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まだ名前のない距離 42 ルールが変わるたび、近づいていく

夜は、



少しずつ、



深くなっていく。




さっき決めたはずの“ルール”は、



もう、



少しだけ形を変え始めていた。




肩が触れている。




それがもう、



当たり前みたいに続いている。




レンが、



小さく息を吐く。




レン「……なあ」




ユイ「ん?」




レン「さっきの“更新された”ってさ」




ユイは、



少しだけ笑う。




ユイ「うん」




レン「ありなの?」




ユイは、



少しだけ考えるふりをする。




ユイ「……グレーかな」




レン「一番ずるいやつじゃん」




ユイ「レンが言い出したんでしょ」




レンは、



少しだけ苦笑する。




レン「まあな」




少しの沈黙。




でも、



その沈黙は、



どこか軽い。




ユイが、



ふと視線を横に向ける。




ユイ「ねえ」




レン「ん?」




ユイ「このままさ」




レン「うん」




ユイ「どこまで行くと思う?」




レンは、



少しだけ目を細める。




レン「質問、ふわっとしてんな」




ユイ「いいから」




レンは、



ほんの少しだけ考える。




でも、



あまり迷わない。




レン「……たぶん」




ユイ「うん」




レン「止めなかったら、結構いく」




ユイは、



その言葉に、



一瞬だけ黙る。




ユイ「……怖くない?」




レンは、



少しだけ笑う。




レン「ちょっとは」




ユイ「でしょ」




レン「でも」




レンが、



少しだけ声を落とす。




レン「止める方が、たぶん後悔する」




ユイは、



その言葉に、



ゆっくり息を吐く。




ユイ「……それは分かる」




また、



少しだけ沈黙。




でも、



その沈黙の中で、



距離は変わらない。




むしろ、



少しだけ近いまま。




レンが、



ほんの少しだけ、



肩を預ける。




今度は、



さっきよりも自然に。




ユイは、



一瞬だけ驚く。




でも、



離れない。




ユイ「……また更新?」




レンは、



小さく笑う。




レン「たぶん」




ユイ「頻度高くない?」




レン「その方が面白いじゃん」




ユイは、



少しだけ呆れたように笑う。




ユイ「ルールってなんだっけ」




レン「目安」




ユイ「適当すぎ」




レン「でもさ」




レンが、



少しだけ真面目な声になる。




レン「ちゃんと見てるから」




ユイ「……なにを?」




レン「ユイが嫌そうかどうか」




ユイは、



一瞬だけ言葉を失う。




ユイ「……見てるね」




レン「見てる」




ユイは、



ほんの少しだけ笑う。




ユイ「じゃあさ」




レン「うん」




ユイ「今どう見える?」




レンは、



少しだけ間を置く。




その“間”は、



逃げるためじゃない。




ちゃんと選ぶための間。




レン「……嫌じゃない」




ユイは、



少しだけ視線を落とす。




ユイ「……正解」




レンは、



少しだけ安心したように息を吐く。




レン「よかった」




ユイ「でも」




レン「うん?」




ユイは、



ほんの少しだけ、



声を落とす。




ユイ「油断したらアウトね」




レンは、



少しだけ笑う。




レン「厳しいな」




ユイ「大事だから」




レン「了解」




また、



歩く。




街灯の下を、



ひとつずつ通り過ぎる。




そのたびに、



ふたりの影が、



少しずつ重なっていく。




レンが、



ふと呟く。




レン「さ」




ユイ「ん?」




レン「これ、名前なくてもよくない?」




ユイは、



少しだけ考える。




そして、



小さく笑う。




ユイ「……今はね」




レン「今は?」




ユイ「うん」




ユイ「このまま進んだら」




レン「うん」




ユイ「そのうち、つけたくなるかも」




レンは、



少しだけ笑う。




レン「その時でいいか」




ユイ「うん」




また、



少しだけ沈黙。




でも、



その沈黙は、



どこかあたたかい。




レンが、



ほんの少しだけ、



指先を動かす。




触れるか、



触れないか。




ユイが、



その気配に気づく。




ユイ「……それは」




レン「うん」




ユイ「まだ早い」




レンは、



少しだけ笑う。




レン「はいはい」




でも、



その声は、



どこか楽しそうだった。




触れないまま、



でも、



確実に近づいていく。




ルールは、



守るためじゃなく、



確かめるためにある。




そのたびに、



距離は少しずつ変わる。




名前のないまま、



それでも、



はっきりと進んでいく関係。




その一歩は、



もう、



戻ることを前提としていなかった。

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