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まだ名前のない距離 14 言葉の温度

既読がついたのは、

ほとんど同時だった。



ユイは画面を見つめたまま、

少しだけ息を止める。



「そっちもな」



たったそれだけの返信。



なのに。



胸の奥が、

少しだけ軽くなる。




「……なんだ、それ」



思わず笑う。




期待してたわけじゃない。



でも、



返ってきたことが、

こんなに嬉しいなんて。




指が、

またキーボードの上に乗る。



今度は、



さっきよりも、

少しだけ自然に。




「今日さ」



打って、



一瞬だけ止まる。




でも、



消さなかった。




「ちょっとびっくりした」




送る。





一方で。



レンは、

返信を送ったあとも



スマホを手放せずにいた。




「……これで終わりか?」




自分で送っておいて、



少しだけ、

物足りなさを感じる。




でも、



続ける理由も、

言葉も浮かばない。




そのとき。



また震える。




「……早」



思わず呟く。




画面を開く。



ユイからのメッセージ。




「今日さ

ちょっとびっくりした」




レンは、

その一文をしばらく眺める。




「……俺もだよ」



小さく呟く。




指が動く。



今度は、

さっきより少しだけ長く。




「俺もびっくりした

あんなこと言うとは思わなかったし」




送信。





ユイの画面に、

また新しい通知が届く。




開く。




その文章を読んで、



少しだけ目を細める。




「……あんなこと、か」




自分でも、

ちゃんと覚えている。




「まだ、なくならないでほしいね」




あの言葉。




軽い冗談のつもりだったのか、



それとも。




「……どっちだよ」



小さく呟く。




でも。




さっきよりも、



言葉は、

ちゃんと前に進んでいる。




ユイは、

少しだけ考えてから、



ゆっくりと打ち込む。




「変だった?」




送る。





レンは、

そのメッセージを見て、



一瞬だけ固まる。




「変、か……」




正直に言えば、



少しだけ、

ドキッとした。




でもそれを、

そのまま言うのは、



なんとなく違う気がして。




「いや」



打つ。




少しだけ迷って、



でも、



止まらなかった。




「嬉しかった」




送信。





その一言は、



短いのに、



今までで一番、



まっすぐだった。




ユイの目が、

少しだけ見開かれる。




「……え」




心臓の音が、

少しだけ速くなる。




さっきまでの距離が、



また、



ほんの少しだけ、



近づく。




言葉の温度は、



画面越しでも、



ちゃんと伝わる。




まだ名前はないけれど。




その距離は、



確かに、



変わり始めていた。

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