↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
52/85

まだ名前のない距離 38 言葉にしたことで、少しだけ近づく夜

夜道を、


◇


ふたりは並んで歩いている。


◇


◇


ユイが、


◇


ふと口を開く。


◇


◇


「ねえ、レン」


◇


◇


「ん?」


◇


◇


「今日さ」


◇


◇


「なんか……変じゃなかった?」


◇


◇


レンは、


◇


少しだけ笑う。


◇


◇


「変っていうか」


◇


◇


「いつもと違った、って感じ?」


◇


◇


「それ」


◇


◇


ユイは、


◇


少しだけ頷く。


◇


◇


「なんかさ、時間の流れおかしかった」


◇


◇


「早かった?」


◇


◇


「うん、早かった」


◇


◇


「でもさ」


◇


◇


「長くも感じたんだよね」


◇


◇


レンは、


◇


少し驚いたように笑う。


◇


◇


「どっちだよ」


◇


◇


「分かんないの」


◇


◇


ユイも、


◇


小さく笑う。


◇


◇


「でもさ」


◇


◇


「楽しかったでしょ?」


◇


◇


レンは、


◇


少しだけ間を置いてから、


◇


素直に言う。


◇


◇


「……楽しかった」


◇


◇


ユイは、


◇


少しだけ視線を逸らす。


◇


◇


「……私も」


◇


◇


「思ってたより、ずっと」


◇


◇


レンは、


◇


その言葉に少しだけ安心する。


◇


◇


「よかった」


◇


◇


少しだけ、


◇


沈黙。


◇


◇


でも、


◇


すぐにユイが続ける。


◇


◇


「ねえ」


◇


◇


「ん?」


◇


◇


「さっきのさ」


◇


◇


レンは、


◇


わざととぼける。


◇


◇


「どれ?」


◇


◇


ユイは、


◇


少しだけ呆れたように言う。


◇


◇


「分かってるでしょ」


◇


◇


「……まあ、うん」


◇


◇


レンは、


◇


軽く息を吐く。


◇


◇


「ちょっとは意識した」


◇


◇


ユイは、


◇


ほんの少しだけ間を置く。


◇


◇


「……そっか」


◇


◇


「ユイは?」


◇


◇


少しだけ、


◇


踏み込む声。


◇


◇


ユイは、


◇


前を見たまま答える。


◇


◇


「……したよ」


◇


◇


レンの歩幅が、


◇


ほんの少しだけ揺れる。


◇


◇


「でも」


◇


◇


ユイが続ける。


◇


◇


「嫌じゃなかった」


◇


◇


その言葉に、


◇


レンは少しだけ黙る。


◇


◇


それから、


◇


静かに言う。


◇


◇


「……俺も」


◇


◇


「嫌じゃなかった」


◇


◇


空気が、


◇


少しだけ変わる。


◇


◇


さっきまでより、


◇


確実に近い。


◇


◇


「なんかさ」


◇


◇


レンが、


◇


少し照れたように言う。


◇


◇


「こういうの、初めてかも」


◇


◇


ユイは、


◇


くすっと笑う。


◇


◇


「なにそれ」


◇


◇


「自分でもよく分かってない」


◇


◇


「じゃあ言わないでよ」


◇


◇


「いや、なんとなく言いたくなった」


◇


◇


ふたりで、


◇


少しだけ笑う。


◇


◇


そのあと、


◇


ユイがぽつりと。


◇


◇


「ねえレン」


◇


◇


「ん?」


◇


◇


「またさ」


◇


◇


「こういうの、しようよ」


◇


◇


レンは、


◇


少しだけ間を置く。


◇


◇


でも、


◇


すぐに答える。


◇


◇


「いいよ」


◇


◇


「むしろ、したい」


◇


◇


ユイは、


◇


少しだけ驚いて、


◇


笑う。


◇


◇


「素直すぎ」


◇


◇


「今さらだろ」


◇


◇


「確かに」


◇


◇


また、


◇


小さく笑い合う。


◇


◇


気づけば、


◇


ふたりの距離は、


◇


さっきより近い。


◇


◇


触れてはいない。


◇


◇


でも、


◇


触れそうな距離。


◇


◇


言葉にしたことで、


◇


少しだけ進んだ距離。


◇


◇


夜の中で、


◇


その変化だけが、


◇


確かに残っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。