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まだ名前のない距離 8(続き)

ベッドの上で、

レンはスマホを胸の上に乗せたまま、しばらく動かなかった。


『明日』


たったそれだけの言葉が、

やけに重く、そして軽くも感じる。



(明日って……)


頭の中で何度も繰り返す。



「……いや、普通に学校だろ」


当たり前のことを口にする。


でも、その“当たり前”が、

今日は少し違って見える。



明日も同じ教室で、

同じ席で、

同じ時間を過ごすはずなのに。



(“次に会う”って、そういう意味じゃないだろ)


なんとなく、わかってしまう。



レンはゆっくりと起き上がる。


スマホをもう一度手に取る。



(どうすんだよ、これ)


返すべきか、

それともこのまま終わらせるか。



数秒、迷って——



『どこで?』



送信。



今度は、少しだけ心臓の音がうるさい。



すぐには既読がつかない。



(風呂か……)


さっきのメッセージを思い出して、

少しだけ落ち着く。



スマホをベッドに放り投げて、

レンは立ち上がる。



部屋の中を、意味もなく一周する。



机。


椅子。


カーテン。


全部、いつもと同じ。



なのに——



(なんでこんな落ち着かねえんだよ)



再びベッドに座る。


その瞬間。



震えた。



「っ……」


反射的に手を伸ばす。



既読。



『学校終わり』


『ちょっとだけ』



短いけど、

ちゃんと続きがある。



レンは画面を見つめる。



“ちょっとだけ”


その言葉に、

なぜか妙に引っかかる。



(ちょっとってなんだよ)



でも——



その“ちょっと”が、

特別に感じてしまうのも事実で。



『了解』


打ちかけて、

止まる。



(それだけか?)



さっき感じた“物足りなさ”が、

また顔を出す。



ほんの少しだけ、考えて——



『どこ行く?』



送信。



今度は、

少しだけ笑ってしまう。



「……俺、こんなだったか?」



前より、

少しだけ踏み込んでいる気がする。



でも、不思議と嫌じゃない。



むしろ——



どこか楽しい。



少しして、返信。



『秘密』



一言。



「は?」


思わず声が出る。



続けて——



『楽しみにしといて』



レンは、

しばらく画面を見たまま固まる。



(なんだそれ……)



文句を言いたいのに。



口元が、

勝手に緩む。



『はいはい』



そう返して、

スマホを置く。



天井を見上げる。



さっきよりも、

ずっと静かだ。



だけど——



その静けさの中に、

確かに何かがある。



「……明日、か」



ぽつりと呟く。



それはただの予定じゃなくて、


少しだけ、

特別な約束みたいに聞こえた。



まだ名前のない距離。



でも——



その距離は、

確実に“縮まる方向”に動いている。



明日。


その“ちょっと”の中で、


何が起きるのかは、まだわからない。



ただ一つだけ、言えること。



レンはもう——



その続きを、

楽しみにしている。

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