まだ名前のない距離 42 ルールが変わるたび、近づいていく
夜は、
◇
少しずつ、
◇
深くなっていく。
◇
◇
さっき決めたはずの“ルール”は、
◇
もう、
◇
少しだけ形を変え始めていた。
◇
◇
肩が触れている。
◇
◇
それがもう、
◇
当たり前みたいに続いている。
◇
◇
レンが、
◇
小さく息を吐く。
◇
◇
レン「……なあ」
◇
◇
ユイ「ん?」
◇
◇
レン「さっきの“更新された”ってさ」
◇
◇
ユイは、
◇
少しだけ笑う。
◇
◇
ユイ「うん」
◇
◇
レン「ありなの?」
◇
◇
ユイは、
◇
少しだけ考えるふりをする。
◇
◇
ユイ「……グレーかな」
◇
◇
レン「一番ずるいやつじゃん」
◇
◇
ユイ「レンが言い出したんでしょ」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ苦笑する。
◇
◇
レン「まあな」
◇
◇
少しの沈黙。
◇
◇
でも、
◇
その沈黙は、
◇
どこか軽い。
◇
◇
ユイが、
◇
ふと視線を横に向ける。
◇
◇
ユイ「ねえ」
◇
◇
レン「ん?」
◇
◇
ユイ「このままさ」
◇
◇
レン「うん」
◇
◇
ユイ「どこまで行くと思う?」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ目を細める。
◇
◇
レン「質問、ふわっとしてんな」
◇
◇
ユイ「いいから」
◇
◇
レンは、
◇
ほんの少しだけ考える。
◇
◇
でも、
◇
あまり迷わない。
◇
◇
レン「……たぶん」
◇
◇
ユイ「うん」
◇
◇
レン「止めなかったら、結構いく」
◇
◇
ユイは、
◇
その言葉に、
◇
一瞬だけ黙る。
◇
◇
ユイ「……怖くない?」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ笑う。
◇
◇
レン「ちょっとは」
◇
◇
ユイ「でしょ」
◇
◇
レン「でも」
◇
◇
レンが、
◇
少しだけ声を落とす。
◇
◇
レン「止める方が、たぶん後悔する」
◇
◇
ユイは、
◇
その言葉に、
◇
ゆっくり息を吐く。
◇
◇
ユイ「……それは分かる」
◇
◇
また、
◇
少しだけ沈黙。
◇
◇
でも、
◇
その沈黙の中で、
◇
距離は変わらない。
◇
◇
むしろ、
◇
少しだけ近いまま。
◇
◇
レンが、
◇
ほんの少しだけ、
◇
肩を預ける。
◇
◇
今度は、
◇
さっきよりも自然に。
◇
◇
ユイは、
◇
一瞬だけ驚く。
◇
◇
でも、
◇
離れない。
◇
◇
ユイ「……また更新?」
◇
◇
レンは、
◇
小さく笑う。
◇
◇
レン「たぶん」
◇
◇
ユイ「頻度高くない?」
◇
◇
レン「その方が面白いじゃん」
◇
◇
ユイは、
◇
少しだけ呆れたように笑う。
◇
◇
ユイ「ルールってなんだっけ」
◇
◇
レン「目安」
◇
◇
ユイ「適当すぎ」
◇
◇
レン「でもさ」
◇
◇
レンが、
◇
少しだけ真面目な声になる。
◇
◇
レン「ちゃんと見てるから」
◇
◇
ユイ「……なにを?」
◇
◇
レン「ユイが嫌そうかどうか」
◇
◇
ユイは、
◇
一瞬だけ言葉を失う。
◇
◇
ユイ「……見てるね」
◇
◇
レン「見てる」
◇
◇
ユイは、
◇
ほんの少しだけ笑う。
◇
◇
ユイ「じゃあさ」
◇
◇
レン「うん」
◇
◇
ユイ「今どう見える?」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ間を置く。
◇
◇
その“間”は、
◇
逃げるためじゃない。
◇
◇
ちゃんと選ぶための間。
◇
◇
レン「……嫌じゃない」
◇
◇
ユイは、
◇
少しだけ視線を落とす。
◇
◇
ユイ「……正解」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ安心したように息を吐く。
◇
◇
レン「よかった」
◇
◇
ユイ「でも」
◇
◇
レン「うん?」
◇
◇
ユイは、
◇
ほんの少しだけ、
◇
声を落とす。
◇
◇
ユイ「油断したらアウトね」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ笑う。
◇
◇
レン「厳しいな」
◇
◇
ユイ「大事だから」
◇
◇
レン「了解」
◇
◇
また、
◇
歩く。
◇
◇
街灯の下を、
◇
ひとつずつ通り過ぎる。
◇
◇
そのたびに、
◇
ふたりの影が、
◇
少しずつ重なっていく。
◇
◇
レンが、
◇
ふと呟く。
◇
◇
レン「さ」
◇
◇
ユイ「ん?」
◇
◇
レン「これ、名前なくてもよくない?」
◇
◇
ユイは、
◇
少しだけ考える。
◇
◇
そして、
◇
小さく笑う。
◇
◇
ユイ「……今はね」
◇
◇
レン「今は?」
◇
◇
ユイ「うん」
◇
◇
ユイ「このまま進んだら」
◇
◇
レン「うん」
◇
◇
ユイ「そのうち、つけたくなるかも」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ笑う。
◇
◇
レン「その時でいいか」
◇
◇
ユイ「うん」
◇
◇
また、
◇
少しだけ沈黙。
◇
◇
でも、
◇
その沈黙は、
◇
どこかあたたかい。
◇
◇
レンが、
◇
ほんの少しだけ、
◇
指先を動かす。
◇
◇
触れるか、
◇
触れないか。
◇
◇
ユイが、
◇
その気配に気づく。
◇
◇
ユイ「……それは」
◇
◇
レン「うん」
◇
◇
ユイ「まだ早い」
◇
◇
レンは、
◇
少しだけ笑う。
◇
◇
レン「はいはい」
◇
◇
でも、
◇
その声は、
◇
どこか楽しそうだった。
◇
◇
触れないまま、
◇
でも、
◇
確実に近づいていく。
◇
◇
ルールは、
◇
守るためじゃなく、
◇
確かめるためにある。
◇
◇
そのたびに、
◇
距離は少しずつ変わる。
◇
◇
名前のないまま、
◇
それでも、
◇
はっきりと進んでいく関係。
◇
◇
その一歩は、
◇
もう、
◇
戻ることを前提としていなかった。




