↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/85

「逃げ場なし」――距離ゼロの帰り道

翌日、放課後。


「レン、帰ろ」


当たり前みたいに声をかけてくるユイ。


「……なんで一緒に帰る前提なんだよ」


「昨日、“続きはまた明日”って言ったでしょ?」


にこっと笑う。


……有言実行すぎるだろこいつ。


「勝手に決めんな」


「でも来るでしょ?」


「……行くけど」


「ほらね」


即答した自分にちょっと腹が立つ。


◇


校門を出て、並んで歩く。


いつも通りのはずなのに、

なぜか今日は妙に距離が近い気がする。


……いや、“気がする”じゃない。


「おい」


「なに?」


「近い」


「普通だよ?」


普通なわけあるか。

肩、普通に当たってんだよ。


「レンが避ければ?」


「避けたら負けみたいな空気出すな」


「え、もう負けてるけど?」


くすっと笑うユイ。


「昨日のやつ引きずってんのかよ」


「だって面白いし」


……性格悪いなほんと。


そう思った瞬間――


「ねえ」


不意に、ユイが立ち止まる。


「……なんだよ」


振り向いた瞬間。


ぐいっと、腕を引かれた。


「っ!?」


バランスを崩して、

そのままユイの方に引き寄せられる。


――近い。


昨日どころじゃない距離。


目の前に、ユイの顔。


「レンさ」


小さく、囁く。


「今日もドキドキしてる?」


「してねえ」


即答。


……したけど。


「ふーん」


じっと見てくる。


逃げ場がない。


視線も、距離も。


「じゃあ――」


ユイが、さらに少しだけ顔を近づける。


「証明してよ」


「は?」


「ドキドキしてないって」


そんなの――


できるわけがない。


「……無理に決まってんだろ」


「じゃあしてるじゃん」


即詰み。


「っ……」


言い返せない俺を見て、

ユイは満足そうに笑う。


でも、そのまま離れない。


それどころか――


「ねえレン」


今度は、少しだけ真剣な声。


「逃げないでよ?」


「……逃げてねえよ」


「ほんと?」


「……たぶん」


自分でもよく分からない。


距離を取りたいのか、

このままでいたいのか。


ただ一つ分かるのは――


「顔、また赤い」


「うるせえ」


「かわいい」


「言うな!」


思わず声が大きくなる。


するとユイは、くすっと笑ってから――


すっと手を離した。


「今日はここまで」


「……は?」


昨日と同じセリフ。


でも今日は、ちょっと違う。


「え、終わり?」


「なに、続き期待してた?」


ニヤニヤしながら聞いてくる。


「してねえよ!」


「ほんとに?」


「……」


否定しきれない。


「素直じゃないなー」


そう言って、ユイは少しだけ前を歩き出す。


でも――


「ほら」


振り返って、手を軽く振る。


「ちゃんと来てよ?」


その仕草が妙に自然で。


……結局、追いかけてしまう。


「レン」


「なんだよ」


「明日はもっとすごいよ?」


「やめろ」


「楽しみにしてて」


「するか!」


即答したけど――


◇


「……はぁ」


帰り道の途中。


小さくため息をつく。


でもそれは、


嫌なため息じゃなかった。


むしろ――


「……またやられるな、これ」


分かってるのに。


分かってるのに――


明日が、ちょっと楽しみになってる自分がいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「来なかったら」と話したユイ。 翌日来なかったので、びっくりしました。 体調が悪くなるのを予見していたのでしょうか。 イタズラで休んだ――ようには見えないし。 ほんのり甘い学生生活の物語の中に、ユイが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。