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32/85

まだ名前のない距離 17 揺らぎの中で、確かめたいもの

朝は、いつも通りやってくるのに、


◇


どこか少しだけ違って見えた。


◇


レンは目を覚まして、


◇


しばらく天井を見つめたまま動かなかった。


◇


◇


昨夜の余韻が、


まだそのまま残っている。


◇


夢じゃない。


◇


ちゃんと、言葉を交わした。


◇


「またね」


◇


その一言が、


思っている以上に重たくて、


◇


同時に、やさしかった。


◇


◇


体を起こして、


スマホに手を伸ばす。


◇


通知は、ない。


◇


当たり前だと分かっているのに、


ほんの少しだけ、


期待していた自分に気づく。


◇


「……何期待してんだよ」


◇


小さく笑って、


画面を伏せた。


◇


◇


急がなくていい。


◇


昨日、そう決まったばかりだ。


◇


続きがあるって、


そういうことだろ。


◇


◇


一方で、


ユイはいつもより少し早く目を覚ましていた。


◇


カーテンの隙間から入る光が、


やけに柔らかい。


◇


◇


ぼんやりしたまま、


枕元のスマホを手に取る。


◇


特に理由もなく、


画面をつける。


◇


◇


何も変わっていないはずなのに、


それでも確認してしまう。


◇


◇


「……ないよね」


◇


自分で言って、


少しだけ苦笑する。


◇


◇


昨日で終わりじゃない。


◇


だから、


今日すぐに何かが始まるわけでもない。


◇


◇


その“間”が、


少しだけ落ち着かなくて、


でも、嫌じゃなかった。


◇


◇


ベッドの上で膝を抱えて、


ぼんやりと考える。


◇


◇


次に話すとき、


何を話すんだろう。


◇


昨日みたいに、


自然に話せるのかな。


◇


◇


「……考えすぎか」


◇


軽く頭を振る。


◇


◇


でも、


考えてしまうくらいには、


もう意識している。


◇


◇


それが少しだけ、


くすぐったい。


◇


◇


◇


同じ朝。


◇


同じように、


少しだけ変わった気持ちを抱えている。


◇


◇


まだ何も始まっていないのに、


◇


確かに、


何かは動き出している。


◇


◇


急がなくてもいい。


◇


でも、


止まることも、もうない。


◇


◇


触れそうで触れないまま、


◇


二人の距離は、


ゆっくりと、


でも確実に――


◇


近づいていく。

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