↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/85

まだ名前のない距離 61 触れたまま、確かめない優しさが増えていく帰り道

夜の空気は、


◇


さっきよりも、


◇


ほんの少しだけ静かになっていた。


◇


◇


指と指は、


◇


重なったまま、


◇


ほどけない。


◇


◇


ユイ「ねえ」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「さっきの“途中”ってさ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「どこまで行ったら終わるの?」


◇


◇


レン、少しだけ考える。


◇


◇


レン「終わりとかあるのか?」


◇


ユイ「またそういうこと言う」


◇


レン「事実だろ」


◇


ユイ「ずるい」


◇


◇


ユイの指が、


◇


ほんの少しだけ強くなる。


◇


◇


レン「痛いって」


◇


ユイ「嘘」


◇


レン「……嘘だけど」


◇


ユイ「ほら」


◇


◇


小さく笑い合う。


◇


◇


でも、


◇


その笑いの奥に、


◇


さっきよりも深いものが混ざっている。


◇


◇


ユイ「終わりがないならさ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「どこまで行っても途中ってこと?」


◇


◇


レン、少しだけ歩く速さを落とす。


◇


◇


レン「たぶんな」


◇


レン「だから」


◇


レン「今のままでもいいんじゃないか」


◇


◇


ユイ「……それって」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「変わらなくてもいいってこと?」


◇


◇


レン、首を横に振る。


◇


◇


レン「変わってるだろ」


◇


ユイ「どこが」


◇


レン「手」


◇


◇


ユイ、少しだけ息を止める。


◇


◇


レン「前は、こんなふうに歩いてなかった」


◇


◇


ユイ「……そうだね」


◇


◇


少しだけ、


◇


指先が絡む。


◇


◇


ユイ「ねえ」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「このままさ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「何も言わないで続いていったら」


◇


ユイ「どこまで行けると思う?」


◇


◇


レンはすぐには答えない。


◇


◇


街灯の光が、


◇


ふたりの影を長く伸ばす。


◇


◇


レン「……たぶん」


◇


ユイ「うん」


◇


レン「思ってるより遠く」


◇


◇


ユイ「……そっか」


◇


◇


その声は、


◇


少しだけ安心していた。


◇


◇


ユイ「じゃあさ」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「途中でもいいから」


◇


ユイ「離さないで」


◇


◇


レン、ほんの一瞬だけ足を止める。


◇


◇


レン「命令か?」


◇


ユイ「お願い」


◇


◇


レン、少しだけ笑う。


◇


◇


レン「……どっちでもいいけど」


◇


レン「たぶん離さない」


◇


◇


ユイ「たぶんってつけた」


◇


レン「つけるだろ普通」


◇


ユイ「つけなくていいのに」


◇


◇


ユイの声は、


◇


少しだけ甘い。


◇


◇


レン「全部決めるのは、まだ早い」


◇


ユイ「……うん」


◇


ユイ「でも」


◇


ユイ「今は、それでいい」


◇


◇


ふたりの歩幅が、


◇


ぴったりと揃う。


◇


◇


ユイ「ねえ」


◇


レン「ん」


◇


ユイ「今日さ」


◇


レン「うん」


◇


ユイ「帰りたくないって思ってる」


◇


◇


レンの指が、


◇


ほんの少しだけ強くなる。


◇


◇


レン「奇遇だな」


◇


ユイ「……ほんとに?」


◇


レン「たぶん」


◇


ユイ「またたぶん」


◇


◇


でも、


◇


その“たぶん”は、


◇


もうほとんど答えに近い。


◇


◇


夜の道は、


◇


まだ続いている。


◇


◇


名前をつけるには、


◇


少しだけ早すぎて、


◇


でも、


◇


戻るには、


◇


もう遅すぎる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。