↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うぐいす姫 ~鬼と呼ばれた姫~  作者: 春野セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/99

目的


 赤猪子が気を失うと、茅子の手の部分が薙刀の刃に変形し、刃先を正勝に向けるとにやりと笑った。正勝は足を半歩引いて軽く息を吐いて構えの姿勢をとった。


「お主ら、何が目的だ……?」

「わたしはね、人間とレアンの遺伝子を組み合わせて作られたの。宝玉《ほうぎょく》を探すために。ねえ、どこに隠したの? 言わないとこの少年を殺すわよ」


 大蛇が一層、陽一の体に巻きつくと、口の端から血が流れ出した。


「ま、正勝さん……」


 陽一は息を吸い込もうとしたが、息をするだけで苦しい。俊介が現れ、彼も同じように帯刀していた刀を抜いて正眼の構えをとった。


「我々も宝玉を探している。しかし、いまだ見つからない」


 俊介が答えると、茅子はふうん、と言った。


「なら、みんな殺しても構わないわね」


 そう言うなり、正勝へ攻撃を仕掛けた。正勝は上段から来る攻撃を払い受け流したが、同時に反対側の手が中段の突きが入ってきた。一撃一撃が重い。受け流すのが精いっぱいの正勝を見て、俊介が攻撃を止めようと、茅子の横に回り左腕を狙った。確実に当たったが、茅子の腕は鋼のように硬くて刃が押し戻された。


 正勝の危機を察知した葵が、思わず、茅子の目に向かって倒れているトカゲを念力で浮かせると空間移動させた。茅子に一瞬の隙ができて正勝は後ろに飛びすさった。

 俊介の方は、一気に攻めていくが、茅子は攻撃が見えているのかすべて躱される。その時、茅子がさっと葵に目を向けた。


「葵っ、逃げろっ」


 正勝が叫んだ。俊介が、葵の元へ移動し手をつかみ消えようとしたが、背中を斬られ、葵を抱きしめたまま地面に転がった。


「俊介っ」


 負傷した俊介を月の騎士が介抱しようと駆け寄った。葵は気を失っている。月からの医療班がすぐに怪我の治癒をしたが、俊介は片膝を突いて顔を上げた。エネルギーの消耗が激しい。

 陽一はかろうじて小さく息をしながら、それらを見ているしかできなかった。


「俊介と動ける者たちは、葵と負傷者を安全な場所へ移動させよっ」

「しかし、正勝殿……っ」

「いいから、俺の言うとおりにしろっ」


 俊介は、佐野を残し、菜々と気を失っている葵の腕を取った。赤猪子は倒れたままだ。


「早く行けっ」

「すぐに戻りますっ」

「これ以上、負傷者は出したくない」


 正勝の声を聞く前に俊介は消えた。

 陽一は、正勝がみんなを逃がすのを見て、安堵した。自分は、せっかく蘇生して戻ってきたが、これ以上の犠牲者を見るのは辛かった。


「俺の力が奪われていなければ、三輪守を操れるのだが……」


 佐野が悔しそうに呟いた。

 みわのかみってなんだ……? そう言えば、晶も、晶の兄ちゃんも言っていたような気がする。


「みわのかみ……?」


 陽一がうわ言のように呟いた。すると、赤猪子の体がぴくっと動いた。正勝が目を見張る。そして、茫然とした顔で陽一を見た。そもそもこれだけの大蛇に巻きつかれて、陽一が生きているのが不思議でならなかった。


「お主、まさか……」


 その時、陽一の体がみしみしと軋んだ。蛇の胴体がさらに喰い込んでいる。


「陽一、もう一度、三輪守の名を呼べっ」

「え……? 何……? みわのかみ……?」


 意識がもうろうとし、息も絶え絶えの陽一が名を呼ぶと、倒れている赤猪子の体が宙に浮かぶと陽一の方を向き、大太刀へと変化していく。茅子がハッとすると、赤猪子を斬ろうとそちらへ体を向ける。しかし、赤猪子はすでに大太刀となり、陽一の手に向かって飛んできた。


「柄《つか》を握れっ」


 正勝が叫び、邪魔をしようとする茅子の背に袈裟懸けに刀を振り下ろした。茅子が振り返ってそれを受けると薙刀の刃が折れた。その時、折れた刀から火球《かきゅう》が飛びだし大太刀に戻っていった。


「……⁉」


 陽一は、蛇の胴体の隙間から手を出して、自分の手に向かってきた柄を握りしめた。


「大蛇《だいじゃ》を刺せっ」


 佐野が叫ぶ。

 陽一は両手を伸ばし、必死で鞘から太刀を抜いた。柄の向きを蛇の胴体へ向き変えると、大きな刀を思いきり蛇に突き刺した。太刀がずぶりと蛇の体にのめり込んだ。大蛇がひるんで陽一の体が自由になった。地面に落ちる。急に呼吸ができるようになって、大きく息を吸い込んだ。


 体がボロボロだった。節々が痛くて動けない。すると、月の騎士が周りに群がるトカゲを追い払い駆け寄って来て、陽一の体を治療してくれた。


「あ、ありがとうございます……」


 お礼を言うと、月の騎士は黙って頷いた。


「陽一、早く大蛇を斬れっ」

「えっ、ど、どこをですかっ」

「どこでもいいっ」


 佐野が叫ぶ。

 正勝は、茅子を行かせまいと一気に攻撃を仕掛けた。


 陽一は、片手で握り締めた。大太刀を大蛇に向ける。大蛇は舌をチョロチョロ出していたかと思った矢先、ものすごいスピードで大口を開けて陽一の目の前に迫った。あまりのスピードで陽一は動けない。佐野が陽一に飛びついて寸でのところで避けた。二人で地面に転がる。


「佐野さんっ」

「くそうっ。俺に力が戻れば、こいつの首をつかむことができるのにっ」


 正勝が、茅子の折れた刀が大太刀に戻ったのを見てすぐに悟った。茅子が負傷すれば、他人から奪った力を戻すことができるのだ。


「女を先に倒すぞっ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。