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「近すぎだろ、バカ」――からかいと無防備の境界線

放課後。

教室には、俺とユイだけが残っていた。


「ねえレン、ここ教えて?」


ユイがノートを持って、俺の机にやってくる。

……いや、来るのはいいんだけど。


「近い」


「え?なにが?」


とぼけた顔で、ユイはさらに顔を寄せてきた。

肩が触れる。髪がかすかに頬に当たる。


近い。普通に近い。


「いや、だから距離感おかしいだろ」


「そう?レンが意識しすぎなんじゃない?」


ニヤッと笑うユイ。

……くそ、完全に分かってやってる顔だ。


「してねーよ」


「へえ〜?」


そう言いながら、ユイは俺のノートを覗き込むふりをして――

耳元で、小さく囁いた。


「ほんとに?」


一瞬、思考が止まる。


「っ……!」


反射的に距離を取ろうとしたけど、椅子が引っかかって動けない。


ユイはそんな俺を見て、くすっと笑う。


「顔赤いよ、レン」


「赤くねえ!」


「赤いって」


そう言って、今度は正面から顔を覗き込んでくる。


近い。

さっきより、もっと近い。


目が合う。

逸らせない。


「……なあユイ」


「なに?」


「やりすぎ」


「えー?まだ何もしてないよ?」


その言い方がもう危険なんだよ。


「じゃあさ」


ユイはふっと距離を詰めて――


「これくらいなら、いい?」


気づいた時には、

額が軽く触れていた。


一瞬。ほんの一瞬だけ。


でもそれだけで、心臓が跳ね上がる。


「っ……!!」


固まる俺を見て、ユイは満足そうに笑った。


「はい、レンの負け」


「は!?なんの勝負だよ!」


「意識したら負けの勝負」


「そんなルール知らねえよ!」


「今作ったもん」


くすくす笑いながら、ユイはようやく距離を取る。


……助かった、と思ったのも束の間。


「でもさ」


振り返ったユイが、少しだけ真面目な顔になる。


「レンってさ、ほんと分かりやすいよね」


「は?」


「だって――」


少しだけ照れたように目を逸らしてから、またこっちを見る。


「ちゃんと、ドキドキしてくれるから」


その一言で、また心臓が跳ねた。


「……バカ」


「うん、知ってる」


ユイはそう言って、いつもの笑顔に戻る。


「じゃ、今日はこのくらいにしてあげる」


「“してあげる”ってなんだよ……」


「続きはまた明日ね?」


そう言って手を振るユイ。


……絶対わざとだ。


でも――


「……はぁ」


気づけば、ちょっとだけ楽しみにしてる自分がいた。

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