まだ名前のない距離 17 揺らぎの中で、確かめたいもの
朝は、いつも通りやってくるのに、
◇
どこか少しだけ違って見えた。
◇
レンは目を覚まして、
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しばらく天井を見つめたまま動かなかった。
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◇
昨夜の余韻が、
まだそのまま残っている。
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夢じゃない。
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ちゃんと、言葉を交わした。
◇
「またね」
◇
その一言が、
思っている以上に重たくて、
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同時に、やさしかった。
◇
◇
体を起こして、
スマホに手を伸ばす。
◇
通知は、ない。
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当たり前だと分かっているのに、
ほんの少しだけ、
期待していた自分に気づく。
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「……何期待してんだよ」
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小さく笑って、
画面を伏せた。
◇
◇
急がなくていい。
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昨日、そう決まったばかりだ。
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続きがあるって、
そういうことだろ。
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◇
一方で、
ユイはいつもより少し早く目を覚ましていた。
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カーテンの隙間から入る光が、
やけに柔らかい。
◇
◇
ぼんやりしたまま、
枕元のスマホを手に取る。
◇
特に理由もなく、
画面をつける。
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◇
何も変わっていないはずなのに、
それでも確認してしまう。
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◇
「……ないよね」
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自分で言って、
少しだけ苦笑する。
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◇
昨日で終わりじゃない。
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だから、
今日すぐに何かが始まるわけでもない。
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◇
その“間”が、
少しだけ落ち着かなくて、
でも、嫌じゃなかった。
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◇
ベッドの上で膝を抱えて、
ぼんやりと考える。
◇
◇
次に話すとき、
何を話すんだろう。
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昨日みたいに、
自然に話せるのかな。
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◇
「……考えすぎか」
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軽く頭を振る。
◇
◇
でも、
考えてしまうくらいには、
もう意識している。
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◇
それが少しだけ、
くすぐったい。
◇
◇
◇
同じ朝。
◇
同じように、
少しだけ変わった気持ちを抱えている。
◇
◇
まだ何も始まっていないのに、
◇
確かに、
何かは動き出している。
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◇
急がなくてもいい。
◇
でも、
止まることも、もうない。
◇
◇
触れそうで触れないまま、
◇
二人の距離は、
ゆっくりと、
でも確実に――
◇
近づいていく。




