨の一部だ。宇宙には魚だけが存在する惑星があり、その中でも最強の魚、シーファサルを食すると、新たな力を得られる。
赤猪子は、晶を月に戻すためにと命がけでこの魚を一人で採りに行き、それを捕らえると骨まで食べて三輪守というあらゆるものをすべて斬ることができる力を得た。
一つ問題点があるとすれば、自分だけではそれを扱うことができないというもので、赤猪子の夫である晶の父と血の契約を結び、その血を受け継ぐ者だけが三輪守を扱うことができた。
その骨の一部分を晶にと残してくれたのが、このシーファサルの骨だった。見ようによっては、ただの桜色の石にも見えないこともない。
「これを奴に宝玉だと言って渡してやれ。この骨にはわずかだがエネルギーは残っている。レアンは喜んでこれを受け取るだろう。これを食べようが吸収しようが好きにさせてやれ」
「しかし、これを吸収してもっと手ごわい相手になってしまったら……」
「女は半分人間であると言ったな。果たして、人間とレアンの間の子がそれを吸収できるかは、我は知らぬ」
話している間、流稚杏が俊介を完全に治癒してくれた。
「ありがとうございます。流稚杏どの」
言うなり、俊介が消える。
晶はぐっと手を握った。
大丈夫だ。きっと陽一は助かる。




