↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/85

まだ名前のない距離 65 触れたまま、言葉にしないほうが近くなる夜の続き

夜の道は、


◇


さっきよりも、


◇


少しだけ、


◇


やさしくなっていた。


◇


◇


ユイ「ねえ」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「さっきの“了解”ってさ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「軽く言ったでしょ」


◇


レン「いや、ちゃんと考えて言ったけど」


◇


ユイ「ほんとに?」


◇


レン「ほんとに」


◇


◇


ユイ、少しだけ疑うように見上げる。


◇


◇


ユイ「だってさ」


◇


ユイ「絶対離さないでって言って」


◇


ユイ「でも離してって言って」


◇


ユイ「意味わかんないじゃん」


◇


レン「わかってるよ」


◇


ユイ「じゃあなんで“了解”なの」


◇


◇


レン、少しだけ考えて、


◇


静かに答える。


◇


◇


レン「その時のユイに合わせるってことだよ」


◇


ユイ「……なにそれ」


◇


レン「今は離さない」


◇


レン「でも、その時が来たら無理に繋がない」


◇


◇


ユイ、少しだけ言葉を失う。


◇


◇


ユイ「それさ」


◇


ユイ「優しいのか残酷なのか分かんない」


◇


レン「どっちでもいいんじゃないか」


◇


ユイ「よくない」


◇


ユイ「ちゃんと決めたい」


◇


◇


レン「決められるならな」


◇


ユイ「……決めたいの」


◇


レン「なんで」


◇


ユイ「安心したいから」


◇


◇


少しだけ、


◇


風が吹く。


◇


◇


レン「安心ってさ」


◇


ユイ「うん」


◇


レン「決めたら手に入るもんじゃないだろ」


◇


◇


ユイ、少しだけ視線を逸らす。


◇


◇


ユイ「そうだけど」


◇


ユイ「でも欲しいじゃん」


◇


レン「欲しいな」


◇


ユイ「でしょ」


◇


◇


レン、少しだけ笑う。


◇


◇


レン「じゃあさ」


◇


ユイ「うん」


◇


レン「今だけはあるってことでいいだろ」


◇


◇


ユイ、少しだけ立ち止まりそうになって、


◇


でも止まらない。


◇


◇


ユイ「今だけって」


◇


ユイ「ずるい言い方ばっかり」


◇


レン「でも本当だろ」


◇


ユイ「……うん」


◇


◇


ユイの手が、


◇


また少しだけ強くなる。


◇


◇


ユイ「今はある」


◇


レン「ある」


◇


ユイ「じゃあそれでいい」


◇


◇


レン「いいのか」


◇


ユイ「うん」


◇


ユイ「今はね」


◇


◇


少しだけ、


◇


ふたりの距離が近づく。


◇


◇


ユイ「ねえレン」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「さっきさ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「どこでも行けるって言ったじゃん」


◇


レン「言ったな」


◇


ユイ「あれ」


◇


ユイ「嘘じゃないよね」


◇


レン「嘘つく理由あるか?」


◇


ユイ「ないけど」


◇


◇


ユイ、少しだけ笑って、


◇


少しだけ不安そうに続ける。


◇


◇


ユイ「でもさ」


◇


ユイ「ほんとに行けちゃったら」


◇


ユイ「戻れないよ?」


◇


レン「戻る気あるのか?」


◇


ユイ「……少しは」


◇


レン「じゃあ大丈夫だろ」


◇


ユイ「なにが」


◇


レン「戻りたくなったら戻ればいい」


◇


ユイ「そんな簡単じゃないよ」


◇


レン「簡単じゃないな」


◇


◇


少しだけ間。


◇


◇


レン「でも」


◇


ユイ「うん」


◇


レン「一人じゃないなら、ちょっとは簡単になる」


◇


◇


ユイ、ゆっくりと息を吐く。


◇


◇


ユイ「……ほんとさ」


◇


ユイ「そういうことばっかり言う」


◇


レン「嫌か?」


◇


ユイ「嫌じゃない」


◇


ユイ「むしろ困る」


◇


レン「なんで」


◇


ユイ「離れにくくなるから」


◇


◇


レン、少しだけ黙る。


◇


◇


レン「じゃあ離れる前提なんだな」


◇


ユイ「……未来の話ね」


◇


レン「今は?」


◇


◇


ユイ、少しだけ笑って、


◇


レンの手を引く。


◇


◇


ユイ「今は」


◇


ユイ「離れる理由ない」


◇


◇


レン「だな」


◇


◇


また歩き出すリズムが、


◇


ぴったり揃う。


◇


◇


ユイ「ねえ」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「このままさ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「ほんとに朝まで歩いたらどうする?」


◇


レン「学校遅刻だな」


◇


ユイ「現実的」


◇


レン「大事だろ」


◇


ユイ「ロマンない」


◇


レン「あるだろ」


◇


ユイ「どこに」


◇


レン「一緒に遅刻するところ」


◇


◇


ユイ、吹き出す。


◇


◇


ユイ「それロマンなの?」


◇


レン「たぶんな」


◇


ユイ「基準おかしい」


◇


◇


でも、


◇


笑いながら、


◇


少しだけ寄りかかる。


◇


◇


ユイ「……でも」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「それも悪くないかも」


◇


レン「だろ」


◇


◇


夜はまだ、


◇


終わらない。


◇


◇


ユイ「ねえレン」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「もしさ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「この夜が終わったら」


◇


◇


レン「うん」


◇


ユイ「ちゃんと続くかな」


◇


◇


レン、少しだけ考えて、


◇


◇


レン「続けるだろ」


◇


ユイ「どうやって」


◇


レン「今みたいに」


◇


ユイ「今って」


◇


レン「決めないまま」


◇


◇


ユイ、静かに頷く。


◇


◇


ユイ「……そっか」


◇


◇


そして、


◇


ほんの少しだけ、


◇


声を落とす。


◇


◇


ユイ「じゃあさ」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「明日も」


◇


ユイ「“今”のままでいよ」


◇


◇


レン、少しだけ笑う。


◇


◇


レン「難しいな」


◇


ユイ「でしょ」


◇


レン「でも」


◇


◇


手を、


◇


もう一度しっかり握る。


◇


◇


レン「やるか」


◇


◇


ユイ「うん」


◇


◇


その約束も、


◇


名前はない。


◇


でも、


◇


確かに交わされている。


◇


◇


夜の中で、


◇


ふたりだけが知っている形で。


◇


◇


変わっていくことも、


◇


変わらないことも、


◇


どちらも否定しないまま、


◇


ただ隣にいることを選び続ける。


◇


◇


まだ名前のない距離は、


◇


少しずつ、


◇


でも確実に、


◇


深くなっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。