表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

まだ名前のない距離 17 揺らぎの中で、確かめたいもの

朝は、いつも通りやってくるのに、



どこか少しだけ違って見えた。



レンは目を覚まして、



しばらく天井を見つめたまま動かなかった。




昨夜の余韻が、


まだそのまま残っている。



夢じゃない。



ちゃんと、言葉を交わした。



「またね」



その一言が、


思っている以上に重たくて、



同時に、やさしかった。




体を起こして、


スマホに手を伸ばす。



通知は、ない。



当たり前だと分かっているのに、


ほんの少しだけ、


期待していた自分に気づく。



「……何期待してんだよ」



小さく笑って、


画面を伏せた。




急がなくていい。



昨日、そう決まったばかりだ。



続きがあるって、


そういうことだろ。




一方で、


ユイはいつもより少し早く目を覚ましていた。



カーテンの隙間から入る光が、


やけに柔らかい。




ぼんやりしたまま、


枕元のスマホを手に取る。



特に理由もなく、


画面をつける。




何も変わっていないはずなのに、


それでも確認してしまう。




「……ないよね」



自分で言って、


少しだけ苦笑する。




昨日で終わりじゃない。



だから、


今日すぐに何かが始まるわけでもない。




その“間”が、


少しだけ落ち着かなくて、


でも、嫌じゃなかった。




ベッドの上で膝を抱えて、


ぼんやりと考える。




次に話すとき、


何を話すんだろう。



昨日みたいに、


自然に話せるのかな。




「……考えすぎか」



軽く頭を振る。




でも、


考えてしまうくらいには、


もう意識している。




それが少しだけ、


くすぐったい。





同じ朝。



同じように、


少しだけ変わった気持ちを抱えている。




まだ何も始まっていないのに、



確かに、


何かは動き出している。




急がなくてもいい。



でも、


止まることも、もうない。




触れそうで触れないまま、



二人の距離は、


ゆっくりと、


でも確実に――



近づいていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ